2条1丁目-1
2条1丁目 最後の1人
[side-OKANO]
多摩丘陵の中央に位置する東京都本郷市。その地下に建設された新本郷地区は、片道10km四方、高さ40mの巨大地下空間である。自動車の乗り入れは禁止され、交通手段は市電のみ。自転車すら存在しない。その代わり市電は縦横無尽に走っていて、大体200~400mくらいの間隔で電停がある。
その新本郷で毎年6月に開催されるのが、本郷地区高等学校対抗駅伝競走大会、通称「新本郷一周駅伝」である。新本郷と地上の高校の陸上部が参加するこの駅伝は、本郷地区の高校の陸上部員にとっての一大イベント。今年は、6月2日土曜日に開催される。
新本郷一周駅伝という名前だが、1区だけは周回コースではない。新本郷の中央、24条51丁目から、24条線を西へ走り、西端の24条1丁目で中継。2区からは周回コースに入り、101条1丁目→101条101丁目→1条101丁目→1条1丁目と進み、24条1丁目でフィニッシュ。全7区間、47.0kmのコースである。
5月7日月曜日。
我らが新本郷十二高では、練習の後、スタートメンバーが発表された。去年までは長距離選手が6人だったので出られなかったのだが、今年の1年生、俺こと岡野翔と、戸部孝太の2人が入ったので、出られるようになった。
十二高にとって初めての新本郷一周駅伝。そのメンバーは、
1区(7.0km) 岡 野 1年
2区(4.1km) 戸 部 1年
3区(6.5km) 楠 2年
4区(9.5km) 山 内 3年
5区(7.4km) 内 田 2年
6区(7.0km) 久 保 3年
7区(5.5km) 桜 木 2年
全コースの中で3番目に長い1区。
スタートの1区で前に出られれば、その後の展開に有利になる。
新本郷は平坦な地形。坂道は一つもない。
地上の大会なら坂道や橋で仕掛けたりするらしいんだけど、新本郷一周駅伝ではどこでも仕掛けられる。
そう思っていた時期が、俺にもありました。