1-01 幸無き少女その1
初投稿です。よろしくお願いします。
この物語はフィクションです。実在の人物・事件・団体・国家とは何も関係ありません。
第3話の途中まで鬱展開+グロ注意です。
私、佐藤愛菜は不幸だった。
私はいじめと虐待を受けていた。
互いに愛し合っていた両親から生まれた私は、二人にとっては愛の結晶ではなく、2人の時間を減らす邪魔者でしかなかった。
だから私は虐待を受けた。
私が楽しかったのは保育園にいるときだけだった。家にいる間は0歳の時から碌にミルクも与えられず、オムツも取り替えてもらえなかった。
私が3歳になると両親は家を留守にすることが増えた。3歳では一人で食事も作れない。だから私は保育園での昼食のみで一日を過ごすことがほとんどだった。
小学校入学が迫った休日に、両親は煮え立つ鍋に私の顔を入れた。顔は焼け、酷い有様だった。
そんな顔だったので当然、私はいじめの対象になった。
教科書を隠される・捨てられるはもちろん、上履きに画鋲を入れられたこともあった。
火傷自体は2年生になるころには治ったが、それでもいじめはなくならなかった。
私をいじめていたのは同級生だけではない。上級生も先生もいじめに参加していた。
4年生の時に6年生と担任と校長に犯され、暴行を受けた。そのことが原因で、私の子宮は破裂した。
男共は「てめぇの遺伝子なんかゴミ屑なんだよ!こんな遺伝子は世の中に要らねぇんだよ!」などと言っていた。いじめなんてレベルの低いことをやるあんたらの遺伝子の方がよっぽど要らないと思った。
中学校に入ると、アパートに入れられた。
親は「帰ってきて欲しくないから、家賃と授業料だけは出してやる。後は勝手にしろ」だと。
仕方ないから年齢を偽ってアルバイトをした。学校でいじめられ、放課後は犯され、着替えてから真っ当なアルバイトへ行く毎日。真っ当なところじゃないと・・・少しでも真っ当な人たちを見ておかないと・・・そうしないと気が狂いそうだった。
日曜日は数少ない癒しの日だった。私は図書館で勉強、家ではゲームをしてすごしていた。
いじめ野郎共から離れる為に少しでも遠くのまともな高校へ進学する為に・・・。ゲームは今の状況から逃避する為にやっていた。ゲーム内での私は別人のようだった。人から受けた恩は必ず返し、悪いことをしてきた奴らは徹底的に叩きのめした。これがおそらく本来の私なのだろう。善意には善意で、悪意には悪意できっちりと返す、その徹底振りが好感だったようで、私は評判も良く、ネット上での友達もたくさんできた。現実には、友達なんていないけど・・・。
高校に入ると親からの仕送りは一切無くなった。
幸いにもできるだけ遠くでアルバイトOKのレベルの高い高校に奨学金を使って入ることができたから、そこまで苦労はしなかった。
さすがにレベルの高い高校生はいじめをしなかった。だがネットに出回っていたモザイク無しの強姦写真や動画のせいで、高校でも友達はできなかった・・・いや、誰も声をかけてくれなかった。
私はいじめが再発しないように体を鍛えることにした。
体を鍛えておけば、正当防衛で返り討ちにできるから・・・。
勉強もゲームも続けた。どうやら私は、気になったことは調べたくなってしまうようだ。ついつい要らないことまで調べてしまう。銃火器や爆薬、毒薬なんかの作り方を覚えてどうするんだ。怪我の治療法とかサバイバル術なんかは役に立つかもしれないけど。
あといじめていた奴の家も調べ上げた・・・なにもしないけど。
初めて全教科満点を取った・・・いや、正確には「初めてテストが返ってきた」だが。小中学校でも結構点数は良かったと思うんだけど、テストが返ってこなかったんだよね。あのクソ教師共め・・・
初めて運動会…もとい体育祭に参加した。今までは参加させてもらえなかったんだよねぇ。今まで運動会はみんなで楽しむものだから、私は参加できても楽しくないと思っていたけれど、想像以上に楽しかった。特にパン食い競争!今日の昼食代が浮いたよ、ラッキー♪
初めての文化祭は焼きそば屋で、焼きそばを焼く当番をほったらかした男子の代わりをずっと務めていた。文化祭を一人で回っても楽しくないしね。その男子は後でクラスメイト全員に非難されていた。
――――――――――
季節は過ぎ、今は高校3年の大学受験前日。
友達はできなかったけど、中学までと違う面白く楽しいことを数多く経験できた。
最後の体育祭ではパン食い競争に参加できなかった、ちくしょう。
代わりに100m走とフルマラソンに出場した。走り終わった後、大学関係者達がスポーツ推薦を薦めてきたけど全て断った。私が目指しているのはT大学のみ!近場でいじめっ子共が行かない大学がそこしかなかったんだよねぇ。まあセンター試験とT大学2次試験過去問集で満点を取っていたから大丈夫でしょう。
ピンポーン
現在夜10時過ぎ。こんな遅くにインターホンを鳴らして訪ねてくるなんて、誰だろう?
「はーい・・・って、お母さん!?」
家になぜか母がやって来た。中学校入学以来会っていないのにどうして?
「愛菜、明日試験でしょ?差し入れを持ってきたの」
どうして明日が試験だって知ってるの?センター試験じゃなくて2次試験だよ?
「分かった、すぐ開けるからちょっと待ってて」
明日に備えて早く寝たいからとっとと帰ってもらおう。そう思いながら扉を開けた。
「お母さん、久しぶり」
「愛菜!久しぶりね、元気してた?これ差し入れの沢庵ね、はい!えっ、今すぐ食べたい?しょうがないわね!ちょっと上がって準備するね!」
・・・なに、今のマシンガントーク。私、食べたいとも上がってとも言ってないんだけど。勝手に入ってるし・・・
「何で玄関に突っ立てるのよ。早くこっち来なさい」
とっとと食べて帰ってもらおう、疲れるから…そう思い、母に頷いた私はドアの鍵を閉め、母のところに行くと・・・
母は私のお腹目掛けて包丁を突き出してきたではありませんか!
「っ!」
私はそれをぎりぎりかわし、そのまま母の腕を掴んで柔道の背負い投げをした。
びたーん!
「うえっ!」
母は床に叩きつけられた衝撃で気絶したようだ。
私はぺたりと地面に座り込んだ。
今のは明らかに殺意があった・・・ゲームで向けられる悪意じゃなく、明確な殺意が・・・確かに両親は私を嫌っていたけど・・・殺しに手を染めるほどではなかったはず・・・いや、そんなことも無いか。未就学児を鍋に突っ込むぐらいだし。・・・うん、母ならやりかねないな。そう考えたら気が楽になった。
「とりあえず縛って警察に通報かな」
私はガムテープで手足を縛り、携帯で通報した。
10分ほどで警察官が到着した。
その後は、事情聴取を受け、気絶した母は警察官4人に運ばれていった。
ちなみに沢庵からは尿とヒ素が検出された。・・・尿なんか入れたらヒ素のことを知らなくても臭くて食べないと思うんだけど、何で入れたのかな?
ともあれ私の入試前日は全く心休める暇もなく終わった。ほんと、何考えてんだあのバカ共は。
――――――――――
大学の合格発表の日になった。
母は現在仮釈放されており、アパートに暮らしているらしい。なんでも父母共にギャンブルにはまって借金して、家を押さえられたらしい。
まあ、私には関係の無いことだ。高校入学時に手続きをして親子関係も断ってるし。もう赤の他人だ。
「サクラサク」
誰に言うでもなく呟いた。
大学はちゃんと合格できていた。
入学手続きを済ませ、私は帰路に付いた。
私は、少し浮かれていた・・・
だから、後ろに注意が向かなかった・・・
そして私は、後ろからの強い衝撃で意識を失った・・・