表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/100

第九十一夜 御船雷光


 土蜘蛛の里を滅ぼしたのは御船碓氷みふね うすいで御座いました。しかし、それを命じたのは御船家当主の御船雷光みふね らいこうです。


 ちょうど、りんが碓氷うすいに捕らえられたころ、なにも知らぬ漁火いさりが本家を訪ねてきておりました。武器と綱丸を相手方に引き渡し、丸腰で雷光の謁見を待ちます。


 その間、実は先客があり、雷光の弟である具風ぐふうが訪ねてきておりました。これは誠実な男で、雷光が碓氷からの報告のみで土蜘蛛の里を滅ぼし、漁火いさりをも使い捨てようとしていると聞き、いさめに来たのです。


 時すでに遅し。具風や漁火いさりの知らぬまに土蜘蛛の里は滅ぼされ、りんも捕らえられてしまっている。


 今宵は、御船一族の当主にして酷薄な男、御船雷光みふね らいこうかたりを聞いてみるといたしましょうか。



……具風め、相変わらずうるさい奴だ。


 俺は親父とは違う。土蜘蛛を祖とする一族に御船の名を与えたこと自体が間違いよ。此度こたびのことは良い機会であった。


 怪しげな技を使い、忠誠も疑わしい一族を廃するには機会を逃さぬことだ。


 だが、漁火いさりはうまく使えば役に立つ。妹を押さえておけば、どうとでもなるだろう。まずは戸隠とがくしの鬼を討たせる。……具風ぐふうは帰ったか。よし、漁火いさりを連れてこい。


 おう、来たか。よく戻ったな、漁火。

 しかし、戻り過ぎではないか。のう? このまま里へ戻れると思うてはおらんだろうな。よいか、これは俺が言うのではない。おまえが鬼と通じておると噂する者がおるのだ。


 違うと? ならば、証明してみせろ。


 戸隠の鬼を討つまで戻ることは許さぬ。すぐに行って殺してこい。さもなくば、里の連中もただでは済まぬぞ。土蜘蛛を祖とする異能の里とは名ばかりかよ。

 我らに飼われてきた恩を忘れたか。こうした時のための異能の技であろう。一族の端くれに加えてやったのは、その力ゆえなのだぞ。土蜘蛛の術など、その程度のものか?


 次こそは必ずと、そう言うのだな。


 いいだろう。最後の機会をやる。三日だ。それ以上は待たぬ。三日以内に戸隠の鬼を討ち、そのぎもを持ってこい。三日後のいま、この刻限までに。さあ、すぐに行け。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ