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98.妹としての在り方




 ベアトリスの意志の強さがひしひしと伝わってくる。


「……姉様、それは」


 動揺し、どこか暗い顔になるカルセイン。


「勘違いしないでカルセイン。私は約束を忘れたわけではないわ。貴方は優秀よ、それは自信を持って」

「姉様……」

(……シスコンだ、やっぱり)


 ベアトリスの一言で表情が元に戻る辺り、私の推測は間違ってなさそうだ。


「この件に関して後でゆっくり話しましょう。そろそろリリアンヌ達が戻ってくるでしょうから」

「わかりました」

「レティシア、貴女を置き去りにしててごめんなさいね。まとまったら、全て話すから」

「大丈夫ですよ、お姉様。無理なさらないでくださいね」

「ありがとう」


 ベアトリスの言う通り、隣室へ移動していた二人が戻ってきた。その雰囲気は一目でわかるほどハッキリと一変しており、どうやら仲直りをした様子だった。


「……おかえりなさい、拗れなかったようで何よりだわ」

「……ご迷惑かけてしまい申し訳ありません」

「僕からも謝罪を」


 生暖かな視線にいたたまれなくなったのか、空気を切り替えようという思いも含めて二人は小さく謝罪をした。


「そして改めて。リリアンヌ嬢のご家族の皆様、婚約者としてよろしくお願いします。現状書面で契約を交わせてないけど、生涯添い遂げるつもりです」

「「「よろしくお願いします」」」


 反対する理由などどこにもないので、挨拶として三人揃って頭を下げる。


「私とフェルクス大公子の関係はここにいる人しか知らないです」

「公表は時期を見計らってる。少なくとも、エドモンド殿下に婚約者が確定するまでは黙っているつもりなんだ」

「それがよろしいかと」


 フェルクス大公子の動向に躊躇いなく納得するベアトリス。


「僕は現状王位継承権を放棄するつもりはない。これが揺らぐことはないと思ってほしい」


 穏やかな声色でも圧倒的なカリスマ性を感じる辺り、エドモンド殿下が持ち得ない資質が見えた気がした。


「もしも僕が王座に着いた時、宰相はカルセインに頼むから。よろしくね」

「……本気で仰られてますか、それは」

「うん。君の仕事ぶりを僕は評価している方だから。幸いカルセイン、君はエドモンド殿下側に染まっている訳じゃないからね。だからまだその位置に居続けて。これは命令じゃないよ、あくまでもね」

「……思考に入れて、おきます」

「うん、ありがとう」


 酷く動揺するカルセインとは対局に、どこかベアトリスは誇らしそうな表情になっていた。


「……取り敢えず、今日はもうお開きにしましょうか。ここから先、進められないというのが現状ですし」

「うん、それはベアトリス嬢に同意。また後日席を設けよう」

「そうですね」


 こうして解散になると、場の雰囲気をどことなく察して一足先にベアトリスの部屋を出た。


(私ができることは何もないし。お姉様方を信じて待とう) 


 とても一日で耳にしたとは思えない情報量だなと振り返りながら自室へ向かうと、途中でリリアンヌに呼び止められた。


「レティシアっ」

「……リリアンヌお姉様。どうされましたか」

「色々と謝らなくてはいけなくて」

「その必要ないと思います。何も不満に感じてませんから。……私は自分の事で正直手一杯です。王位問題は難しいお話ですし、私が口を出せる立場でもありませんから」


 リリアンヌの謝罪の気持ちがわからない訳でもない。


「ありがとう……私は、貴女を必要以上に巻き込みたくないの。本当は無縁でいて欲しかったけれど、それは不可能になってしまったから」

「お姉様……」


 その台詞から、改めて自分は姉達から大切にされていることを実感する。その思いを無下にするつもりはない。むしろ尊重したい。


「では共闘になりますね」

「えっ」

「本当は思う存分利用して、何なら駒のように使ってくれて構わないと伝えたかったのですが」

「そんなこと」

「はい、わかってます。ですので共闘です。私は継承関係の問題に自ら首は突っ込みません。ですがキャサリンお姉様は別ですから。キャサリンお姉様が王子妃であろうとなかろうと。私が倒すべく人は変わりませんから」

「………………」


 それでも私の譲れない想いもあることを知ってほしい。私は、ただ守られるだけの妹ではなく、支えられる妹になりたいのだという想いも。


「レティシアは……凄いわ」

「凄い?」

「えぇ。とどまることなく成長し続けて……誇らしいわね!私の妹は」

「わっ」


 突如抱き締められると、リリアンヌはそっと背中に手を回した。その手はほんの少しだけ震えてる気もした。


「……大好きよ、私の可愛い妹」

「……私も大好きです。素敵なお姉様」


 リリアンヌの胸のなかで彼女が抱えていた色々なものを感じていた。顔を離すと思い出したことを告げる。


「そうだ、お姉様」

「なに?」

「労働の斡旋はしなくて良さそうですね」

「……えぇ。残念だけど、私の就職先は決まってるみたい」

「ふふ。健闘を祈ります」

「貴女もね?」

「……キャサリンお姉様を倒します」

「…………そう、ね」


 何故か最後は微妙な雰囲気になったが、気にすることなく自室へ戻るのだった。

 


 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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