第5話
「はぁ~あ…。」
バイト先…。レンさんに会えるけど…ユーヤの言葉が的を得すぎててなんかテンション上がらない…。
でもでもでも、一緒にいる時間は吉沢さんなんかよりずっと、オレの方が多い!
チャンスはいくらでもあるっつーーの!!
「お!アタル君!おはよ!」
「あ!おはようございます!」
「昨日はごちそうさまね!彼女さんにも言ってくれたかな?」
う、うれしそうに…。
「いや!彼女じゃないっす。違うんすよ…。たまたま作ったのもらったんす…。」
「そうなの?昨日すっごい慌ててたから照れてるのかな~?って。うふふ。」
かわい~~い。
「誤解っす!レンさんが住んでるマンションも五階っす。」
「アハ!よく覚えてたね~。蚊がこないんだよね。」
「そっす!虫系をさけるならマンションっす!」
「んハハ。アタル君ってさ~。同い年なのに礼儀正しいよね。」
「そっすかね?」
「同い年なんだから敬語みたいのやめようよ。あたしもやめるから。」
「え!でも、レンさんは先にバイトに入った先輩っす!」
「アタル君の部活って厳しかったでしょ?」
「ハイ。中高とバスケっす!」
「先輩後輩ちゃんとしてると、そーゆー風になるみたいね。」
「そーゆーふーっつーのは…??」
「そーゆー感じで礼儀正しくなるの。じゃ、今からあたしたちはタメ語ね。」
「ハイ…。」
レンさんはカワイイ顔でキッと睨んで
「ハイじゃないでしょ。」
「…じゃ…オーケー。」
「んふふ…。あははは。」
「よかったっすか?あ、いや…よかった??」
「よかった。アタル君、これでいこう!」
「オーケー!」
「ウフフ…。あ、いらっしゃいませーー!」
「しゃいませー!」
「…吉沢さんだ…。」
「デス…ネ。」
「クッキー食べてくれたかな?」
「あ、あれメチャうまかったよ!売り物みたいだった!」
「あ、ホント?褒め過ぎ!ありがとね。」
「いやいや、お店出すべき!」
「そこまで言われるとなんかウソっぽいよ。ふふ。」
男客改め、吉沢さんがレジに来た。
なんかいつもより、量が多い。
「しゃいませー!」
「いらっしゃいませ。130円が一点。518円が一点。298円が一点。348円が一点。248円が一点。258円が一点。合計で1800円になります。」
「弁当とコーヒーが同じ袋で、お菓子は別の袋にして。」
「ハイ!」
「吉沢さん、昨日はクッキーありがとう。」
「イエ…。」
「久々に手づくりの味に感動したよ。じゃ、2000円で。」
「はい、2000円お預かりいたします。200円のお返しになります。ありがとうございました。」
といって、吉沢さんの手を握り、おつりを渡す…。
吉沢さんは弁当の袋をとり、もう片手でお菓子をレンさんに渡し…
吉沢「手づくりじゃないけど…。お礼ね。ありがとう。」ニコ
そ、そ、そ、そうか!
お礼を返さなくちゃいけないじゃないか!
レンさん、今日は放心状態…。
圧倒的な兵力!圧倒的な火力!圧倒的な物資!
この敵に勝ち目はあるのか~~!!?
クソ!クソ!クソ!
本日の業務終了…。レンさんとまた駅までの道…。
「レンさん、昨日のクッキーのお礼さ…。」
「んんん。いーーよ。いーーよ。送ってもらったお礼だし…。」
「いや、そういうわけにもいかないよ…。」
「じゃぁあ……。あ!飲み物!ジュースもらおうかな~。」
「ジュース?あーいいよ!なにがいい?」
「じゃ、あそこの自販機で…。」
うーん。このままデートに誘おうと思ったけど、時期尚早かな…?
すると、道の先から
「…あれ…?君たち…。吉沢さん??」
「あ!吉沢さんじゃないですか!こんばんわ!」
「!!!!…こんばんわ…。」
男客…改め吉沢さんだ…。散歩かな…?
「吉沢さん、この時間にお出かけですか?」
「ちょっと一杯飲もうと思って…。君たち、バイトも一緒の恋人同士なのかい?」
「いえ!!!!」
ガーーーン!!!否定はや…。ま…そうなんだけどさ…。
「吉沢さん、どこに飲みにいかれるんですか?」
「いやぁ、その辺だよ。馴染みの店?」
「いいなぁ~。あたしも行きたいです!」
「ホント?でも未成年でしょ?未成年は連れて行けないなぁ…。」
「吉沢さん!」
「え?」
「ラインID教えて下さい!」
もうだめ…。卒倒しそう…。
「…ライン…やってないんだよね。メールでもいい?」
「いいです!」
「じゃぁ、名刺渡すね。これに書いてあるから…。じゃ、またお店でね。」
「ハイ…。」
「………。」
「…すごい…。」
「……よかった…ね…。」
「なぁんてハッピーなの!!??ヤッターーー!!!アタル君!!イエーーー!!!」
といって、手を握ってきた!!
初めての感触に…しばし、ポーッとなったが…。
そんなこと言っておれん…。
これ、負け戦??ユーヤ軍師~~!
教えてくれ~!!!
ここで引いたら負け確定!
取りあえず押せ!押せ!!
「レンさん」
「え?」
「オレとラインやらない?」
「ウン!いいよ!アタル君のも欲しかったの!」
「え?」
「よかった!今日は二人のアドとIDゲット!」
「よかった…ああ…よかった…。」
オレは、ホーーーゥッとため息をついた。
「ん?ふふ…。」
よっしゃ!レンさんのIDゲット!
さんざん悩んで、メッセージ送信。
Line:アタル「よろしく!」
…それだけかよ…。
Line:レンさん「こちらこそ」
Line:レンさん「いま吉沢さんと」
Line:レンさん「メールしてた♡」
戦意喪失~~~!!!!
Line:レンさん「吉沢さん、社長さんなんだって~!」
Line:アタル「OK!おやすみ~。」
Line:レンさん「スタンプ:おやすみ。」
社長…社長だってよ…。
ユーヤよ……。俺に勝ち目は…ないのか…???