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142.性悪な姉にお別れを



 


 私とキャサリンは、一生交わらない。そうわかると、心の疑問がなくなり気持ちが凄くスッキリした。それと同時に、自分の中でどこかにあったキャサリンへの配慮も跡形もなく消え去った。


 こんな人間が王妃を、国母とも呼ばれる地位を目指していたなんて。


 そう思うと、馬鹿らしくて笑みがこぼれた。


「ふふ、ふふふふっ」


 キャサリンの煽るような言葉も、怒りを込めた嘲りも、全てがどうでも良い音として抜けていく。元々真に受けてる訳ではなかったが、それに更に拍車がかかった。


「何? 図星過ぎて言い返せないかしら」


 痛くも痒くも感じない。ならば気にせず立ち去ればよい話なのだが、そうは思えなかった。


(売られた喧嘩は買わせていただきますわ、お姉様)


 ふう、と小さく息を吐くと綺麗な笑顔を貼り付けて閉ざした口を開け始めた。


「お姉様が私のことをお嫌いなのはよくをわかりました。ですが、その理由があまりにも幼稚で驚きましたわ」

「何ですって……」

「要は気に食わなかったから、嫌がらせをしたという話ですよね。今時社交界デビューをする年頃のご令嬢やご子息でもそんな理由は使いませんもの」

「なっ!」

「そんな幼稚な考えで妹に長年嫌がらせをする人間、当然王子妃も王妃にもなれませんわ」

「黙りなさい!」

「ふふっ。()()()()()? お姉様」

「!」


 キャサリンの怒鳴り声など全く耳に届かず、一ミリも萎縮しないで言いきった。そして発言する暇も与えず攻め続ける。


「私の価値観が気持ち悪いと思うのはお姉様の勝手です。人にはそれぞれ価値観がありますから。自分の価値観と異なった時、受け入れて尊重するか、受け入れず嫌悪を示すか。大きく分けて二つでしょう」


 綺麗な笑みから軽蔑を示す表情に変えた。


「幼稚な理由に加えて、後者を選んだお姉様には誰かの上に立てるような器ではありませんね。にもかかわらずその事実には気付かない。まるでご自覚がないんですもの」

 

 有無を言わさない圧を加えて、最後の一言を告げた。


「可哀想な人。最後まで……敗者になるまで視野を広げることができなかったなんて。心より同情致しますわ」

「ーーっ!!」


 嘲るような笑みを添えて。


 その表情が予想外のものだったのか、口を開いたまま瞬間的に反応できない様子だった。


 反論の時間も与えずに、くるりと背を向けると足早にその場を去った。後ろでわめく声が聞こえるも、もはや言葉として認識することはなかった。


 牢屋への扉を開くと、不安げな表情のレイノルト様に迎えられる。


「レティシア! 無事ですか? 怪我は」

「大丈夫ですよ」


 すぐさま近づいて、両肩に手を添えながら尋ねられた。


「本当に……? 精神的な部分は」

「それも平気です」

「そう、ですか?」

「はい」


 部屋の中にいた時間がどれほどかはわからないが、レイノルト様が心配するほど待たせてしまったことを少し反省した。


 その気持ちを取り除く為にも、出来る限り自然な笑みを見せた。


「本当に大丈夫です。……それに、おかげさまで凄くスッキリしました。気にする理由もなくなったので。ここでこの問題ともお別れです」


 私の人生に嫌でも干渉してきたキャサリン。そんな彼女と、本当にお別れをしたのだ。決別とはまた違う、自分の人生の中から消し去るような感覚で。


「……その表情を見る限り、平気だとは思うのですが」

「はい、ご心配をおかけしました」

「貴女が無事ならそれで良いんです」


 微笑み合いながら、再び来た道を戻ることにした。


 こうして私は、キャサリンとの縁を切ったのだった。


 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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