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道程
「は…?由香…?殺人‥、?」
由香は妻の名前だ。同一人物?いや、そんなわけが…広瀬は思いも寄らない発言に言葉を失った。しかし、そんな彼の様子を尻目に、2人の後ろから続々と警官が現れた。警官たちは手早く広瀬に手錠をかけ、
「6月20日、10時55分容疑者を確保!署まで連行する!」
と大声で報告を済ませた。
「痛ッ…え、いや、ちょっと…ええ、あ?」
あまりのショックに頭が回らず、広瀬は訳も分からないまま車に乗せられた。
「あの、これは…どういう…ことですか」
広瀬が尋ねると、面倒臭そうに刑事は口を開いた。
「あなたには今殺人容疑がかかっています。何か心当たりがあるんじゃないですか。」
「いや、そんなわけは無い!妻とは別れてから一切会っていない!」
広瀬は思わず否定したが、刑事は落ち着いた様子で
「貴方が罪を犯したかどうかは後に分かります。そういうことは署で話を聞きます。」
と言い、それ以降互いに口を開くことは無かった。
数分後、鉄のような冷気をまとった留置所が見えた。