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1-03 幸無き少女その3

またまたグロ注意

わたしはイリーナ・アイン・アウストロ。アウストロ侯爵家の長女です。

アウストロ侯爵家は当主であるお父様、伯爵家から嫁いできたお母様、そしてわたしと双子の妹のエミリーの4人家族でした。

わたしは生まれた直後の能力検査で、「レベル1・スキル、先天スキル無し・魔力無し」と言われました。

それに対して妹であるエミリーは、「レベル10・スキル「炎魔法」「氷魔法」、先天スキル「魔法攻撃倍加」・魔力50」だそうで・・・生まれたばかりでレベル10というのはとても高く、とても重宝されるスキルを持ち、魔力50も非常に高いものです。双子なのにわたしとはぜんぜん違う・・・

お父様もお母様もわたしを居ないものとして扱いました。かろうじて食事だけは貰えましたが、お父様とお母様、妹が食べているような高級食材は使われていませんでした。

わたしは外に出ることを許されず、使用人さんと同じような普通の服を着て生活していました。

妹は侯爵家の長女として紹介され、お茶会やお誕生日会にしょっちゅう出かけていて、高いドレスやアクセサリーなどを与えられていました。

妹はわたしのことを「お姉さま」と慕ってくれていましたが、それを知ったお父様が激怒しました。その翌日からわたしは書庫に閉じ込められました。お手洗いと食事以外、書庫から出ることができなかったので、わたしは本を読むことにしました。魔法が使えないのなら知識で生きていこうと思いました。字がほとんど読めず、まだ4歳だったため内容はほとんど理解できませんでしたが・・・

書庫に閉じ込められてから1週間後、わたしに専属のメイドさんがつきました。ミーメというらしいです。

専属ということは、わたしとずっと一緒にいてくれるということ…なんて素晴らしいことなのでしょうか。もう寂しい思いをしなくて済むというだけで、どんなに嬉しかったか。わたしは彼女と毎日おしゃべりをしました。それでも彼女は嫌な顔一つせずに、ニコニコしながら聞いてくれます。わたしはとても幸せだと思いました。今日までは・・・


12月18日

今日、妹が初めて魔法を使ったらしいです。魔法の使い方を人に教えられる前に使うには、魔法の才能が高くないと不可能だそうです。能力が高いだけでなく才能もあるなんて・・・、羨ましいです。

「お嬢様、旦那様がお呼びです」

ミーメがわたしを呼びに来ました。

「分かったわ、すぐ行きます」

お父様がわたしを呼ぶなんて初めてです。

わたしはミーメを連れて執務室へ向かいました。執務室はお父様がお仕事をされている部屋です。わたしは入れてもらったことがありません。

こんこん

「失礼します、お父様」

わたしが入出すると笑みを浮かべたお父様がいました。そして・・・

「今日からお前はただのイリーナだ、アウストロの家名を名乗るな」

・・・どういうことだろう?

「どういうことですか、お父様?」

「そのままの意味だ。本日を以ってお前を追放する。今すぐこの屋敷から出て行け」

「えっ…」

「さっさと出て行け!このクソ餓鬼が!」

がん! わたしは頬を殴られて倒れた。

「ミーメ、悪かったな、こんな餓鬼のお守りをさせて」

「いえ、これぐらい平気です、旦那様。それよりもお願いがございます」

わたしはミーメを見た。ミーメだったらわたしを助けてくれるに違いない・・・そう思って彼女を見つめた。

「私も殴らせてください♪」彼女はとびっきりの笑顔でそういった。

「ああ、君も殴っておけ!最高の気分になれるぞ!」

「はい!」彼女はそう言ってわたしに近づき、わたしのお腹を殴った。

「うっ!」

とても痛かった。ミーメはわたしの呻き声を聞いて歓喜の声をあげた。

「ああ、旦那様の言うとおり最っ高の気分だわ!このまま5年分の鬱憤(うっぷん)を晴らすわよ!」


・・・ミーメはわたしの全身を殴り続けた。全身が血だらけ(あざ)だらけになった。わたしは床に嘔吐した。いや、吐血した。それでも彼女は止めなかった。殴られ始めてから1時間ぐらいたったころ、彼女はようやく殴るのを止めた。彼女は満足気な顔をしていた。わたしはもう動けなかった。手足が動かない。感覚もない。呼吸も苦しい。わたし、このまま死んじゃうのかな。わたしは薄れ行く意識の中、神様にお願いをした。

「絶対に裏切らない友達を・・・、心の底から通じ合える親友が欲しい・・・もう、遅いけど・・・」

そしてわたしは、幸せな来世を思い浮かべながら意識を手放した・・・


――――――――――


「死んだか」

「いえ、まだ生きていると思われます」

「そうか、なら私が部屋から捨てよう。私も殴りたいのだよ」

アウストロ家当主は動かなくなったイリーナの首を掴んで、窓のところまで行った。そして窓を開けて・・・

イリーナの頬を殴り飛ばした。イリーナの体が宙を浮き、地面に叩きつけられる。

それを見た当主は満足気な表情で窓を閉め、執務に戻った。


――――――――――


地面で倒れていた私は、窓が閉まる音が聞こえてから顔を上げた。

状況はよく分からないけど、動き出すところを見られて追撃されるわけにはいかなかった。

起き上がろうと思ったけれど、怪我が酷すぎて無理そうだった。というか呼吸も苦しい。ひょっとしたら内臓が破裂してるかもしれない。ちょっと神様、いきなり死にそうなんですけど。

このままでは何もできずに死にそうだったので、治療できそうな名前のスキル【完全回復】を使ってみることにした。

「(完全回復…)」

頭の中で念じるだけでスキルが発動したようだ。さっきまであった痛みや痣が無くなっている。呼吸も普通にできる。付着した血液まで、きれいさっぱりなくなっている。

完全回復が便利すぎる。これが無かったら死んでいたんじゃないかな。このスキルをつけてくれた神様に感謝。

「(とりあえず森に入って隠れよう)」

私は近くの森に入っていった。


森を歩くこと数分…

「(う~ん…)」

かなり近くで声がした。

「誰っ!」

辺りを見渡しても木と緑しかない。

「(あれ、わたしはあの時死んじゃったはず・・・どうして林の中にいるの?)」

曇った声が頭の中に響いてくる。もしかしてこの体の本来の持ち主?そう思って会話を試みた。

「(あのー、すみません)」

「(えっ、どこからか声が聞こえる)」

頭の中で会話ができるようだ。

「(あなたは誰ですか?)」

「(はじめまして、私は佐藤 愛菜といいます)」

「(ひゃい、は、はじめまして、私はイリーナといいます)」

「(うん、よろしくね!イリーナ!)」

「(よ、よろしくお願いします・・・ところで、ここはどこですか?)」

「(あなたがいた屋敷の近くの森、としか分からないわ。気がついたらいきなり殴られて、屋敷の外に飛ばされたのよ。)」

「(殴り飛ばされた・・・あれ?痛みを感じないのですが、そっちは感じていますか?)」

「(治療したから、痛みはないよ。ところでなんで殴られたのか聞いていい?今後のことも考えないといけないし)」

「(はい・・・あまり話したくはありませんけど)」


それから私…いや、「私たち」は互いのことを話し合った。ここは「エンバルト王国」という国の王都「エンキスト」で、現在地はアウストロ侯爵家王都邸だそうだ。本当に異世界に来たんだなぁ。あと、さっき私を殴った奴はイリーナの父親であり、アウストロ侯爵家の当主、イーグル・フォン・アウストロだそうだ。娘を殺す親が当主だなんて、領民は哀れだな。神様からもらったスキルが無ければ、絶対死んでいたからね、イリーナは。

他にもこの世界の常識を教えてもらった。生物全てに「レベル」が存在し、レベルが高い者ほど強いらしい。レベルを上げるには「生物」を殺して経験値を稼ぐしかないそうだ。つまり、いくら攻撃しても「相手が生きていたら何も得られない」ということだ。完全に息の根を止めないといけないとか、殺伐とした世界だなぁ。ステータスはHP・MP・筋力・防御力・魔法力・素早さの6種類があり、レベルアップ時に一律で10ポイント得られる「ステータスポイント」を割り振って、上げるらしい。振り直しはできず、さらに適性の無いものには割り振れないらしい。

イリーナは全てのステータスに適性が無く、レベル1の分の10ポイントすら割り振れず残っているらしい。

ステータスの適性以外にもその人の才能によって、適性を生かせるかどうかが決まるらしい。過去には、魔法の適性が非常に高かったにも関わらず魔法の才能がなくて、火種一つ起こせないという人もいたそうだ。

あとは時間についてだが、この世界は日本と同じく、60秒=1分、60分=1時間、24時間=1日らしい。ただ日にちについては異なり、6日=1週間、36日=6週間=1ヶ月、432日=12ヶ月=1年らしい。やったね歳を取るのが遅くなるよ!平均寿命が45歳と短いけれど。

私のことは、こことは違う世界で死んで、神様に色々とスキルをもらったとだけ言った。まあ、いじめのこととかを言ってもこの子がかわいそうだしね。

「(そういえば殴られて意識を失う前に、神様にお願いをしたって言っていたよね?なんてお願いしたの?)」

「(絶対に裏切らない友達が欲しい、心の底から通じ合える親友が欲しい、そう願いました)」

「(ああ、だから私がここに転生したのか。確かに『絶対裏切らず、心の底から通じ合える親友』だもんね)」

「(えっ・・・今なんて・・・)」

「(だから、裏切らず通じ合える親友って・・・)」

「(わたしが・・・親友?いいの?)」

「(当たり前でしょ?これから一生を共にするだろうし。一生を共にする相手と不仲だったら大変よ、それ。でもそっちこそいいの?私はあなたの体を奪っちゃったのよ?あなたは見ているだけになっちゃったのよ?それでもいいの?手遅れな気もするけど)」

「(それは大丈夫です。えいっ!)」

「(あれ、動けなくなった。なんで?)」

「(今はわたしが体を動かしています。自由に切り替えられるみたいですね)」

「(便利だねぇ。とりあえず、これからよろしく、イリーナ!)」

「よろしくお願いします、アイナ!」

こうして私は幸せを掴むチャンスを、イリーナは親友を、願い通り受けたのであった。

書いていませんが、イリーナの母親も追放に賛成していました。

旦那とメイドによるイリーナフルボッコの話を聞いたときは、笑い転げていたようです。

イリーナには知らされていませんが、アウストロ家にはイリーナ、エミリーの下にもう一人子供がいます。


没になった初期案

イリーナの双子の妹は、初期案では双子ではなく12月18日、つまりイリーナが追い出された日に生まれる予定でした。イリーナが追い出される理由は変わらず、「イリーナが無能で、妹が優秀だったから」です。

この案が没になったのは、「この先の話で、イリーナと妹が同い年の方が話を作りやすかったから」です。

またステータスの項目はHP・MP・SPスタミナポイント・STR・VIT・INT・MEN・AGI・LUKの9種類でした。


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