表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/100

第二十六夜 神尾あやめ


 人と人でないものの違いとは何か、貴方ならわかりますね。そう、たとえ化け物であっても、人に化け、人として生きるならば、それは人なのです。

 かつて神々であり、妖怪であり、お化けであった者たちは、ひとつ目であったり、一本足であったり、逆に多くの目や手を持つなど、わかりやすいものでした。鬼と人を区別する最も有名なものはつのですね。


 しかし、こうした区別は、本来あいまいなものだったのですよ。人は鬼に、鬼は人に、たやすくその境界を乗り越える。


 ですから、温州蜜柑もまた、人から鬼に、鬼から人になって構わないでしょう。もし、そう願うのであれば。


 さて、では続いて、愛らしい幼な子の目から見た世界を語ってもらうとします。大人には見えぬものが見えている神尾あやめです。



……おにがいたの。


 おとうさんは、ちゃんと聞いてくれなかったわ。子どもだと思って、失礼しちゃう。あたし、見たんだもの。きれいなお姉さんのあたまに、つのが生えてたの。

 でも、こわくなんてなかったわ。だって、あたしは、もう、一人で寝ることだってできるんだから。それに、お姉さんは優しい犬か猫みたいな目をしてたのよ。だから平気。


 おかあさんほどじゃないけど、きれいなお姉さんだった。また会いたいな。


 こわかったのは、電車が出発するときに見えたおばけのほう。つのはなかったから、おにじゃないとおもうの。じゃあ、なんなのって聞かれてもわかんないけど。

 なんか変なもやもやした黒いやつが浮かんでたんだ。そこから手が生えていて包丁を持ってるように見えたよ。それがお姉さんの方に近づこうとしてた。でも、あぶないとは思わなかったかな。だって、おばけより、おにのほうが強いにきまってるもん。


 おかあさんも、おとうさんも、なにも見えなかったって言ってたけど、目がわるいんじゃないかなぁ。


 だって、ほかにも見えてる人がいたもの。お姉さんを見てびっくりしてたから。つのとおばけが見えたんだよ、きっと。


 大きくなっても目がわるくならないといいな。めがねなんてかけたくないし、おばけやおにが見えなかったら、逃げられないもの。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ