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俺の恋人には俺への悩みがあるらしい


「おしまい」から一か月と半月後…。


--------------------------


オレたちは病室。

レンさんはベッドに寝ているオレの手をずっと握ってくれている。


「もう、ずいぶん回復したねー。」


「もう、レンさんに手握ってもらえるように、手の回復に集中してた。ふふ」


「その集中力すごいよ。全治2か月が1月ちょいで退院か~。」


「これで、レンさんと、ラブラブ手をつなぎながら歩ける!あーーー!!」


「ふふ。もう、そればっか。来るとずっとつながされるんだもん…お手手ふやけちゃうよ~。」


かわいい…


「だってつなぎたいんだもーーん。」


「アタルくん、受験勉強はしなくてもいいんですか?フッフフ~」


「痛…痛い…急に腕が…」


「もう…。全然勉強しないんだから…。おかげで参考書読まされる、あたしの方がちょっと頭よくなった気分だよ。」


「ま~、なんとかなるっしょ!」


「M大がなんとかなるレベルじゃないと思うけど…。そんなで大丈夫なの?」


「ウン。大丈夫!大丈夫!」


「すっごい自信…。ま~M高も勉強しないで受かったらしいから…。大丈夫なのかなぁ…。」


そこに例の二人が入って来た。

ユーヤは勉強に疲れると、暇つぶしにここに来る。


はっきり言えば邪魔者。

レンさんがいないときに来るなら歓迎するけどさ。


「おっす!アタル!」


「おっす~!どーもー。レンちゃーん。」


「あ!二人とも!」


「おー来た来た。幸せ君とそのご一行。今日も恋のABCは進みましたか~?」


「…あのなぁ~。受験勉強でそれどころじゃねーよ!」


「そ…アタルのお見舞いだって、時間割いて来てやってんのにさ!」


「ホッホ~。やる気があって大変よろしい!」


「幸せ君って…人のこと言うけど、オマエずっと手ェ~つなぎっぱなしな。」


「あ…」


恥ずかしがって手を放すレンさん。

この二人、まさに邪魔者。


「あああレンさん、放さないで…。」


「いいんだけどさ…オマエの性癖知ってるから、なんかすっごいヤらしく感じる…。」


とユーヤが言うと、サオリが驚いて


「え???そうなの??」


「……性癖…。」


いやいや、レンさん、そんなに引かないで〜〜。


「なに言ってんの?手だよ?恋人だよ?つなぐでしょ?そしたら!」


「キレた…。まー性癖は言い過ぎた。つなぎフェチ?」


「……フェチ…。」


汚いものを見るような目でレンさんが立ち上がって二歩も下がった。

おいおい。ユーヤ!


「レンさん、そんなんじゃないよ。チガウチガウ。ただ繋ぎたいだけなんだよ〜。」


「だって、手、つないだ時に、変な声だす…。」


「レンさん、こっちにおいで。」


サオリにかけよるレンさん…。

そしてレンさんを抱きしめ、オレを睨みつけた。


「チガウの。手から全身でレンさんを感じたいだけなの!ユーヤ!!オマエ!」


「おーこわ。ま~、手がつなげるくらい回復できてよかったな。」


「まー、そうね。もうちょっとで退院らしいし。」


「これで、受験勉強もできるだろ?もう、鉛筆持てるだろうし…。」


「入院中は、レンさんの手をつなぐので忙しい…。」


「なわきゃねーだろ!」


「いいかげんにしろ!」


「でも…だって…。」


「ま…オマエならM大も大丈夫なんだろうけど…。」


ここで、サオリが攻撃に出てきた。

ユーヤと付き合い始めてからオレに対する優しさがなくない??


「なにが、デモダッテだよ…。ドスケベ。」


「ちがう!オレはスケベじゃない!純粋な愛!」


「なにがだよ。勉強しろよ。バカアタル!」


「かぁちゃんみたいなこといいやがって…。」


「スタンド持ってたら、手ェ収集してたよ?コイツ…。こわ…変態…猟奇殺人鬼…。吉良吉影…。」


「なんでだよ!レンさんと手をつなぎたいだけなのに…邪魔すんな!」


そんなオレたちの様子に大笑いのレンさん。


「うふ。うふふふ。」


かわいいなぁ…。


「さ~て…。ユーヤ、もう元気な顔も見れたし、息抜きもできたでしょ?帰るわよ。」


「え~?もうちょっとだけ…。」


「ギロ!」


「…さて!大好きなお勉強でもしましょうかねぇ~。じゃぁな!アタル!」


「おう!頑張れよ!」


「あたし、送ってくるね。」


二人に続いてレンさんも出て行ってしまった。



エレベータホールに向かう三人。ユーヤが


「アイツまだ立てないの?」


「そ…両腕の骨折は治ったけど、足首のヒビがまだなんだって。」


「手をつなぐ執念だなぁ…。」


「ただエッチなだけなのかも…。」


「…だね。」


エレベータまで送るレン。

二人と入れ違いに、別なエレベータから花をもった女性があがってくる。

その人を見たレンは心の中で


(キレイな女の人…)


エレベータに乗り込んだ二人はレンに手を振った。


「じゃぁね!レンちゃん!」


「またね!サオちゃん!ユーヤくん!」


病室に戻るレン。先ほどの女性の6mほど後ろ。


(誰かのお見舞いかしら?)


すると、アタルの部屋に入っていく。

病室の中からアタルの声が聞こえてきた。


「あれ?弓美さん?」


「こんにちわ。アタル。どう具合は。んふふふふ」


「あ~、回復がいいって先生も言ってました。どうして入院してるってわかりました?」


「あら、近所のウワサになってたのよ。だからあなたのお母さんに聞いたの。」


「あ、マジすか。わざわざありがとうございます。」


そんな二人の中に、レンはおずおずとした感じで病室に入ってきた。


「…こんにちわ…。」


「あら…こんにちわ…どうも…。」


「あ、弓美さん、紹介します。オレの恋人の…吉沢レンさんです。」


「あ、あら!そうなの!初めまして。アタルの近所の荒川です。」


「あ…どうも…。(ホントキレイ…。)」


「あ、じゃぁ、この子を助けたってわけね~。かわいい子ね。アタルにはもったいない!」


「レンさん、弓美さんには小さい頃から遊んでもらってたんだ。」


「…そ…。あたし兄弟いないから…。ま、弟みたいなもんね…。」


「そーそー。まー悪い弟でしたけどね~。」


「ホント。クソガキだったわよね。フフ。手を焼いたわ。」


「そこまで言いますか?ハハ。」


「あ、これお見舞い。花だけど…。んふふ。アタルには食べ物のほうがよかっただろうけど?」


「いえ、いただきます。あ、レンさん。ゴメン。花瓶に花さしてくれるかな?」


「…ウン…。(なによ…)」


「ホント、カワイイ子ね~。ね、ね。どこで知り合ったの?」


「あ、バイト先っす。」


「あら~、じゃ、美男美女のレジだったのね~。」


「いや~。美女はあってますけど~美男ではないでしょー。」


「またぁ、謙遜しちゃって。モテ男クン!」


「!!!」


レンは驚いて二人の方をガン見した。


「いや、もてないっすよ~。レンさんがはじめて付き合った人っす!フフ」


「そーなんだ~。んふふふ。でも結構コクられたりとかしてたわよね。」


「ま、そっすけど…。オレにはレンさんだけっす!」


「ま!カッコいい!…んじゃぁ~、そろそろ行くわね。仕事なんで…。じゃ、またね。」


出て行く弓美。

ベッドの上でアタルは会釈した。

レンは花を花瓶に挿しながら…。


「ねーアタル…。」


「(ドキ)えええ??どうしたの呼び捨て??」


「いーでしょ?サオちゃんだって、今の人だって呼び捨てでいってるんだから…ダメ?」


「いーよ!いーよ!じゃぁあ……レン……手をつないでくれないか…。」


「フフ。いいね。恋人同士みたい。」


かわいいぃぃぃぃーー!!


「いやいや、恋人同士だし。ね…手………。」


「ねーアタル?」


「なに?ふふ…。」


「あの人…弓美さんからも去年バレンタインもらってたでしょ…。」


「あ~、よくわかったね!そう。…前に話したっけ…話したか…。」


「やっぱり…」


「レンちゃーん…。手つなごー。」


「うるさいわね!そんなに握りたかったら、自分のを自分で握ってたらいいでしょ!」


「!!!…どうしたの…??」


「…なんでもない…ゴメン…帰るね…。」



うつむきながら家路につくレン…。


「はぁ……。」


あたし、ヤキモチ妬き…自己嫌悪…。


Line「チンコン…」


あ…アタルくん…


Line:アタル「ごめんレン…手、手、言い過ぎた…。」


Line:アタル「スタンプ:反省してます」


フフ


Line:レン「ううん…ゴメン…。あたしこそ…。」


Line:レン「スタンプ:愛してまーす」



病室で、ラインの返信をみて、オレは歓喜の声を上げた。


「おー!よかった…。よかったぁ!!」


「静かにして下さい。」


ナースさんが飛び込んできた…。こわ…。


「スイマセン…。」



そして、晴れて退院。

全治2か月が1月とちょっとだけ。12月中旬だった。


色んな人に迷惑かけたなぁ…。

バイト先に行き辛いけど、行けばレンにあえるぅ〜♪


「どもでーす!今日から出勤でーす!」


と言うと、店長の奥さんが心配そうに


「アタルくん、ありがとね~。受験なんだからそのまま辞めても良かったのに…。」


「いえ!12月いっぱいまでがんばりまーす!」


「ま、こっちはありがたいんだけどさ。ゴメンね。」


よかった。好感触。

さてさて。愛しのレンちゃんはっと…。


ふふ。いつものレジ前にいるね。


「レンさん、おはよーございまーす!」


「あ。アタルくんおはよ!退院おめでとう!」


みんなに恋人ですって報告するのは義務じゃないし、照れくさいからバイト仲間のままの演技をする二人。


「フフ…。なんか変な感じするね。」


「そだね。禁断の恋って感じ?」


「こそっと手つないでみる?」


「みない。」


「あ…そうなんだ…。」


「フフ…。」


やっぱ、かわええ…。

そこの常連のおばちゃんが来て声をかけてくれた。


「あら。店員さん最近いなかったわよね?」


「ハイ。入院してたんで。」


「あーそーなの?若いから無茶したんじゃないの?」


「ハイ…。ご明察の通りです。」


「若いうちは無茶しなくちゃね~!じゃ、どーも。」


「ハイ!ありがとうございましたー!」


いやぁ、心配されてたのかなぁ〜。

声をかけてもらえるってなんか嬉しいや。


「あ!先輩…。」


お。女バス(女子バスケット部)の後輩。

久々だなぁ。会うの…。


「いらっしゃいませ!…どうだ?部活は?」


「ハイ!みんな頑張ってます!…男子は…ちょっとふざてけるかも…。」


「マジか…あいつら…しょうがねーなー…。」


「ハイ!今度の日曜試合なんです。男子も。先輩見に来てくれませんか?」


「あ、うーん。でも受験勉強あるしなぁ…ゴメン。」


「あ。そーですよね~…スイマセン…じゃ、お仕事頑張って下さい!」


「おう!オマエらも頑張れ!」


そうか…。男子の連中しょーがねぇなぁ…。

ドコ高と試合かな?

まー、レンと行ってもいいかなぁ…?


「…かわいい子だね…。」


「あ、部活の後輩なんだ。」


「…受験勉強なんてしないくせに…。」


「だって、デートなんて言えないっしょ?」


「言えばいいじゃない!」


「(あれ?怒ってる?)…いや…でも…仕事中だし…。」


「フンだ…。」


かわいい…。


「ゴメン。次はちゃんというから…さ…。」


「もういいよ。さ~て。お菓子補充しよー。レジお願いしまーす!」


お、怒ってる…なんでだろ…。



オレ一人でのレジ。

行列ができても、レンが手伝ってくれない…。


はあ~。ようやく片付いた。

レンは…バックヤードでジュースの補充かな?怒ってるなぁ…。


そこに仕事帰りのOLさん。

この方もよく見る人。常連客だ。


「あら?店員さん…しばらくいなかったわよねぇ?」


「あ、そうなんです。入院してたんで…。」


「あ、そうなの?これ…じゃぁ、退院祝い…。コーヒー飲んで。」


といって、微糖のコーヒーを手渡してくれた。

初めてだな。こんなのもらうの。


「あ、ありがとうございます。頂きます。」


「んふふ…。じゃ、またね。」



一人さみしくレジをしてると、店長の奥さんが入ってきた。


「ハイハイ、ごめんね~。時間でしょ?上がっていいわよ~。」


あ、もう時間かぁ。

レンのこと気にしすぎて気付かなかった。


「あ、ありがとうございます。」


「じゃ、帰り気をつけてね。今度は事故らないように。フフ。」


「はい。お先失礼しまーす。」



バックヤードに入るとすでにレンは帰り支度…。


「…あの…レン…一緒にかえろ…。」


「…うん…わかった…。」


なんで怒ってんだろ…。



オレは先に店を出て自転車を引っぱり出して、レンを待った。


「ごめんね…遅れちゃって…。」


「ウウン…全然待ってないよ!じゃ、行こうか。」


駅まで歩く道、無言の二人。

退院して初めての共に帰る道なのに言葉が見つからない。


「んと…。」


「アタル…自転車、二人の間において引っ張ってくれる?」


「あ…ウン…。」


アタルは、レンの逆側で自転車を引いていたのだが、

促されるままに、自転車を二人の間に…。


やばい…感じか…。なんか…やな予感…


すると、レンはアタルの自転車を引く手に自分の手を添えた。


「あ♡」


「自転車引いてるままじゃ手つなげないでしょ?これでいい?」


「うん…すごくいい…。あー…♡」


「もう…変態だなぁ…。」


「チガウチガウ。純粋な愛だって!レン!ベンチ座ろ!」


「なんか…ハァハァ聞こえるんだけど…ねぇ…ホントに純粋なの??」


人気のないところのベンチで思う様に手をつなぐ二人…。


「あー最高!あー…♡…いいなぁ…。レンの手は…。」


「んふふ…。もう…アタルわぁ…。」


「だって、久々って感じなんだもん…。あ…そうでもないか…。」


「そーだよ?2日前くらい?」


「じゃ、やっぱ久々だ。あーーー♡!」


「もう、うるさいなぁ…。ん?ポケットになんか入ってる?」


「あー。お客さんからコーヒー差し入れてもらったんだ。」


「え?」


「退院祝いだって。一緒に飲む?フフ。」


「どんなお客さん?」


「…え?ちょっと年上の女の人かな?OLさん?」


「え?」


アタルはつないだ手を放したくないためか、左手でポケットからコーヒーを取り出し、そのまま片手で開封し、一口飲んだ。


「ちょっとまって!!」


「え?ゴメン。最初飲みたかった?」


「チガウ!なんか底に書いてある!」


アタルがコーヒー缶の底を見てみると、携帯電話の番号が書いてあった。


「あれ?誰の番号だろ…??」


「もう!その女の客に決まってるじゃない!」


「あ、そーなのかな?なんでだろ?」


「もーーー!かけて欲しいからに決まってるでしょ!」


レンはコーヒー缶を取り上げ、地面に叩き付けた。


「(なんかまた怒ってる)…かけて…みる…?」


「かけない!!もう!スーパー鈍感!!アタルがカッコいいから、電話番号渡されたり、試合見に来て欲しいに決まってるでしょ!」


「…そーなの?」


「なんでそーなの!?あたしばっかりヤキモチ妬いて!バッカみたい!アタル、カッコいいのに警戒心なさすぎだよ!!」


「ゴメン…。」


「ゴメンじゃない!」


「ゴメン…でも…。」


「なにが、でもよ…。」


「オレ…レンしか見えてない…。」


「……………。」


「わかんねーやオレ…。オレにははレンしかいないんだもん…。傷つけたらゴメン…。」


しばらく沈黙してしまう二人…。

アタルはレンの言葉を待っていた。

うつむいたまま、なかなか話さないレンだが、息を深く吸い込んで


「…あーー~あ!!」


「?????」


「…アタルってホントそうだよね…。あんなカワイイ、サオちゃん振っちゃうし…。」


「あ…うん…。」


「死ぬかもしれないのに交差点には飛び込んでくるし…。」


「…うん…。」


「アタル言ってたじゃん?好きになってもらった人なら長持ちするって…。」


「うん…。だからオレ…。」


「でもさ…あたしも、もうアタルに恋しちゃったんだよ。」


「あ…うん…。」


「あたしのヒーローを、誰にも盗られたくない!」


「うん…。」


「キレイな人とか、カワイイ子がアタルに近づくと怖い!」


「あ、でも、それは…うん…。」


「………でも…気付いた…。あたしが妬いてるだけでアタルは、普通のアタルなんだよね…。」


「…うん…。」


「…だからサ…。」


「…なに?」


「ヤキモチ妬いてゴメン…。」


「…あは…。」


「んふふ…。」


かわい…。


「質問ターーーイム!」


「おーーー!パチパチパチ~。」


「サオちゃんとはさ…13年の付き合いなのに、数ヶ月前にバイトで知り合ったあたしの方が好きなの?」


「ウン。大好き!」


「もう…。…なんで?ウフ…んふふ…。ふふふ…。」


かわいい…かわいい…


「なんでって…なんで…?でも恋ってそんなんじゃないのかなぁ…?」


「フフ。さすがのM高生さんでも難しい質問でしたか。」


「そうだな~。カワイイ、レンを見てると幸せな気分になる…」


「えー、フフ。ほ~。んふふ…。あは…んふふふ。」


かわい過ぎだろ…。


「でもさ!サオちゃんはあたしよりもカワイイと思うけど…。」


「そう?人それぞれじゃない?ユーヤはずっと好きみたいだったけど…。」


「んふふ…。じゃ、あの人は?…弓美さん?」


「弓美さん?…あは…弓美さん男だし…。」


「え?おねーさんじゃないの?」


「うん。本名幸男。」


「そうなんだ…。はは…。怖いね~。世の中…。」


「2年か3年前に働きだしたお店の名前で呼べって、俺たち3人で怒られた…。」


「なーんだ。そーか。ふふ。あはは…。」



「じゃ…もういい…?」


「なにが?」


「…その…手をつないでも…。」


「もう…またぁ?」


「ダメ?」


「…たまにはさ…抱きしめてみたら?」


「え?いいの?」


「いいよ!…人もいないし。じゃぁ、ホラ!立って!」


二人はベンチの前で向き合った。

高鳴る二人の鼓動…。


「(ドキドキドキ)…んじゃぁ…抱きしめます…。」


「(ドキドキドキ)そんな宣言必要ある?さ…ドンとこい!」


ドン!と音がするほど、はげしくレンを引き寄せるアタル。

辺りの空気は寒いが、そこだけがとても温かい。

お互いの鼓動が激しく打ち合いをするようだ。


「ん♡あー…♡…レン……。」


「ん…♡」


「これもいいねぇ…♡」


「ちょっとぉ♡少し…苦しいんだけどぉ…。」


「まーそうおっしゃらずに…あーーー♡」


「もーー♡…人きたらどうすんの~…。」


「あーーーー!!…よかったァ…♡」


「んふふ…じゃぁ…よかった♡」


「でも…あれかな…手にぎるほうがいいかなぁ…。」


「え?そう??やっぱ…変態??」


「チガウチガウ。ホラ…生身だから?」


「フフ…(ハダカで抱き合うようになったらどーなんだろ…この人…)」



<7年後>


大型ショッピングモール


通路を行く客を見て店員が顔を見合わせた。


「ね、なんか、あの夫婦と子供…ちょっとおかしいと思わない?」


「仲良く手をつないで歩いてはいるけどね…。」


「なんか違和感があるのよね…。」


「うーん…。たしかに…。」


「あ」


「ダンナが真ん中なんだ。」



【おしまい】

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

感謝しかございません。

どうぞ感想なりとも聞かせていただきますと幸いと存じます。


彼らの話はこれで終わりですが、次回作は明日より毎日アップの予定です。

そちらも読んでいただけるとありがたいです。

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