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02 おじいさん、桃を切る

夕方になるとおじいさんがしば刈りから帰ってきて、あんぐりと口を開けました。


土で汚れないように敷かれた板の上に、巨大な桃が鎮座していたのです。


「おばあさん、これは……桃かの?」


「ええ、おそらくはそうでしょう。仮にモンスターの一種だとしてもおじいさんなら問題はないと思って、こうして待っていたのですよ」


「ふむ……」


おじいさんは尋常のものとは思えない桃の周りをぐるりと歩いて危険な兆候はないかしっかりと観察しました。


おじいさんのこうした慎重な行動がなければ二人はここまで生き残ることはできなかったでしょう。


「こうして外から見る限りは危険はなさそうじゃな」


「ではさっそく食べるとしましょう。おじいさん、悪いですけど、桃を切ってください」


おばあさんは期待を隠しきれない声色で言います。


「では切るぞ……

 【朧剣技・一閃】!」


おじいさんはスキルを発動させ、腰から刀を振り払うな動作をします。すると何も無かったはずの腰から閃光が漏れ出し、その光はおじいさんの動きに合わせて桃を切り裂きました。


―― 【抗斬の盾】


ガギィィィン!


金属が擦れ合うような不協和音が響きます。それでも桃は深く切り裂かれ、ちいさくメリメリという音を立てながら左右に割れていきました。


そして桃の中から、


「おぎゃあー、おぎゃあー」


と赤ん坊が出てきたのです。


「なんと!」


「おや、まあ」


おじいさんとおばあさんは驚き、さきほどの金属音の正体を悟りました。生命の危機に、赤ん坊が無意識にスキルを発動したのです。


「赤子でありながら、儂の剣技を防ぐとは……。この子は一体……」


「おじいさん、これは私たちがいつも子どもがほしいと言っていたから、きっと神さまが授けてくれたのですよ」


「確かにこの才能、儂らの跡を次ぐにふさわしい器かもしれんの」


「ええ、きっとそうですよ。桃の中から生まれたのですから名前は『桃太郎』がいいでしょう」


おじいさんとおばあさんは、桃太郎をそれはそれは大事に育てました。

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