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零の魔弾  作者: miki
3/5

絶望の改訂


魔法科の授業はレイにとって、とても楽しかった。


自分が魔法を使えないとはいえ、それが自分の力になる事を想像するだけで空も飛べそうな気持ちになっていたのだった。


しかし、それをよく思わない者も少なくなかった。力を持つ者にとって、そうで無い者が同じところにいるだけで気にくわない。そんな人間は割と存在するものだ。


「よう!ゼロ!何でお前ここにいんだよ?魔法が使えないのに勉強しても意味ないだろ?」


魔法科クラスにも関わらずやたらとガタイのいい少年がニヤニヤしながらレイに話しかける。


「だから俺の名前はレイだって何度も言ってんだろ!」


「あ?口答えするのか?ゼロの癖に。」


「そろそろやめときなって。相変わらずマセリは口が悪いなぁ。それに、レイもいつもの事だろ?構うなよ。」


青髪糸目の少年が間に入り宥める。


マセリと呼ばれた燃えるような赤い髪の少年は不愉快そうに言った。


「なんでお前みたいなレスエレメントが特進クラスにいるんだよ!意味わかんねー!」


魔法科では戦闘術技と筆記でクラス分けがされている。特進クラスに入る為には二つの総合で競うという訳ではなく、どちらかが基準値以上であるならば特進クラスに入れると言った評価基準だった。


言うまでもなくマセリは前者、レイは後者だった。


「いやー、全く座学がダメな赤ゴリラには言われたくないね。これだから脳筋は困る。」


「あ?誰がゴリラだコラ!やるかオイ。」


「マセリが脳筋なのはわかるけどさ。レイもガリ勉だろ?ほらほらやめなよ。そろそろ先生が来るからさ。」


「ラフィスは地味に毒を吐くな。」


レイはラフィスと呼ばれた糸目の少年をじとりと見た。


「お前はいつもどっちの味方なんだよ!」


マセリが苛立つ様に言う。


ラフィスと呼ばれた糸目の美少年は「さあね?」と意味深に笑った。


「全く…。意味わかんねー。」


マセリは少し気味悪そうに言った。


レイはどっちの味方なのかわからないラフィスが少し苦手だったが、いつも敵対視してくるマセリとの間に入ってくれるのは感謝していた。


その時、ガラガラと扉が開く。


それを合図に全ての生徒が素早く自分の席に着く。


しかし、現れたのはいつもの担任ではなかった。


「あれ?先生じゃねぇぞ。」


何やら物々しい雰囲気を感じ、マセリがボソッと言う。


「あのローブ、魔法局の人達だ。」


教室の誰かが呟く。


ぞろぞろと三人の黒いローブをまとった人が現れた。三人ともフードを深くかぶっており、顔もよくわからない。


中心に居る黒いローブを着ている人が話し出した。どうやら声の質から男性のようだ。


少し高圧的な雰囲気で彼は話を始めた。


「御機嫌よう。この国の未来を担う特進クラスの諸君。この度、国の教育制度の改正があり、その審査の為、我々は王都からやってきました。」


教室内がざわつく。


「静かに!」


男性の静止する声で教室は静まり返った。


「制度の改正と言っても大したことではありません。恐らく、ここに居る殆どの生徒達が特進クラスに残ることになると思いますので。まぁ、一部を除いてのことですが。」


…え?俺睨まれてる!?


ローブから何やら睨みつけるような視線を感じ、レイは嫌な予感がした。


「かい摘んで言うと、これから特進クラスは、殲滅力がある、未来ある生徒のみを対象としたクラスになります。つまり、これからは学力よりも、戦闘術技を重視すると言うことです。」


「は?」


レイは思わず言葉に出してしまった。


「おい!そこの男子!静粛に!」


右奥にいる魔法局員に咎められた。


「は、はい。すみません。」


…う、嘘だろ…。レイはその言葉に衝撃を受けた。当然のことだろう。初級魔法の魔弾しか使えないレイ殲滅力を求めるのは無謀だと言うものだ。


それに、特進クラス以外の魔法科の授業はレベルが低かった。

特進クラスでもトップクラスの学力を持つレイには学ぶべきことは一つもないのだ。下位のクラスに落ちてしまっては毎日の勉強も無駄なものになってしまう…。


まるでエレメントの無い自分だけを狙い打ったような魔法局員の言葉に、レイは絶望感を感じた。


「何か質問がある者は挙手をして発言しなさい。」


「はい!」


セミロングのポニーテールの金髪の女の子が少し苛立ちながら挙手した。


「では、そこの金髪の女子。名前を言ってから発言しなさい。」


「はい。私はセレス・クローディアと申します。」


金髪の女子は立ち上がり、スカートを摘んで優雅に挨拶をした。


「おお!クローディア家のご令嬢でしたか。私はザイル・ノノームと申します。ヴェイン殿にはもいつも世話におります。」


「カレス・ミストレスと申します。」


「…ミヤ」


すると、三人の魔法局員がローブを脱いで深々とお辞儀をはじめた。


ザイルはやせ細ったスキンヘッドの男性だった。しかし、目はギラついており近寄りがたい雰囲気を醸し出している。


しかも、様子を伺うような高い声色の割に表情が変化していない。何やら修羅場をくぐってきたようなそんな空気を感じた。


残りの2人は女性だった。


カレスと名乗った女性は空色の髪の毛を後ろでひと結びにしており、とても顔が整っていた。どちらかと言うと美人系だろう。腰に短めの剣を指している事から、魔法剣士であることがわかった。


最後にボソリとミヤと名乗った人物はとても小柄な女性だった。ローブを脱いでも全身黒ずくめで、真っ黒な髪の毛を地面に着くまで伸ばし、前髪も両目を隠すほど長く、常に口元は笑顔で不気味な雰囲気を醸し出している。


両耳で揺れる月をかたどったイヤリングが目を引く。


「ザイルってまさか『鉄壁のザイル』か!

あのフォースエレメンツの1人の!?」


隣に座っている坊主頭のタローが驚く。

レイはいつもながらへんな名前のやつだと思った。


「いえ、ご挨拶は不要です。それより、随分と急な改訂ですが、何かあったのですが?私も初耳で驚いているのですが。」


「ええ。実は、本日決まりまして、国王様よりも書状も頂いております。確認されますか?」


「いえ、結構です。しかし、どうしてそんな急に…。」


セレスは頭を抱えた。そして、レイの方をチラッと見た。


「ともかくこれは既に決定事項です。

皆様方。10時に魔術訓練所に集合してください。すぐに査定を始めます。」


その言葉を残してザイル達魔法局の人達はその場から去っていった。


緊張の糸が切れ、生徒達は思い思いに喋り出す。


「マジかー。」


「やべー。術技は自信ねーよ!」


「よっしゃ!俺の時代がきた!!」


次々に言葉を発していく生徒たち。そんな中、レイはと言うと、魂が抜けた様に呆然としていた。


それも仕方のないことだ。レイが特進クラスに残れる可能性がほぼなくなってしまったのだから。


そんなレイの肩をラフィスが叩いた。


「まだ、終わったわけじゃ無いだろ?そんな顔するなよ。」


ラフィスも少し辛そうな顔だった。


「ああ。ありがとうラフィス。」


そんな中、意外にもマセリはレイに話しかけては来なかった。


どうやら彼はレイの事など目に入ってないようだった。


レイは少し安心したが、同時に虚しい気持ちになった。



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