1-02 幸無き少女その2
グロ注意
説明回です
目を覚ますと青い空が目に入ってきた。
「あれ?後ろから衝撃受けたのに、なんで仰向けになってるの?」
私は起き上がって辺りを見回した。
目の前に車が見えた。壁にぶつかっているから事故を起こした車のようだ。
「あ~あ、ご愁傷様、あれじゃ廃車確定ね」
そんなのんきなことを言っていたら、車から男性が降りてきた。運転手のようだ。
男は大破したフロント面を見てガッツポーズをした。
「いやいやなんで車廃車にして喜んでんの?」
気になって車のフロントを見てみた。そこにあったのは・・・
頭と胴体の潰れた女性の死体だった。
「…っ!」
ゲームではモンスターを狩りまくったり対人戦もかなりの数をこなしてきたけど、実際に死体を見たのは初めてだ。
鉄の臭いが辺りに漂っていた・・・流れ出た血液が私の足元まで流れてきた・・・
「ふふ、これで保険金は俺のものになる」
薄ら笑いを浮かべる男の顔を見た・・・そいつは私の父だった。
私はすぐさま父の元に駆け寄って…
「お父さん!何てことしてるの!お金の為に人を殺すなんて!」
そう言って父を殴ろうとした…が、私の拳は父の体をすり抜けた。
「あれ?なんで?私の声も聞こえていないのか車のほうを見ているし・・・」
まて、さっき保険金と言っていた・・・まさか!
私はもう一度死体を見た。
あのスカートは、私が今日履いていたやつだ・・・
「もしかして私、死んだの?」
「はい、そうです」
後ろから声がした。
「誰っ!」
私が振り返るとそこには一人の真っ白い服を着た女性が立っていた。
「出迎えが遅れてしまってすみません。私は日本国を守護する神様の一人、ファービュといいます」
神様はそう言うと同時に、頭を少し下げてお辞儀をした。
「いえいえそんな!私は佐藤 愛菜です」
私は腰を九十度に折ってお辞儀をした。
「はい、知っています。とても大変な人生でしたね」
ああ・・・本当に大変だったよなぁ・・・幸せだと思ったこと一度もないし。
「それはもう。もっと色々楽しみたかったです。この苦労の先には幸せが待っているはずっ!って頑張ってきたんですけど、報われること無く終わってしまったんですから・・・」
「・・・人生をもう一度送ってみたくはありませんか?」
「えっ!どういうことですか?」
「異世界でもう一度、人生をやり直してみませんか?という意味です」
「それは、次があるなら今度こそ幸せを掴みたいですけれど・・・でもいいんですか?そんな特別待遇を受けても?」
「それは大丈夫です。他の人も記憶消去を受けてから転生させています。あなたの場合は記憶消去をせずに転生していただくだけですので」
あ、輪廻転生って本当にあったんだ。
「ちなみにその異世界ってどういうところなんですか?」
「転生していただく異世界ファービュランスは、魔法がある中世ヨーロッパのようなところです。技術レベルは日本国と比べてかなり低く、魔法に頼った技術が多いですね。他にも魔物が数多く存在し、人は魔物を倒したり農業をしたりしながら暮らしています。貴族や王族は国や領地の運営をしてすごしていますね…最近は悪徳貴族も増えてきましたが」
「魔法があるんですか!」
ファンタジーゲームの魔法って色々できて楽しいんだよね~。それが現実に使えるようになるかも!
「ええありますよ。魔法は火・水・風・土・電気・光・闇・無の8つの基本属性があり、それを進化させた爆発・氷などの特殊属性があります。といっても電気属性を使える者はいませんけどね、電気や雷の概念を捉え、魔法としてイメージできる者がいませんので」
「つまり魔法はイメージが大切なんですか?」
「はい、イメージと上位魔法ならば対応した『スキル』が大切です」
「『スキル』って何ですか?」
「スキルとはレベルアップするたびに獲得できる『スキルポイント』を使って習得するものです。例えば火魔法を使うのに必要なスキルは『火魔法スキル』と呼ばれており、これは常時発動型のスキルなので『パッシブスキル』と呼ばれています。一応火魔法スキルが無くても『ファイヤーボール』などの下級魔法は使えますが、魔力消費が増え、威力が下がります」
「色々と突っ込みたいけれど…とりあえず『レベルアップ』って何ですか?」
「そのままです。ゲームで敵を狩って経験値を稼いでレベルを上げる…あれと同じようなものです」
「『スキルポイント』は?」
「レベルが上がるたびに1スキルポイントを得ることができます。ギルドという場所でスキルを習得、あるいはスキルレベルを上げる際に必要となります。スキルは自分が今までに使ったことのある魔法や行動に関連するものしか習得できません。ギルドは各町に必ず1箇所は存在します」
「魔物は強いんですか?」
「人間よりは強いですね。人間は数で対抗している状態なので、魔物と同数か魔物の方が多ければ確実に人間は負けます」
う~ん。魔法は楽しそうだけれど、魔物に食い殺される未来しか見えないなぁ…そうだ!異世界転生っていったらやっぱりチート能力!あれがないとネット小説の転生者ってほとんど死んでると思うんだよね。何とかしてチート能力をもらわないと。
「そんな世界に行ったら私、すぐ死ぬと思うんですけれど」
「あ、大丈夫ですよ。あなたの思っているように能力つけるんで。」
もしかして心読まれてる?
「目の前にいる人の考えていることぐらいなら分かります」
あ、そうですか。そりゃ神様だしね、心ぐらい読めるよねぇ。
「それでどんなチートをくれるんですか?」
すごい能力よこせとは言わないから、楽しく過ごせるようになるものが欲しいな。
「うーん、どうしようかな・・・。ちょっと待っててね、あなたにあげる能力の準備してくるから」
あ、行っちゃった…。早くして欲しいな、うざったいクソ親父を見ていたくないから。あ、警察が来た。クソ親父が逮捕されてる。いい気味だ、そのまま死ぬまで刑務所入ってろ。
10分後
「お待たせしました~ちょうどいい相手を見つけてきましたよ~」
うん?相手って誰?体は神様が作るんじゃないの?
「まあまあ、まずはあなたに与える能力を発表します。あなたには転生ボーナススキルを6つあげようと思います」
「6つって多くないですか?」
「こっちで不幸だった分、次は幸せになって欲しいのでサービスしました。でも本当にチートといえるものは1つもありません。もらったスキルで無双なんて楽しくないですからね。努力をして強くならないとスキルの効果をきちんと使いこなせません。なので努力は怠らないようにしてくださいね」
「それはもちろん。弱いと危険な魔物と戦えませんから…それで、どんな能力なんですか?」
「はい、あなたには【システムメニュー】【絶対攻撃の意思】【システムレベル】【システムアシスト】【上昇ステータス最大化】【完全回復】をあげようと思います。詳しくはシステムメニューのヘルプを見てね」
「チートっぽい名前が混じってるような…あれ、異世界って言語が違いますよね?自動翻訳みたいな能力はないんですか?」
「それはあなたの相方に期待していてください。それでは転生を開始します。頑張ってねー」
「ちょっと待って!相方って何!どういうこと!?」
「あなたの相方が願ったのよね、『友達が欲しい』って。じゃあ共同生活頑張ってねー」
「共同生活!?相方って同性だよね!男じゃないよね!ねぇっ!」
「はいあなたと同じで――」
神様の声はそこで途切れ、私は転生を果たした。
・・・って、いきなり殴り飛ばされんだけど!どういうこと!?