【スーパーショートシリーズ 2】線路はつづくよ
――― 辞令 矢野陽一 技術開発部勤務を命ずる
春になって、人事異動を言い渡された。
今いる営業部から、ずっとずっとやりたかった技術開発部への異動。
まさに栄転だ!
日頃の頑張りが認められた結果だった。
「そうだ!今度の休みは、娘と電車の旅をしよう!」
気分転換に僕は娘の未来と、電車で出掛けることにした。
日曜日。
「わ~~~い!でんしゃ、でんしゃ~~~!!」
5歳の娘、未来は、大はしゃぎ。
いつも出掛ける時は車だからなぁ。
たまには電車で出掛けるのもいいものだ。未来も、喜んでる。
「♪せ~~んろ~はつ~づく~~よ~~ ど~~こま~~で~~も~~♪」
幼稚園で覚えてきた歌を歌いながら、未来は、映りゆく景色に目をキラキラさせていた。
「終点~終点~~」
電車は終点の駅に到着した。すると、未来 が、困った顔をした。
「でんしゃ、ここでおわり??」
「終わりだよ!降りるよー!」
電車を降りようとしたその時、未来が僕に謝った。
「パパ~、ごめんね!みく、うそついちゃった!!」
あれ?未来が、僕に謝ることなど何もしてないのにな…
「なんで、うそついちゃったの??」
僕は優しく みく に問いかけた。
「だってさ~、みくね、おうたで、せんろはつづくよどこまでもってうたったの。でも、せんろおわっちゃったから。もう1かい、おうた、うたいなおすね。」
みくの言う嘘がなんなのか、さっぱりわからなかった。
すかさず、みく は、もう一度歌い直した。
「♪せ~~んろ~はつ~づく~~よ~~ お~~わり~~ま~~で~~♪」
あまりにもシュールな未来の替え歌に、僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。