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第43話- 夢童話。-Incoherent-

夢だから文章が支離滅裂でも大丈夫・・・

夢だから誤字があっても大丈夫・・・

大丈夫・・・だよね?

 いつしか忘れてしまう、幼き頃の他愛もない話。

 思い出の神秘な絆の中に、

 子供の日の夢がない交ぜになったあたりに、

 その手でしまわれてしまった夢の欠片。

 けれど、思いがけず、突然に、

 ふと、浮かび上がる儚い気泡。

 とうに萎れてしまった花冠を再びかぶる時がやってくる。


                     ■


 透いて見えるような翠がかった蒼の海なんていうのは実際見たことがなかったけれど、沖縄に足を運んだくせに水族館にすらいけなかったけれど、想像ぐらいはできるもので。

 目の前に広がるのは、そんな海だった。

 ざざぁ・・・と波が伸びたり縮んだりする様を、気づいたらぼぅっと眺めていた。

 白い砂浜を少し掬ってみると、微生物の死骸である星砂が見て取れる。

 手に伝わる感覚は本物だ。

 思わず打ち寄せる波に足を入れて、その冷たくも心地よい感触を確かめる。

 それと同時に、何時の間にか裸足になっていることにも気づいた。

 どころか改めて自分の成りを見てみると、喫茶店の衣装ではなく赤いワンピに変わっている。

 ・・・と、そこでいきなりの爆発。

 轟音が轟いた方に目をやると、沖にさっきは見えなかった船が黒煙を上げていた。

 赤や茶色のその船はどうも煉瓦造りのようで、そんな船、現実にはありえない。

「本当に夢の中だ・・・」

 沈没を始める船から二足歩行の豚が次から次へと海へと飛び込んでいく。

 が、それを許さないのは船の周りを旋回している戦闘機だ。

 海へと逃げる哀れな豚を蜂の巣に、空に逃げる羽豚にも銃弾を。

 あっという間にせっかくの海が血で濁った。

 よく見ると、水中からも泳ぐ豚を引きずり込む影まである。

 ウミイグアナかと思いきや、それは海中を縦横無尽に泳ぎ回る狼だった。

 次々に海の中へと引き込まれては泡と赤い液体を大海原に滲ませる豚、そして襲う狼。

 ・・・・・・自分の頭が心配になってきた。

 ただただ浜辺に突っ立てそんなことを考えていたら、命辛々生き延びたらしい一匹の豚が波に打ち上げられる。

「ひぶっ、うぶぅ!はぁはぁはぁああ!」

 かなりお腹の豊かな豚は僕の存在を認めて、

「おいお前!見ていないでワシを助けんか!」

 随分偉そうな口をきいてくれたので、

「ぶごぉおおおっ!」

 笑顔と蹴りを返してやった。

 綺麗に放物線を描いて、デブ豚は海へと逆戻り。

 その内海の中に引きずられることだろう。

 さぁーて、ここにいても仕方ないし移動しようか。

 踵を返した先にあるのは蒼の海、白の浜辺と対照的な緑と碧という色合いの(おか)が広がっている。


                     ♯


 後を向けば水平線、前を歩けば地平線。

 それが何時の間にかうっそうと茂るジャングルになっていた。

 振り向けば海が見えてもおかしくないのに、そこに存在するのは雨林だけ。

「あれ?」

 何度見ても四方八方草木の壁が立ちはだかる。

 ついでに上を見るも空の青は欠片も見えず、蔦や葉がアーチのように絡まって光を遮っていた。

「迷った」

 いや、迷うのが目的と言えば目的なんだけども。

 しかし、これは面白くない迷い方だ。

 何せ何も起こらないし、何もな・・・・・・何もない。

 何か、視界を得体も知れないモノが横切った・・・けど、何もないことにしておこう。

 あれはアレだ。関わったらいけないタイプの人物だ。

 が、踵を返して立ち去ろうとするも、

「おい」

 と声をかけられた。

 よし、無視しよう。

「おいこら」

 大体何なんだろうこの夢は。

 思い返してみてもまともなのが出ていない。

「無視するんじゃない!」

 羽があったりなかったりする豚に海を泳ぐ狼、それに加えてこれかぁ・・・。

「無視するなぁああああ!」

 はぁ、と溜め息と共に振り返る。

 そこに立っているのは自分、織神葉月。

 あぁいや、今の僕より少々幼いところから見るに、まだ織神でも『折り紙の8月』でもなかった頃の自分だろう。

 けれど、だとするなら1つ矛盾点がある。

 目の前の自分は女の子。あの頃、僕は男だったのだから、これはありえない。

 あるはずもない過去の姿をさも当然のように存在させる。それも夢の性質か。

 しかしまぁ、問題は他にあるのだ。

 自分と対面するというのはそれはそれで嫌なのだけど、そう、もっと問題視すべきなのは――――

 彼女が素っ裸の上に何故かニーソだけを穿いているということだ。

 童話の豚に狼に続いてこれとは・・・・・・聡一君に借りた漫画がいけなかったか。

 というか、本の影響を受けすぎだよね、自分。

「ほら君、そこのキノコに座りな」

 得体の知れない自分の言うことを聞くのも癪だけども、そうしなければ次に進めない流れのような気がする。

 こんな閉鎖的な空間に閉じ込められたままというのは勘弁願いたいので、さっき見渡した時にはなかったキノコテーブルの一席に腰を下ろした。

「さて、さてさて、さてさてさてさて――――談話といこうよ、私」



「つまり、とどのつまり、つまるところ、自人称っていうのは、自分がどういうスタンスを取るかっていう決意表明だよな。

 (わたし)(わたくし)僕僕朕俺俺様、ウチに我。

 英語じゃ『I』の1つで済まされる『自分を指す言葉』がしかし日本語だと幾らでも、出てくる。このバリエーションの多さにはやっぱり意味があるんだろうよ」

「それはつまり、女性的である『私』を使っている君が、女体を曝け出した露出狂であるようにかな?」

「くくく、どっちつかずの『僕』を使う君が、男としても女としても中途半端なロリータであるようにだよ」

「自分を貶して楽しいの、僕?」

「自分を貶して楽しいか、私?」

 お互い身の削り合いをしながら、何処からともなく現れたティーカップに口をつける。

 お茶請けに置いてあるのはシンプルなバターとチョコのクッキーで大変美味しいのだけど、残念ながら飲み物とあまり合っていない。

 だって、カップの中は赤ワインなんだもの。

 せめてグラスで出てこればいいものを、お茶会なのは形だけ。中身はアルコールをあおりながら相手の悪口を言い合っているという優雅さの欠片もない状況だ。

「ねぇねぇねぇ、私」

 ふかしていた煙管から口を離し、紫煙を思い切りこっちに吹きかけて自分が言う。

形骸変容(メタモルフォーゼ)という反則技を持つ、自分の意思で姿形を幾らでも変えられる私よ。

 何で君は自分の身体を弄らない?」

「・・・別に必要もないでしょ。変身願望なんて持ってないんだから」

「そうか、そうかな、そうなのかな?必要だと思うね。老化すら忘れたその身体だと置いてきぼり食うぞ」

「・・・・・・だろうね。80年もすればそうなるさ。けど、そもそもそんな長生きはできない」

「投げやりだな、私。いや、現実を見てるのか夢を見ているのか・・・ふん、どっちにしろつまらん。

 しかし、そうでなくたって君はロリータと呼ばれることは嫌いじゃなかったか?年頃の身体に調整ぐらいすればいいのに」

 それを、まさか自分よりも幼い自分に言われるとはなんて屈辱的話だろうか。

「面倒くさいんだよ。それに今更変えるっていうのもおかしいでしょ?理由がない」

「ふぅん?ふぅーん?うぅん、いやどうかな、それは」

 僕の返答にニヤニヤと嫌らしく口角を吊り上げる私。

「理由がないんじゃなくて、理由があるから、変わらないんじゃないのか?ねぇ、僕ちゃん」

「・・・・・・?」

「おや、意識してないのか?はっ、深層意識がそうさせてるのかね。

 まぁなんにしても、釧君にべったりな君のことだ、意識してにせよせずにせよ、理由としてはそれしかない。

 絵梨が言っていただろう?彼は――――」

 と、彼女が要らぬことを口にする前に、その首を刎ね落とす。

 ゴロゴロと、首と共に切断されて短くなったショートヘアの生首はキノコのテーブルを転がる。

 それがテーブルの淵から転げ落ちる前に彼女は自分の頭部を持ち上げた。

 首を切ったのに切断面がなく、当然血も噴出さず、そして死なない。

「く、くっくっくっ」

 そのままでは勝手に転がってしまう首を、あろう事かティーカップに乗せることで固定して彼女はくつくつと笑う。

 シュールを通り越して自分の顔ながら酷く気持ち悪い。

「さて、ま。楽しいお茶会はこれぐらいにしておこうか」

「楽しい要素がどこにあったんだか。君、頭大丈夫?」

「君の頭が大丈夫ならな」

「「・・・・・・」」

 お互い、自分の脳が正常とは思っていないため共に沈黙。

 どっちが貶してもダメージを受けるのは自分。何て不毛な言い合いだろうか。

「まぁいいさ。さて私。そろそろ夢のまた夢に戻りな」

 無茶を言う。

「戻り方が分からないんだけど?」

 すると彼女は首が離れたにも関わらず手にしていた煙管でテーブルの端を指した。

「キノコの右端を食べれば大きく、左端を食べれば小さくなる。

 でかくなれば密林からは抜け出せるだろうさ」

「ふむ・・・・・・」

 さて・・・で、その言葉はどこまで信じれるのだろうか?

 僕が彼女なら逆に教える。

 そして彼女は僕なのだ。

 けど、もしかしたらその裏をかいている可能性もあるわけで。

 うーん、どっちだ。どっちが当たりだろう。

 とにかく彼女は信用できない。

「今、失礼なこと考えてたろ」

「その発言も失礼だよ」

 ・・・考えても仕方ない。

 裏の裏をかいているとみて、そのまま右端を千切る。

 シイタケのようなあまり好きではない香りをするその生キノコを口に放り込んだ。

 シット。

 やっぱり逆じゃないか。

 どんどん視線の高さが低くなっていくのを感じながら首の乗ったティーカップを持ち上げている自分を睨みつける。

 酷く小さくなったところで彼女は僕を摘み上げて今までワインの入っていたボトルに詰め込んだ。

「いやいやいや!待った!」

「では、お大事に」

 容赦なく投げ飛ばされる。


                     ♯


 気づけば、草原に仰向けになっていた。

 何時瓶から出たのかとか大きさが戻ったのかとかそんな思考は無駄なのだろう。

 次はどうしよう?

 そんなことを考えていたら、草を踏みしめる音が耳に入る。

 顔を向けると、軍服を着た豚が歩いてきていた。

 真面目そうな顔をしているなぁ、と適当な感想を抱きつつ上半身を起こす。

「こんなところに居ましたか」

「はぁ・・・?」

 どうやら僕が目的だったらしい軍豚が手を差し伸べてくる。

 善意を受け取って立ち上がったところで、

「さぁ行きましょう、赤ずきんさん」

 彼が何やら聞き逃せない台詞を口走った。

 ・・・・・・はて?

 誰だろうね、それは。

 と思いつつも、念のため、本当に念のために自分の服装を確認すると、やっぱり赤いワンピース。

 いや、赤ずきんのチャームポイントはずきんであってワンピースが赤だったわけじゃない。

 と、頭を確認すれば、手触りで自分がずきんらしきものをかぶっていることが判明。

 多分色は赤なんだろうなぁ。

「行きましょう」

 豚足に腕を掴まれ成すすべなく連行と相成った。



 連れてこられたのは丘の上にある軍事施設。入る時に目に入った施設名は『山羊の家』。たぶん突っ込んだら負けだ。

 どうもこの豚は僕を仲間として認識しているみたいなんだけども、こっちは全く状況が分かっていない。

 というのに、何故か軍事会議とやらにまで参加させられてしまった。

 というわけで・・・、今僕の視界にあるのは円卓と軍の指揮官達。

 つまり、豚2匹に山羊11匹。

 ちなみに、豚は本来3匹だったらしく、空席の机の上に豚の遺影が。

 普段ならありえない豚の顔を見分けるというスキルが今は身についているらしい僕の脳がアレは僕が海に蹴り戻した豚だと教えてくれる。

「あの馬鹿がいないのは寂しいな・・・」

「兄貴に僕の『煉瓦造』を貸し出さなければ良かったんです・・・」

 ごめんなさい。あなた方の次男にトドメを刺したのは僕です。

「さて、皆様・・・」

 重い空気の中口を開いたのは細眼鏡をかけた利口そうな山羊。

「『煉瓦造』を沈められた今、狼どもが勢いに任せて防御から転じて攻め入ってくる可能性も高い。

 ここは先手を打ちたいというが私の意見です」

「賛成だ」

「だがどうする?あの戦艦はこっちの主戦力だったんだぞ。俺の藁舟や馬鹿の残して逝った木船は役に立たんだろ」

 と長男豚。

「戦力不足は向こうも同じ。問題なのは連中の砦が海の底にあるということでしょう」

「要は潜水艦か。馬鹿の木船は水中に潜れはするが強度がなぁ」

「向こうに気づかれずに施設に侵入できればいいのですが・・・」

 むぅ・・・と唸る動物達。真剣に策を考えているのだろう。

 藁舟や木船で戦闘機相手にケンカを売ろうという時点でふざけているようにしか思えないけど。

「・・・何か方法はないでしょうか、赤ずきん殿?」

 眼鏡山羊に話を振られてしまった。

 そもそも僕は赤ずきんじゃないし。

 せっかく空気になろうとじっとしていたのに・・・。

 豚と山羊の視線が僕に集中する。

「大変です!!」

 何て誤魔化そうかと考えを巡らしていると、勢いよく扉が開け放たれた。

 見れば若い黒山羊が荒い息をしながらドアにもたれかかっている。

「どうした!?」

「て、敵襲!狼に侵入されました!」

「「なんだと!!?」」

「連絡を受けていない部隊の到着がありまして、扉の隙間から確認したのですが、白い足に安心してドアを開けたら!連中小麦粉を!」

 ・・・何で、何でそれに引っかかる。

「その手法は一度やられたことがあるだろう!手紙で知らせたはずだ!」

「すみませんあれは間違って食べてしまいまして!」

「馬鹿者ぉ!!」

 駄目だこの連中。

 ここにいたらいらぬ被害を被りかねない。

 さっさと逃げよう。



「ぶひんっ!?」

 廊下を塞ぐ皮下脂肪たっぷりの豚兵を掌底で沈めて道を開けてもらう。

「べふっ」

 避けるのが面倒なのでその踏み心地のいい腹を踏み潰して先に進むも、この施設嫌に入り組んでいる。

 名称が『山羊の家』のくせに生意気な。

「赤ずきん!大人しく投こ――――」

 台詞を言い終わる前に勢い任せに狼を殴り飛ばす。話を聞くのが面倒くさい。

 が、ごろんと嫌な音が耳に届いた。

 お約束のようにピンの抜けた手榴弾が彼の手から転がってくる。

「っ」

 咄嗟に廊下から横の部屋に転がり込む。

 ――ガッ

 誇張表現が過ぎる映画のようにありえない爆発が起きた。

「けほっ、こほっ!」

 遮蔽物があれば大丈夫とたかを括っていたけども、その壁ごと吹っ飛ばされるとは。

 そして何時の間にか機関銃を持った狼に囲まれている。

 どうやってその手で引き金を引くのか不思議で仕方ない。

「投降し――――」

「食らえ!」

 すかさず足払いで数匹を転倒させ、うまく自分に方へと倒れてきた狼から機関銃を掠め取る。

 ろくに狙いを定めずに360°回転しながら連射すると、胸に着けていた手榴弾に着弾したらしくまたもや爆発が起こった。

 今回は超近距離の無障壁での被爆だ。

 身体の節々痛いのだけども、何とか生きているらしい。四肢もちゃんとついている。

 あの爆発でこの被害の少なさは異常だろう。

 周りにいた狼達は死亡してるというのに・・・。

 まぁ夢だしと無理やり納得して起き上がる。

「ふはははははははっ!」

 そこで聞き覚えのある声が響いた。

 した方へと身体ごと向けると、爆発でか壁が崩れた隣の室内に豚兄弟がいる。

 哄笑しているのは長男の方だ。

 その二匹を追い詰める狼部隊に、

「ここまでだ貴様ら!」

 長男豚が言う。

「このスイッチを押せば武器庫中の火薬が爆発する!貴様らごと施設を吹っ飛ばしてやらぁ!」

「兄貴!馬鹿はやめるんだ!僕らまで一緒に吹っ飛ぶ!」

 テンパっている兄とそれを止めようと必死な弟から視線を部屋事態に移すと、なるほど、ソレっぽい武器が色々と置いてある。

 ・・・・・・などと様子を窺っている場合じゃなく。何て安っぽい展開だとか批評してる場合でもなく。

 それ、爆発したら間違いなく僕も巻き込まれるよね。

「逃げ――――っ」

 れるわけもなく、3度目の爆発が起きた。



 大爆発。

 爆風に吹き飛ばされて崩れ落ちる施設から放り出される。

 離れていく緑の丘、爆炎に包まれる『山羊の家』。

「痛っ!」

 望まない空中散策はいきなりの終わりを迎えた。

「うわっ、うっぷ」

 勢いを殺せずに何度もバウンドし、

「あぐっ」

 水音と水しぶきを上げながらやっと止まる。

 仰向けに転がって、仰いだ視界で空の青さを知った。

 ともかく外には出れたらしい。

 起き上がる気もせず、荒い息をそのまま整える。

 多分ここはあの海辺だ。

 身体の半分ほどに海水を浸しながら大きく深呼吸。

 さっきまでの怒涛の展開に置いてきぼりを食った脳みそを冷やそう。

 横目で見ると地と足が離れる前にいた陸が見えた。

 建物はもうない。狼もいなければ豚も山羊もいない。

 まぁ、こうやってあの場所から離された時点で、消滅してしまってるとは思っていたけど。

 夢の中では意識を逸らしたモノは尽く消滅するもので、だから迷いもするのだ。

 さて、どうしよう。

 次は何があるのだろうか?あるいはそろそろ目覚めの時間だろうか?

 打ち寄せる波の感触が肌を通じてよく分かる。

 こう静かな場所で時間を気にせずにぼぅ

 っとできる機会というのはあまり

 今までなかった気がする。

 濡れることすら気に

 かける必要がな

 いというの

 はそれこ

 そ夢の

 美点

 。

 ・

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 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


                     /


 体育館の裏、ステージに出入りする際の待機場所。

 何時もは暗幕に遮られて仄暗いその狭い空間は今回ばかりは遮る布地を取り払って陽の光を誘い込んでいる。

 教壇といった常時使うモノを一時的に除けておくことの多いその部屋に今は丸テーブルと椅子が持ち込まれており、そこに座するのはもちろん幻想現実(1.5)の能力者、板川由だ。

 長髪を後で縛り、白衣に身を包む痩躯の男。

 時折机上に用意したティーカップを味わいつつ、イベント1回1回の制限時間である1時間が経つのを待つ。

 能力を使い続けることに集中力を削られるような柔な能力者ではない彼ではあるが、持ち場を離れては維持しにくいのだ。

 そのためこのイベントの間は転寝をしつつ参加者の見ている夢を傍観している彼がいきなり起き上がった。

「どうしたの義父さん?」

 それに驚いて、彼に連れ添ってきていた板川サラが尋ねる。

きた(・・)!」

「・・・!」

 その台詞に彼女も身体中の筋肉を強張らせた。

「ビンゴ。やはり興味を示したか――――夢の迷い子(アリス)


                     /


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

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 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

   、  芯ま 雑     明

  い     で    い    界

            な   な

     の     の     世

    芯     音        。

 蒼            透

   の   砂       々    そ     く光      水 

    は    敷      の     を        さ   。

          き                   折

  る     を         地

            め            蒼

 あ    い      た延    と        を    る

     白     詰         れ    く     せ

                       覆     屈

                 砂      う

 蒼い、芯の芯まで雑音のない透明な世界。

 あるのは白い砂を敷き詰めた延々の砂地とそれを覆う蒼く光を屈折させる水。


 ここは何処だろう。

 ここは、僕の世界(ゆめ)では――――ない。

 空は蒼いし海も蒼い。透けて見える白い砂も見覚えはなくもない。

 けれど、異質。

 どこか、他質。

 一見海にも見える水平線はけれど海ではなく、足元までしか深さのない延々と水に浸った世界(ゆめ)が続いている。

 足元を見るとするりと黒い影が足の間を通り過ぎた。

 真っ黒なお玉杓子。

 常識的に考えればこの水は海水ではなく淡水だけれど、実際どうなのかはどうでもいいことだ。

 ここにあるのは水と砂そして空だけ。

 池らしく枯葉や泥もなければ海らしく海草や苔もない。

 透き通りすぎたその水に食べる物があるわけがないのだから。

 ちゃぷちゃぷと水音をさせながら歩を進めるも、四方八方ただ同じ景色が続くこの世界(ゆめ)に終わりがあるとは思えない。

 なら、終わりはどうやってやってくるのか。

 そう思った瞬間、ぞわりと体中が総毛立った。

「――――っ」


 ――――振り向けばそこにいるのは白色。ほとんど閉じた紅い瞳。圧倒的に白で白の白。

     ずるりと世界から零れたように現出した。


 何だコレは。

 この少女は何だ。

 白い髪に白い服白い肌に、そして紅い眼。

 その眼はとろんと目蓋を閉じて、まるで覚醒していないことが分かる。

「ぅ――――ぁ――ぅ―」

 言葉がまるで意味を成していない。

「ua―?ぁ・a・・ぁ」

 何かを伝えようとしているようで、何も考えていないよう。

 まるで理解できないその存在に、疑問が無意に口から出される。

「君は――――誰?」


「ぅ―っ――き――み―zぁ――――と」


 彼女がそれに応えたのかどうか

 も分からない言葉を

 返した瞬間、

 世界は

 崩れ

 去っ

 た。

夢の話。

豚狼戦争の続編でした。

まさか続くとは・・・作者が一番驚いてます。


そして何かまた意味ありげなのが出ましたね。

まぁこの小説では何時ものこと何時ものこと・・・

ちゃんと回収するつもりはあるのでご安心ください。

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