表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/100

第八夜 橋姫


 派手に破れてしまったものですね。


 連日のおとないも、こうして結果でみるとなかなか成果の見えぬもの。それでも諦めずに来られるのですから、私も根気よくつくろうこととしましょう。

 愛らしいクマの人形には戻せませんが、ともかくも破れ目をって形をつけることとします。そうあせらないで。つくろい物は、なかなか進まぬものです。


 今宵は、このやしろとも縁の深い橋姫による話で御座います。



……はて、御船みふねの小僧、何をやっておるんじゃろう。なにやら企んでおるようじゃが、この橋姫の目を盗もうなど百年早いわい。

 五十鈴川いすずがわに架かる新橋しんばしのたもとに居を構えて幾星霜いくせいそう、というほどでもないが、このまなを人の目から隠し、悪しきものを寄せつけぬように努めてきた。

 高島夫妻との約束じゃからな。わしは約束はたがえぬ。ま、悠里ゆうりは良いわらべじゃ。そう悪いことでもなかろう。


 このところ、なにかと落ち着かぬ。内も外もじゃ。鬼の娘のせいかの。浩二や久美は、天児あまがつと呼んでおったか。

 前世のありようを知るだけに、まことに哀れなものよな。いつか真名まなを知り、己を知り、年相応としそうおうに楽しく日々を送らせてやりたいものじゃ。そうじゃ、赤福も食わせてやりたいのう。血のしたたる生肉なんぞでなく。


 浩二と久美と天児あまがつと、三人でおかげ横丁を散策できればよい。わしもたまにしか食す機会はないが、赤福氷なんぞも風情ふぜいがあって良い。川縁かわべりで涼をとるのも夏らしかろう。


 天児あまがつも二人にはだいぶ慣れてきたと聞く。言うても、餌付えづけされた野良犬程度の慣れ具合じゃろうか。


 おや、学び舎の方で何かあったか。小さな気配が消えたの。はてさて、高島のカラスか何かじゃろうか。まあ良い、悪しきものではない。


 そのせいでもなかろうに、どうも悪い予感がするわい。十七年前の鬼退治か。また犠牲が出ぬことを祈るとしよう。何に祈るべきか、わしにはわからんが。かかか、天照大御神あまてらすおおみかみに祈るべきかもしれんなぁ。


 おかげ横丁の方はちゃんと見張っとるじゃろか。千里ちさとの奴は、ええ加減じゃからなぁ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ