表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/100

第十三夜 御船利政


 まだ十三夜か、はや十三夜か。


 毎夜、毎夜、遠く市中より訪ね来られる貴方にとっては過ぎていく時は早いか遅いか、どちらなのでしょうか。


 こちらのやしろゆかりの物語は知っておられると思いますが、鬼はなぜ娘を喰らうのか。時折、ぼうっとそんなことを考えもします。何があろうと無慈悲に過ぎていく時は救いかいなか。私もいまや喰われつつあるのか。


 私だけではありません。貴方も知らず知らず鬼に喰われているのです。いつの間にか、気付かぬうちに少しずつ。


 とまあ、そんなことを考えながらの十三夜。余計なことは打っちゃって、温州蜜柑うんしゅうみかん黄泉よみがえりを図るとしますね。それなくしては存在しえぬ物語もあるのですから。


 さて、この先の物語です。御船龍樹と悠里の祖父、御船利政みふね としまさ校長をぶこととしましょう。十七年先に本当になるかどうか、それは誰にもわかりませんが。



……ほっほっほっ、まさか何も知らずに来ていたとは。あの警部さん、噛まれずに済んでよかったわい。


 ちょっとぐらい噛んでやっても大丈夫だと聞いていたと告げたら、絶句しておったのう。


 見知らぬ人間を噛むか噛まぬか。


 外出許可を出すかどうかの最低ラインを越えたのは確かじゃ。とはいえ、噛まずに我慢したのと、そもそも噛もうとしないのとでは同じようでまた違うことでもある。


 どうしたものかの。これで許可せなんだら久美嬢は怒るじゃろうな。やった、やったと無邪気に喜んでおったし。仕方ない。外へ出させてやろう。距離と時間と、少しずつのばして慣れさせていくのがよかろう。


 天児あまがつがここへ来て、まだ一年経っておらんか。それを考えれば、ひとことも言葉を発せないとしても、格段に良くなってきたのは確かじゃ。


 外出許可は出してやるとしよう。


 ちょうど良いところに、立花浩二か。久美嬢と違って、まだちょいちょい噛まれるらしいが、甘噛みみたいなもんかの。


 ふむ、もう妹から聞いたか。


 そうさな、外出は許そう。ただし、自由にというわけではないぞ。まずはこちら側から外を見て慣れさせること。橋姫の力の届く範囲に留まること。短い時間から始めて、少しずつ長くしていくのじゃ。


 決して焦るでない。無理をさせれば二度と外へ出ようとせぬやもしれん。いずれ、赤福本店で赤福氷を食べて帰ってくることができれば合格としよう。名付けて、ミッション赤福よ。


 無事に行って帰って来れれば天児あまがつ真名まなを返そう。本来、おぬしと同い年くらいの娘だ。いつか、ともにまなで過ごせるとよいのう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ