第9話
バイト先。
客がいないレジの中で一人ため息をついた。
「はぁぁぁ~~~~。」
そんな大きなため息なので、レンさんが
「どうしたのアタル君。最近タメイキ多いね。」
「いや~…そんなことないよ~…。風邪大丈夫?」
「あ…うん。それよりもそっちが大丈夫?なんか落ち込んでるの?」
「……うーん…。レンさん、質問していい?」
「あら、M高生の人の質問に答えられるかしら?フフ。」
かわゆいぃ~…。
「これは、アレね。例え話ね。うーん。なんつんだろ?友人の体験談。」
「ハイハイ。」
「女の人ってさ…。告白しました。振られました。で、1時間しないウチに別の男…けっこう親密な友達から告白されました。…つー場合はさ…。」
「…ウンウン。」
「すぐに前の恋を忘れて、次の恋をスタートできるものなの?」
「えーーーー???超難問…。難しいね…。でも、あれだよね。女の子の方がすぐに前の恋から踏ん切りがつくとはいうよね?」
「ウン。聞いたことある。」
「でも、1時間しないうちでしょ~?無いかな~。普通は…。」
「だよね~。」
「なに、アタル君、告白されて振っちゃったの??」
「ブッ!ちょっと!ちょっと!ちょっと!」
「あははははははは。」
「勘弁してよ…鼻まで出ちゃったじゃん…。」
「なにしてんのよ~。すぐ手洗い励行!消毒してレジに立ってね!」
「コワ…。もうさ…。自分で吹かしといて…。」
手を洗浄して、消毒液をかけてレジに戻ると…
「アタル君モテそうだもんね。菅田将暉に似てるもんね。」
「ウン…たまに言われるけど…モテはしないかな…?」
「去年のバレンタインはいくつもらいましたか?」
「4っつかな…?でも、義理だよ?そう言われたし…。」
「え?どういう関係の人から?」
「(食いつくな…)えっと…幼なじみと、部活の後輩と、同じクラスの子…、あと…知り合いのお姉さん?」
「その中の人に告白されたでしょう!」
「ブッ!」
「また、鼻でた!あはは!」
「…もう勘弁してよ…。また洗浄しなくちゃならないじゃん…。」
「でも当たった!そうか~。モテ男くん。」
もう一度、洗浄…消毒…。
はぁ…。レンさんの前でハナ出しちゃうなんて…。
「でも、一回も女の人と付き合ったことない。」
「そうなの?告白されたのも初めて?」
「いや…何回かあるけど…。今まで部活とか勉強とかであんま興味なかった…。」
「ふーん。そんな人いるんだね~。じゃぁ、恋には奥手なんだ~。」
「そうかも…。」
「じゃ、恋したことないの?」
「うーん…。…最近初恋を味わったかな…?」
「えええ?どんな人?」
「すっごくカワイイ…。」
「そーなの!?そーーなの!!?すごい!そんで???」
「でも、恋敵がいて、勝ち目ない…。」
「あーーーん!そうなんだ~!!でも、アタックしてみたら?」
「ウン…してみようかな…とも思ってる…。」
「いいな~青春だな~!」
「レンさんは…。」
「え?」
「今まで付き合ったことは…。」
「……うーーーん…。」
「まずいこと聞いちゃった?」
「…でもま…、話の流れだしね…。」
「ゴメンゴメン。」
「付き合ったことはあるけど、すぐ別れちゃうんだよね。」
「そうなんだ…。」
「男の人って、なんですぐ目移りするんだろ…?」
「そうなの?レンさんみたいな美人と付き合ってても??」
「フフ…。美人じゃないでしょー…。」
「あ、いや…。」
「ウン…。いつも年上の人なんだけどね…。」
「うんうん。」
「実は他に彼女がいましたとか…、実は私の友達にもモーションかけてましたとか…、風俗にいってましたとかさ~。」
「結構…付き合ってるね…。」
「んーーー。でも、今まで付き合ってた人はバカばっかし!すぐ発覚しちゃうの。だから何にもないまま、ひと月くらいで終了。短いのは4日。まー…騙されてるよりは発覚してよかったかな?」
「そーなんだ…。」
「男運悪いんだよね~。」
「自分から?」
「ん?」
「全部、自分から行く感じ?告白…。」
「え?なんでわかるの?そうそう!」
「この前も吉沢さんに自分からグイグイ行ってたよね?」
「あは…そうだったね~。」
「そういう人は、自分が好きになった人じゃなく、相手から好きになってもらった人とつきあうと長持ちするんじゃない?」
「あ、へ~。なるほど~。じゃ、あたしを好きになってくれた人と付き合えばいいんだ。」
「そうそう。」
「そんな人現れるかなぁ?フフ。」
「近日…。」
「え?ふふ…M高生さんの予言?信じてみようかな??」
ユーヤ~。オレにもなんか
暖かい光が差し込みそう…。