第8話
一夜明けて学校。
サオリを振ってしまい、アタルには少し心に重いものが引っかかっていた。
そこにユーヤが登校してきて、アタルの机の前にカバンを置いた。
ユーヤに聞きたいことがあったアタルは、さっそく質問を投げかけた。
「昨日は、わけのわからないLineありがとうございました。」
「いえいえ、どういたしまして。」
「どういう意味?」
「と…申されますと?」
「サオリも一緒にさ…「ユーヤと友達からスタートしました。」ナニソレ。」
「ハハ。昨日は、サオリに告白されたようでおめでとうございます。」
「なに?知ってんの!!?」
「サオリから告白するっつーLineが来てさ…。俺も遅れてだけど近くまで行ってた。」
「そーなんだ…。」
「そんで、まー、13年の思いを伝えた彼女に、不肖オレめも13年の思いを伝えました。」
「マジ??タイミング激悪じゃね?そんでどうなった?フラレタの?いや違うな…」
「そうです。お友達からはじめることになりました。」
「それが分からん…。今まではお友達じゃなかったの?」
「どうか、末永く僕たちを暖かく見守ってて下さい。」
「いや、答えてないよね?どういうこと?」
「俺もよくわわからない…話の成り行きでそうなった…。たぶん、試用期間…的な?」
「そーなの!?」
「そーですよ。…いやオレはそう思ってるってだけだけど…。」
「そーなんだ…。でもそこから男女の仲に進展するって難しくない?」
「フッフフーーー。知ってる?お互いの手をつなぐとメッチャあったかいんだぜ?」
「えええーーーーーー!!!!」
思わず大声を出して立ち上がるアタル。
周囲を気にしてもう一度席に座る。
「もう、13年溜まりに溜まってるからね~。グイグイいくよ~!」
「…ハァ…。すげぇ…。」
「オイオイ…大丈夫?」
「正直、うらやましい…。俺もレンさんと手をつなぎたい…。」
「ずいぶん、望みが低いな…。」
「憧れなんだよ…手をつなぐとか、握ることが…。」
「そんなフェチがあったのか…。」
ユーヤ、アタルのフェチを初めて知り、多少驚きもあったがM高生に等しく放課後が訪れる。
「じゃぁ~、帰るかぁ…。」
「おーーーう。」
と、教室を出ようとすると、出入り口に急に飛び込んできた生徒とぶつかりそうになった。
「あぶね!」
「キャ…!」
「(ドキ)あ…サオリ。」
「あ…アタル…。」
「ごめん。」
「ん。大丈夫。あたしも急いできたから…。フフ」
「んじゃ、行きますか。」
「よし!野郎ども、ついてきな!」
いつものように、学校を出て…
いつものように、「ユーヤ」と「サオリ」が並んで歩く…
その後ろに「俺」…。
いつも通りなんだけども、
何?友達になった?
それって今まで通りじゃね?
でも、大きく違う…
なんで???
「じゃぁ、今日は図書館で調べものもないし、ユーヤの家で一緒に勉強しよっか。」
「ええ!!?」
驚いて、アタルは大きな声を出してしまった。
「ん?どした?」
「へんなの…。」
「二人っきりで勉強???」
「いや、オマエがバイトし始めた頃からしてんじゃん…。前は三人でもしてたろ?」
「いやいや、男女が二人っきりで…。」
「プ…。なにそれ。いつもしてるけど?」
「意識し過ぎかな~。お前らが友達スタートってなんか変…。」
「なにもねぇよ!」
「…ないよ…。」
「んん???」
「え?」
「なんか、サオリの様子がおかしい風に感じました。」
「ないってば!うるさいな~…。」
「そ、そう??」
「こっちは誰かさんみたいにもともと頭よくねーから受験勉強で精一杯。忙しいんだからさ…1秒でも惜しいわけよ。」
「そ。同じ大学に行くんだもんね~。」
「ええーーー!ユーヤK大だろ?サオリY大じゃなかったの?」
「ユーヤがY大を目指しまーす!」
たった1日なのに…。なに、このめまぐるしい変動…。
頭おかしくなりそう…。
それに、昨日、俺の目の前で落ち込んで泣いてたのに…
なんで今日はそんなに楽しそうなの?
俺がおかしいの?
なにこの現象…。
教えて!誰か教えて!!
「じゃあな。アタル。バイト頑張れよ!」
「おう!オマエらも勉強頑張れ!」
といって、二人とも家路につく…。
いつもだったら、すぐにバイト先に入るのに、
なぜか、後ろ姿を見ていると…
どちらともなく、手をつなぎ出した!
ガーーーン!!!
なにそれ!なにそれ!!
すごいね!仲いいね!!
うらやましい…。
なぜか、サオリがメチャクチャきれいに見えるし…。
ああ、うらやましい!
損した!こんなことなら…。
ん?損した?いやいや…オレには好きな人がいるんだろ…。
そう言って、サオリの13年の思いに答えなかったんだから…。
今さらクヨクヨすんなよ!オレ!
頑張れ!!!