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第7話- 裏方食会。-Sophie-

 例えば、鏡を覗き込むだけで形骸変容(メタモルフォーゼ)の恩恵が見て取れる。

 恩恵という言葉を通り越した女体化という事実は置いておいて、色々と挙げられることがある。

 病的ではなく、健康そのものの白みの強い肌。

 時折見られていた頭痛と動悸の解消。

 そして体は何の支障もなく動いてくれる。

 どれも能力を無意識下に利用した結果だろう。最初にあった性転換と同時になされたに違いない。

 ガタのきていた体を根本的なところから造り治し、神経系もより扱いやすく繋ぎ直したようだ。

 こういった、日常活動や生存行為といった最も体の要求の高い事柄は脳にフィードバックして、逐一調整されていると考えるのが妥当なのだろう。

 しかし、意識的に能力を使うということは話が違う。

 本来必要のない、ありえない物質、構造を造り出すのは、思った以上に難しいことだ。

 想像力然り、必要性に迫られていないというのが一番ネックなところ。

 もしも、いきなり海に放り込まれて息ができなくなったりでもすれば、鰓の1つや2つ造れそうな気がするのだけど、風呂桶に顔を突っ込んでそれをやるのは非効率的だ。

 鰓を作るより、腕に力を入れた方が危機回避がしやすいなんてことは分かりきっている。

 自分で作った環境という安心感が付いて回るし、本来の体験とでは経験値に差が出過ぎるだろう。

 今まで僕がやった訓練といえば、手の形状を変え、血液中の鉄分を皮膚に持ってくることによるピッキングや足の甲の皮膚の形質を少し堅くする程度のことだ。

 ちなみに後者は不良撃退に役立てた。あれは利用頻度も多そうで結構重宝しそうだ。

 だけれど、それぐらいのもの。

 訓練と言っても、明確な目標がいまいち立てにくく、挙句訓練の効果に満足できかねている。

 何でもできる故の贅沢過ぎる悩みだけど、僕にとっては切実だ。

 形骸変容(メタモルフォーゼ)としての能力を磨くのに必要なのは経験。

 他の能力に比べ、その重要度が非常に高い気がする。

 様々な状況に必要な変容のパタンに、非常時においても行える安定した変容の仕方、能力を使った時の実感。

 どうしてもこれが必要になってくる。

 だから、裏方と呼ばれる、やっぱりネーミングセンスに問題がある気がしてならない組織からの誘いは好都合だった。

 非常に貴重な形骸変容(メタモルフォーゼ)の資料まであるという。

 その上お金も入ってくるというのだから、断る理由の方がなかった。

 なので、近日中に承諾の連絡をするつもりだった、のだけど。だけれども。

「なんで、ここに来るんですか?貴方たちは」

 共同訓練という名のお祭り騒ぎの終わった後の休日、人が来る予定などありもしない午前の呼び鈴に、誰かと思って開けてみると、ついこの間顔を合わせた裏方のメンバーがそこにいる。

 この前貰った連絡先の意味がない。

 そう呟くと、自分のことを発電能力者(エレクトロキネシス)といった茶髪の彼女は、

「あれは私のプライベート用よ」

 と飄々と答えくれた。

 何でそんなものを教えてくるんだこの人。

 というか、

「何なの、その彼が持っている大荷物は・・・」

 赤色のアホウドリと呼ばれている彼が背負っている、何やらでこぼこと布を引っ張られえているサックの中身がすごく気になる。

「これ?なんと今晩は鍋なのです!」

 力説。いや、だから何が?というかまだ昼すら来ていない。

「カニ、フグ、タラ、ネギにイトコン、シイタケは1人4つ絶対よ?」

 いやいや、だから。だから、ね?話がおかしい気がするのですけどね?

「イワシの肉団子も材料あり!」

 ・・・・・・それをうちでやるつもりですか?決定ですか?

「広くないから無理な気がするんだけど・・・」

 当たり障りのない回避行動を試みてみる。

「大丈夫よ。最悪瑞流は外で待機するから」

 さらっと返されるある意味酷い一言。そして他人事。

 ・・・・・・。逃げられないっぽい。

 とにかく今夜は鍋料理に決定らしい。


                     #


 主に瑞流君が持っていた食材を無理やりミニ冷蔵庫に詰め込んだ後、僕達はアパートを出ることとなった。

 鍋は夜になってから、それまでの時間潰しを違う所ですごそうということらしい。

 茶髪を纏めた高校生2年生のつり目少女、礎囲智香(そい ちか)。電撃。

 赤にピアスの大学3年生(2度留年)の青年、朝露瑞流(あさつゆ みずる)。幽体離脱。

 目を隠す黒い前髪の高校1年生の少年、佐々見雪成(ささみ ゆきなり)。変身。

 手入れの行き届いた長髪に活発そうな肌色の中学2年生の少女、音羽佐奈(おとはね さな)。冷却。

 人見知りする染めた茶髪の大学1年生の青年、岸亮輔(きし りょうすけ)。媒介。

 移動中の電車の中、礎囲さんが改めてメンバーを紹介してくれた。

 彼女自身は電撃波を得意とする、攻撃系の能力者。数多ある電磁波系能力者(エレクトロキネシス)の中で電撃凶器(スタンガン)と呼ばれる部類に入る。

 これは能力名というより単なる名称だ。能力の使用傾向を表しているといった方が考えやすい。

 発電能力を電撃として対象を攻撃するから電撃凶器(スタンガン)。他にも、電磁力を使って鉄を引きつける電磁力(マグネット)など同じ能力者の中でも色々と分けられている。それによってグループも分かれているので、自分のやりたいことをしっかり目標として持っておかないと大変な目に合う。

 歳の幼く見える赤とピアスの見た目が分かり易過ぎる、僕よりかなり年上な朝露君。アホウドリって言う方が何か言いやすい気がするのだけど、やっぱりまずいだろうか。

 彼は思体複製。別名は幽体離脱の能力者。矢崎君の能力、視界だけを別のところにやる視界放置が発展していけば、この能力にたどり着くのだろう。

 ただし、思体複製は、元よりある自分の五感を保った上でもう1つ別の五感を造り出す能力だから、視界を移すだけの彼ではまだ程遠い。

 アホ・・・朝露君は結構高度の能力者だ。何で2度も留年してるんだろう。

 先日紳士的だった佐々見君は形態変身(トランスフォーマー)。ということは、あのやる気のないブースをやっていたグループの一員である可能性が高いわけだけど、本当にブースをほったらかしだったのだろうか?

 しかも何故か顔を合わせてくれない。前はそうでもなかったのに。どうしたのかな?

 そして彼も二重生活で女性の顔を持っているのかが気になるところ。

 それから音羽さん。カフェでは後ろの方でほとんど目立っていなかったのだけど、改めてみると結構個性的な人だと思う。

 焼けた肌で冷却の能力者。雪女なイメージはない。ジーパンにTシャツというボーイッシュな服装で、親しげに話しかけてくれる。

 冷却という能力は発電に比べると珍しい。出力系の中では見た目が地味な方だしね。

 この能力は水を凍らせると思われがちだけれど、どっちかといえば熱エネルギーを吸い取るといった方が近い。

 ちなみに、その理論で逆に物質にエネルギーを与えて蒸発させる能力者もいるとか。これは発熱の能力者と言われて、発火とは違う分類だそうだ。

 ここら辺の分類の曖昧さが超能力関連の研究が体系化し切れていない一因じゃないのだろうか?

 で、最後に人見知りの岸君。カフェに来なかったので、今日初めて顔を合わせた。

 体つきは中肉中背。目をきょろきょろとさせて忙しない。神経質、といった感じ。だから人見知り、ということなのだろうか。

 彼の能力は能力触媒(メディエーター)

 他の能力者と接触することで、その能力者の力を底上げし、元来以上の効果を発揮させるという名称通りの能力だ。

 原始素能(ホワイトノート)と同じく、他の能力者と関わることで効果を発揮するタイプの能力で、かなり珍しい。

 他力本願などという言葉で片付けられるようなものではなく、感覚系とも出力系とも違った特殊なタイプに属するとされる。

 他の能力者がいなければ能力複写を行えない原始素能(ホワイトノート)。他の能力者がいないと意味を持てない能力触媒(メディエーター)

 前者はともかく後者は正直目立たない能力者だ。何せ自分だけでは何もできないと認識されてしまっているし、冷却能力者以上に目立たない。

 けれど、これもやっぱり侮れない能力だ。

 対象者の能力の威力を上げるということは、応用次第で能力を暴発させれるということ。

 無理やり相手の力に介入して自爆させるという護身術が使えるわけである。

 大した脅威のない相手に見られているけれど、これはこれで厄介な能力者と言える。

 ただし能力触媒(メディエーター)の発動条件は大抵、対称に触れること。

 なのに、岸君、人見知りで人に触れられることを酷く嫌うらしい。

 本当に必要な時にしか利用できないこのメンバー内での切札扱いで、しかも1回が限界(能力的にではなく精神的に)という制限つき。

 駄目じゃん。

 裏方というのは数十人いる全構成員を数人ずつに分けて活動させているらしく、僕が配属されるだろうこの班は『トリッキー』という。蔑称じゃないのかな、それ。

 そしてその名前の名付け親は礎囲さんに決まっている。

 命令のない間は、個人の自由意志でそれぞれの班に与えられている本拠地に詰めることになっているとか。

 自由意志ということはつまり、通常その本拠地とやらには誰も居らず、そもそも連絡は携帯の方にかかってくるので、全く必要としない場所ということだ。

 だから基本的に何らかの資料などを置くだけのスペースとなるらしい。溜り場とも言う。

 また、裏方と言っても、表舞台の警邏といった活動がないわけではなく、人手がない時には駆り出されることもあるらしい。

 と、まだ入るとも言っていない組織の内情などについて礎囲さんと音羽さんが話してくれる内に目的地に着いたらしい。

 万可統一機構及びクシロ在住のマンション最寄の駅。相変わらずの人の多さで気が滅入る。せめてこれから行く先が静かな場所であって欲しいな。

 皆行く先は知っているらしく、先導しつつあれこれ明るく話題を振ってくる礎囲さんに続き、僕の号室に食材を置いてきたにも関わらず未だ何かしらを背負っている朝露君、佐々見君に音羽さんが僕の横を歩き、最後に岸君が決して僕らより前に出ない位置を保ちながらついてきている。

 駅の改札を抜け、迷路状の地下街を迷いなく突き進み、階段で地上に。地下からいきなり開けた視界は全く見たこともない場所だった。

 移動中の風景が見えないだけに、到着点が一体地図のどの位置にあるのか想像できない。

 そこは高層ビルの谷と谷の間だった。駅や商店街から見る遠景にのっぽのビル群が見えていたことは覚えているけれど、自分がそのど真ん中にいるのだとは実感が涌かなかった。

 地下道恐るべき。間違いなく徒歩十数分の距離だというのに、兎穴に飛び込んだアリスの気分だ。

 そんなひたすら高く伸びた構造物の1つ、シンプルに長方形をしたミラーガラスのビルに僕らは入っていく。

 本来こういったビルには、会社の事務所やら何やらが詰め込まれていて、少なくても子供が入る雰囲気はどこにもありはしないのだけど、彼らは全く気に留めず進んでいく。

 入り口から正面に位置する数個のエレベーターの内1つに乗り込んで、高層を目指す。押された階は67階。静かな動作音と、逆に目立つ振動、移動時間短縮のための高速上昇、そしてガラス張りと乗員を苛めたいのかと思うような一時の後、エレベーターは目的の階層についた。

 その間、ずっと岸君がぶるぶる震えているのが印象的だったり。まぁ、高所恐怖症でなくても結構きついけどね。気圧が変わって耳も痛いし。

 エレベーターのドアの開いた先は、すぐ行き止まりだった。フロア内に壁をもう1つ作って出入りを制限しているらしい。カード式の施錠装置が置かれてある。

 当然ながら礎囲さんは自分の財布から1枚のカードを取り出してそれを開錠した。スライド式のドアが自動でずれていく。

 壁に接着されたプレートには『株式会社ウスキ製薬資料倉庫』と書かれていたけれど、まさかそんなはずもなく、ドアの開いた先は超能力に関する資料倉庫だった。

 ウスキ製薬は本当に実在する会社であり、何より資料倉庫という意味では真実であるカモフラージュだ。だけど、製薬会社の資料が単体で高層ビルのワンフロアにあるわけないと思う。それに・・・

 入り口から一歩踏み出した位置に見える、規則正しく並べられた天井近くまである本棚、それに付けられているカテゴリのプレート。

 『ESP系・能力波探知能力系統』。

 『ESP系・対PK系能力技術』。

 『ESP系・能力測定、基準と分類』。

 幾つかの棚を左から右に見ていくだけでこんな文字が見て取れた。

 製薬会社関係ないね。カモフラージュに名前を使われるぐらいだから、ウスキ製薬って公営の機関の傘下にでも入っていたのかもしれない。

 ああ、そういえばSPSを造っている国の製薬機関があったはずだ。そこと繋がっているのかな。

 とにかく、そこには超能力に関する資料が有らん限り並べられていた。

 書物を読むためのテーブルといったスペースは一切なく、薄い灰色をしたスチールラックに一般的に販売されている本から自費出版したらしい薄いもの、本として纏められてすらいないファイル綴じの資料がテーマ別に区分され、向こうの突き当たりであるガラスの壁まで続いている。

 その様子は壮観。誰も知らない空間に閉じ込められ静かに眠っているそれらは、まるで日陰で冷え、苔が生えた石畳を思わせる。

 万可統一機構にも図書室たるものはある。それなりの書籍数を誇っていたし、内容の濃い、一部機密レベルのシロモノも置いてあった。

 だけれど、それでもこの資料倉庫はそれを軽く凌駕しそうな広さと量だ。

 それに万可統一機構のには普通の書物がほとんどなかった。これほどに多くの種類が集まっている所は見たことがない。

 今の僕は、目をキラキラと輝かせているに違いない。

 読書はそれなりに好きだし、能力関係の知識はいくらでも欲しい。

「どう、はづきちゃん。結構すごいでしょ、ここ。さすがに形骸変容(メタモルフォーゼ)に関する資料のある別室倉庫までは私達のカードじゃ入れないけどね。

 それでも色々ためになる本がいっぱいあると思うわよ?」


                     #


 如何にしてソフィ・フィリス・シューレル女史はSPSなる薬を創るに至ったのか?

 彼女が超能力という極めて再現性に欠ける、観察困難な対象をそもそも研究対象にし得たのか?

 その謎を紐解くにはまず、Ap-Sonaと識別番号を、ソナと呼び名を与えられた彼の存在を紹介しなければならない。

 ソフィ氏は自叙伝で彼のことを『親指と人差し指の腹から火を出すことのできる』能力を持ち、『こと物の位置記憶に驚くべき結果を残した』ともしている。

 彼女は彼が寿命尽きる数年の間観察をし続け、論文をまとめ、薬の発想を得たという。

 では、一体どこで彼女と彼は出会ったのか?

 ・・・熱帯雨林、である。

 明言されていないが、彼女が全く違う研究で雨林を訪れていたらしい。

 さて、違う目的とは?

 熱帯雨林に残されているウイルスの研究、及び現在流行しているAIDSなどの特効薬になりうる素材の探索だ。

 それは彼女にとっては当然のこと。何せ彼女は、医者でもなくましてや超能力を研究する酔狂な学者でもなく、生物学者だったのだから。

 彼女自身『超能力?そんなの脳の腐った人間の戯言よ。相手にするだけ馬鹿らしい。彼に出会うまではそう思っていた』と語っている。

 偶然の出会いだったのだ。人の手の及ばない樹海の奥の奥、保存されている未知のウイルスを求めて進んだ先、彼女は彼と出会うことになる。

 ではでは、彼女はその時様子をどう記しているのか?

 またまた自叙伝を参考にさせてもらうと、『ありえない、と叫びそうになった。彼が火を灯した木の棒を持っているところを見た時、世紀の大発見だと思った』、『どうしても彼が火を灯すところを、あるいはどこから火を手に入れたのかを見てみたいと3日間粘った。3日目の午後3時13分、ついに私達はその現場を目撃する』そして『遠い昔人類がしたように摩擦熱で火を起こすのだろうか?そこまで高度な道具を使う技術を持っているなら・・・』と、その時の自分の気持ちを緊迫感を持って書き出した後、『信じられない!あの野郎、手で握っただけで火を起しやがった!』と憤慨。

 ・・・・・・もう分かっていると思うけれど、つまり"彼"と言うのは先住民の誰かさんでも、諸事情により迷い込んで住み着いたはぐれ人でもなく、・・・猿、だったのだ。

 つまり、ソフィーさん、樹海で発見した猿が火を扱っている所を見てびっくり。山火事の火を木に移して持ち歩いているとしても、自分で起こしているとしてもこれは大発見だと意気込んだわけである。何せ、現代においても道具を使う猿は、使いやすい特定の岩石を利用し食べ物を割るというのが限界で、もし火を起こすような猿がいたとすれば本当に驚愕の事実ということになる。ので、猿がまさかの裏技を使った時、思わず持っていた機材を投げつけてしまったらしい。

 ・・・お茶目な人だ。彼の方はそれどころじゃなかっただろうけれど。

 チンパンジーに似た類人猿、当時推定50代半ば。チンパンジーの寿命が4、50歳ほど。ほら、ちゃんとつじつまは合っている。Ap-SonaのApはape、つまり猿という意味。

 まさかのまさか、超能力者だと初めて正式に認定されることになる生物が猿だというのが、このエピソードのオチ。

 その後、彼を保護(あるいは捕獲、もしくは捕縛)したソフィ史は研究所で彼の研究を始めた。

 初めはあくまで生物として観察していたが、そのチンパンジーとよく似た、つまりは人間とゲノムがほとんど変わらない霊長類の能力が、その種固有のモノではないのではないかと考え、脳波などを詳しく解析。その結果、成果が得られたというわけだ。

 その後ほんの数年足らずで、それを人間に再現する方法を投薬によって成し遂げる。

 それは天才と言っていい開発だ。薬の創造に研究者が何十年もかけるご時勢に、まさか全く他人の庭である分野にひょっこり顔を出しかと思えば、思いもよらない成果を上げて論文を発表したわけで、当然色んな所から妬みの視線を受けたらしい。

 もっともそういった天才肌というのは他人の評価など気にするわけもなく、そ知らぬ顔で研究を続けた。が、

 能力発現を促進する、子供からの脳波学習法を提唱したのも彼女、超能力研究を取り締まる国際機構ISPO(International Supernatural Power's Organizationの略)の設立を提案したのも彼女なら、薬の情報を規制するという方策を採ろうと最初の最初に論文で提案したの彼女。

 それはそれは恨まれ、『毎日非難の手紙が山ほど研究所に届けられた。こんなことをするなら何か少しでも研究しろと思うけれど、これはこれで助かった。連中、手紙の裏は何も書いてない。紙には全く困らなかった』という状態。ちなみにこのコメントを彼女がジョーク好きであるか捉えるか、他人の感情を全く理解できない根っからの天才と取るかは各々の自由だと思う。

 しかしそんな彼女にもついに静止の時が訪れる。論文発表からおよそ2年後、若過ぎる天才生物学者はこの世を去ったのだ。

 その死に疑問を持つ者も多かったが、それもやはり当然だろう。早すぎる死、詳しく明らかにならないその状況、彼女を殺す理由などそれこそ世界中の学者が持っていた。

 謎が謎を呼ぶ、好きな人にはたまらない1つのミステリー。今でも時々番組がドキュメントや謎解き、仮説を流している。

 曰く、彼女は彼女の研究成果を欲する何ものかに殺された。それはISPOではないか?あるいは同じ施設で研究を共にした科学者か?いや、某国の工作機構の可能性もある・・・。

 曰く、実は彼女は宇宙人だったのではないか?そもそも彼女の言動には不可解なことが多く、何よりあまりにも頭が切れ過ぎたということ。UFOが未知のテクノロジーを持ってきたと考えた方が納得いく、との熱狂的なUFO研究家の言葉。もちろん相手にされてない。

 曰く、彼女はそもそも超能力を開花させる薬の方を先に開発していたのではないか?つまりは、熱帯雨林の探索も猿の話も全部作り話で、何か重要な事実を隠蔽しているのではないのか?彼女が薬を創るのにかけた時間が短過ぎると考える人々は多い。

 などと、不可解な事件にありがちな、面白可笑しい仮説が乱立している。

 何せ真実は闇の中、だ。

 仮に、彼女が何者か・・・研究成果を狙う者に殺されたとしても、その人物の思惑は成し得ずに終わった。

 彼女は最期まで上手(うわて)だったのだ。

 彼女の死の危険。それがスイッチになったのか、彼女の研究資料の全てが――――消失した。

 燃えたでもなく、失くしたとも言えない"消失"。確かに有ったモノが全て一瞬にして消え去った。

 『何もかもがない。紙媒体の資料だけならともかく、薬を製造していた機械まで丸ごとなくなっている。ソナの死骸を保存している冷凍庫はどうやっても運べませんよ。何の痕跡も無くコンクリートから剥がすなんて・・・いや、そもそも彼女の死体はどこに行ったんですか?』

 後に研究所に入った研究員の証言だ。

 大げさな製造機械だけなら分解して持っていけそうなものだが、研究員はそれをも否定した。『解体したら構造が分からなくなる。あの機械はブラックボックスなんです、ソフィさんしか仕組みが分かってませんでした』ということらしい。

 そして冷凍庫。これはもはや施設に備え付けられたも当然なもので、コンクリートで壁と一体化していた。それがまるで元からなかったようにするりと消えてなくなったのだ。

 不可能、という3文字が重くのしかかる。

 最後にソフィ氏の死体。なかったのだ、どこにも。あったのは致死量を超える廊下を蛇行している彼女の血痕だけ。死体はどこにもなかった。

 つまり、彼女は殺される前に全てを消し去った。と多くの人々が考えている。

 彼女の研究資料を欲した誰かさんは何も手にすることはできなかった。彼女自身が超能力を使ってそれらを消したのだと。

 しかしこれもやはり仮説。殺した方が全て持ち去ったのかもしれないし、研究対象の猿にやられた、いわゆる事故なのかもしれない。その可能性は拭えないが、ソフィさんを好いている多くの人は隠滅説を取る。僕も取る。その方が夢があるし。

 さて、とりあえず、超能力史開始にまつわる1つの話は終りだ。

 ・・・あぁ、ちなみに、

 

 実はソフィさん、ソナ発見当時、8歳だったのですよー。


 というのがこの話全体のオチ。

 そりゃあ恨まれるわけだ。天才少女、享年15歳。博士号をまさかの6歳で取得。極めて稀な女性のサヴァン。生物学どころか、機械の自家作成に製薬までこなし、挙句超能力研究の立役者。栄光に栄光を重ねた偉人。妬まれて当然。

 そして猿相手に本気で怒る茶目っ気ぶり。多くのファンがいる理由もここにある。

 もっとも、生活力のなさも異常なものだったらしく、いつも彼女をサポートしてくれる人物が必要だったらしい。

 何とそのサポート役が日本人だった、ということも挙げておきたい。

 と、まぁこんな感じの面白い話が盛りだくさん。

 ソフィ氏関連は特に面白いのだけれど、今日はここら辺で割愛。

 次に、引き抜いた書籍の巻末に書かれた年号を参照してみよう。


 ―…4年 ソフィ・フィリス・シューレル女史が論文と能力発現特効薬の原型を発表。

 ―…5年 国際機構ISPOが設立。

 ―…6年 ソフィ女史死亡。ソフィ氏筆頭のアメリカ・ペンシルベニア州の施設がソフィP・S 記念研究所と改められる。

 ―…7年 薬が実用化。SPSと名称。超能力研究が本格的に開始。

 ―…7年 アメリカとソ連、中国、日本のアジア諸国、ヨーロッパのISPO加入国が、自国で研究施設の建設を開始。


 薄っぺらいがこれが超能力史有史以来の大きな流れである。

 それ以後はもはや書くだけ無駄なので書かれていない。何せ研究が細かく分かれすぎて、挙げていたらきりがないのだ。

 世界全体の出来事としてはこれぐらいしか記せないのが現状と言える。

 研究対象が各研究所で全く違うのが超能力研究のネックなところで、例えばESPとPKだけでも研究方法から違うことが多々ある。なので色んな研究所が挙げた成果は多くあるのだけど、別のところで役に立たなかったりすることも多い。

 なので研究施設のまだ少なかった超能力史前期前半、研究者同士の情報交換すらなかった。秘匿しようという企みもあったのだが、それ以前に情報の活用がこんなんだったのだ。

 それが、ソフィ史の脳波学習法の論文によって日本が特別研究都市システムを採った超能力史前期後半、やっと多くの研究所が建ち揃い、同分野の研究施設が現れ始め、情報交換が開始されていく。

 そこら辺を日本に視野を絞ってみると、学園都市システム以前、初めの研究所が世界各国で設立された時期に浅代研究所が神戸にできる。この研究所は私営のもので、浅代源次郎氏が創立者。その辺はおいおい説明するとして、この研究施設があったことが、神戸が特別研究都市に設定される一因になったらしい。

 万可統一機構や三重録音九法研究所、他方傾向念力追究所といった研究所ができるのはそれ以後だ。

 万可統一機構は元々、基となる研究施設が別にあったらしい。他方傾向念力追究所はその当時から異色な研究施設として有名だったが、三重録音九法研究所は前者2つに比べると、最近できた施設の様だった。日常的なコード・レッド設立はさらにその後だ。

 他にも研究施設は多く存在するが、そのほとんどが割りと新しいものとなる。学園都市システム導入に合わせて造られた所が多いからだ。ちなみに都市システム導入は約30年前ほど。

 日本の研究所事情はそんなところだろう。

 外国の事情は実はよくわかっていない。日本のように研究施設が集まって、ある程度同方向の研究を行っていたりするのなら情報を纏めやすいのだけれど、残念ながら都市システムを取っている国は少ない。

 よって資料は書籍をかいつまんでいくしかない。

 『研究者が、能力の希少さよりも実用性が重要なのだと気付いたのは少し後になってからだった。未来視で自身の危険を予知し、回避するという例は有史以前にも報告されていたのだが、有史以来に生まれた多くの超能力は利用価値があるかも判らないものが多かったのである』。

 元々何かしらと細かい芸が得意な日本人は、当初から超能力の利用を課題にしていた印象を受けるのだが、海外では新しい超能力の発見が目的になっていた頃があったらしい。能力の名称は発見者が名付ける権利を得られる。ISPOに申請、新しい能力と認められると、研究者に通知、能力名を報告して正式決定という手順なのだが、この名称の登録に外国名のラッシュがあった時代がある。たぶんそこに相当するのだろう。

 『発火能力者などは特にそれが顕著であろう。屋敷を燃やすほどの火力ならともかく、多くが掌に収まる程度の火しか扱えなかった。それならライターで事足りるのである』。

 つまり、研究対象にしている以上は実利が伴わなければならない。医学も化学も物理学も生物学も、人間の利益になるという前提(あるいは建前)で発展していったものであり、超能力も然りということになる。

 今まで否定され続けた非現実な空想が現実に露出してきたという興奮が一気に冷め、学者達は慌てふためく。

 目的をなくし、資金のやり繰りも困難になりかねなかったのだ。

 『ただ、発火能力者は火力次第で利用価値のある能力である。利益、特に国としては戦闘能力を期待でき、他のPK系能力者、治療能力者に予知能力者共々存在価値を認められることになる。問題だったのは、それに零れた超能力だった』。

 ここにきて、超能力にESP、PKとは違った区分けができることになる。価値があるか価値がないか。能力格差の出来上がりだ。

 手当たり次第超能力なら何でも手を出していた学者の中には当然研究対象がその零れモノに入ってしまうという悲劇を味わう者達もいた。

 『だが、彼らにとって幸運だったのは、それを掬う方法が示されたことだ』

 捨てる神あれば拾う神あり。実用価値のないものに、価値を与える手段。

 ――――真理への到達。

 哲学にしろ、医学にしろ、それこそ他の学問にしても、この課題が全く無いとは言いきれない。

 哲学はあからさまだが、医療行為だってそもそも、その初め、解剖という行為を後押ししたのは、人体の内側がどうなっているのかという好奇心だ。

 少なくともほんの一昔まで科学的にも信じられていた"(ライフ)"の仕組みを、真理を知ろうとした方法の一種に他ならない。

 それに病気の治療や、人に有益な物質の生成などの実利が付きまとって今の学問が成立している。

 そう考えれば、何もおかしな話でもないが、しかし彼らにとって重要なのは、無価値の烙印を押された、少なくてもそうだと思われている自身の研究対称を祀り上げることだ。

 不可解、説明不可、摩訶不思議な超能力という現象を、神様という宗教(しんり)の根源に結びつけるのにそう時間はかからなかった。

 『彼らを愚かしいと切り捨てることは浅はかだ。超能力とされて具現される現象は確かに、誰にとっても総じて神秘に満ち、聖人の奇跡と同じく神の存在をイメージさせたのだ。真理を追うアプローチとして超能力が挙げられること自体に異常性はなかった』、『しかしこの頃から超能力研究に毛色の違う研究が混じるようになった』。

 神を証明する手段に起用されるようになり、超能力研究は2つの方向を分かつ。1つは実用性を探り、1つは神秘性を求め、二分した。

 『"Triplet record, nonuplet method"と呼ばれる機関がその代表格だろう。この研究所は堂々とその目標を明言し、嘲笑を浴びた』

 Triplet record・・・?3つの記録、という意味だろうか?・・・・・・!、三重録音九法研究所のことか。

 nonupletは九つ子という意味だった気がする。とすれば間違いない。キワモノ、と呼ばれる研究所の1つ、三重録音九法研究所を指すのだろう。

 あの機関、日本のモノじゃなかったんだ。翻訳された元イギリスの書籍に乗っていることもさることながら、名前がわざわざ訳されずに英名になっている辺り、こっちが公式名称と考える方が正しい。元々外国の機関なのか。

 しかし、では何で日本に来たのだろうか?日本は外国よりも先に実用性重視の研究傾向に走っていたはずだ。そういう研究所は浮くことになる。というか、浮いているからこそキワモノ扱いなんだけれど。

 外国では周囲の非難が酷く状況が悪かった?確かに日本なら宗教心も薄いし、とやかく他人の研究に物言うようなこともなかったのかもしれない。ただ、外国の風土がどうなのかいまいちわからないので確信が持てないなぁ。

 三重録音九法研究所関連の情報を載せていそうな海外書物を参照しよう。

 『Triplet record, nonuplet methodの目標は高々とこう挙げられている――――三重の録音式に基づいて九法を用いて永遠に至れ』、『3種の録音。つまり自己の記憶(にんしき)、他人の記憶(にんち)、そして世界の記録(アカシック・レコード)の三重を指すが、その仕組みはさておき、不死者を創ることを目的としている』。

 ほら、これはもう科学の、一般的には現実と呼ばれる世界のモノじゃない。超能力が現実としての価値を得たことをいいことに、全く別の分野の学問が取り憑いている。

 これについて僕の知っている知識を合わせるとするならば、この機関が創ろうとしていたのは厳密には不死者ではなく"不滅者"。存在の消えない情報体としての有り方を実践できる能力者。

 つまりこれはもう、言ってしまえば魔術の分野なのだ。

 哲学や宗教を下地に展開される世界の解明、物理的(かがく)ではない法則による現象具現、神秘を求め往く学者の先駆者。

 魔術は立派な学問だけれど、僕にとっては専門外。あちらさん、哲学的過ぎて即物、俗物的な僕の性に合わないので。

 まぁ、これで三重録音九法研究所の異常性は分かっただろう。毛色が違う、というのはこういうこと。

 もちろん、だからと言って他の組織まで何か魔術的な要素があるというわけではなくて、これはあくまで一例。

 話が逸れたのだけど、外国においてはそういった経緯で、現在も目的が離れた2タイプの超能力研究パタンがあり、どちら側であるかということが重要視されるらしい。

 日本では全く気にされていないことだ。日本は日本で独自の発展をしてきているからだろうか?

 ・・・・・・焦点を日本に当ててみよう。

 特別研究都市システムはソフィ氏の脳波学習法に関する論文を元に考えられた機構なのだけど、これが実際起用されるようになるまで少し時間がかかった。

 設備投資のリスクに加えて学校という非常にデリケートな領域に足を踏み込むために、なかなか踏み切りが着かなかったのだろう。

 薬の安全性を見極めていた、という話。

 日本には9箇所、特別都市がある。北海道、青森、群馬、千葉、神奈川、兵庫、愛媛、宮崎、沖縄と、本島他、地続きでない地域にも一箇所はあるように配分されている。

 さて、基本的にはSPSの扱いが許可されている教育機関付属の研究施設群だけれど、学校ばかりが並んでいるわけでもない。場所によって特色があるので言いきれないのものの、神戸で言えば、ベースは下からある港町の雰囲気を残して、そういった学園を誘致している形。

 祠堂学園や他の『学園都市』駅にある学園は位置的に山を削った場所に存在するのでそういった空気は感じられないだけで、クシロの住んでいる辺りになるとハーバーやポートといった言葉が目に付くようになる。

 なので特別都市といったところで普通の市とそこまで違わない。違うのは教育機関の一部だと考えていい。

 それに祠堂学園ももちろんのこと他の認定学園というのはそれなりに土地を持った上で、その中だけで物事を終わらせることができるのだ。

 学校である行事の数々、SPSの服用行事然り。内で全てやってしまうので、特別都市だからと言って超能力で染まっているわけではない。

 もちろん秘匿しているわけでもないので、電車に乗っていれば超能力者が痴漢に一撃・・・といったことは起きたりするものの、超能力者との接触頻度は高くないのではないだろうか?

 あと、祠堂学園は他の都市・・・青森なんかにもあるらしい。入学時のパンフに載っていた。つまり、各地に特別学園都市があるといっても、その核たる学園は大体決まっているということ。

 祠堂学園は財閥の造った高貴な学校というイメージがある。教員に問題がないとも言いきれないものの、施設は綺麗だし、訓練施設は充実している。卒業後のサポートも結構厚いらしい。自分のところで働いて欲しいからだろうけれど。

 少なくても僕が通える所ではない。言わなくても明白な事項だけれども、まぁ、当然クシロのお金です。

 学園都市の雰囲気はそんなものだ。

 次に、学園都市の都市伝説辺りを引き出してみる。

 先ほども出た三重録音九法研究所を含めた、至極追探(いきすぎ)組織の存在をまず第一に。

 これは僕の様にそれなりに裏事情を知っている人間には明確に、そうでない一般的な超能力者にもお近づきになりたくない程度に、知れ渡っている話だ。

 曰く、浅代研究所では完全な健康体である人間から臓器を取り出し、新しい臓器を再生させるという実験を行っていた。

 曰く、三重録音九法研究所の研究者は思い通りの超能力者が得られたかどうかを、殺して確かめる。

 曰く、神々の輪笑は実験失敗によって廃人を造り出す、生体解剖用実験体の製造工場である。

 曰く、万可統一機構は有史以来最悪の実験用孤児の育成施設で、日夜人体実験に明け暮れている。

 とまぁ、こんな感じだ。少なくても最後のはあながち嘘ではないので、他の噂にしても信憑性は高い。

 ちなみに神々の輪笑で図らずともできてしまった廃人の流通先に箍の外れた発条(フォールアウト)の名前が挙がることも。

 箍の外れた発条(フォールアウト)は能力を制御できなくなった暴走能力者の研究をしているらしいので、これも筋は通っている。

 こういった機関には近づくな。というのが1つ目の話であり、教訓というやつだろう。

 一応詳しくこれらの機関について纏めると、まず最初に有史初期に出現した浅代研究所。医療系能力を扱った浅代源次郎氏の設立した私立研究所だ。

 先の噂以外にも、生命反応のある脳髄を取り出した上で、骨格から再生させようという試みがあったらしいというのまであり、近づきたいと思う方がおかしいといった所。

 何十人、何百人の犠牲により、医療系能力者の質がかなり上がったとか。

 次に、三重録音九法研究所や神々の輪笑といった魔術的な要素のあるものは飛ばして、噂の方には出てなかったけれど、他方傾向念力追究所。

 これは念力系能力(サイコキネシス)研究の最高峰。それも力ではなく、応用の研究をしているとか。

 ただしこの施設何も危ない噂は聞かない。超能力の種類が系統樹のように細かく枝分かれしていくものだとその世界に認識させたのはこの研究所。

 能力波を乱反射させる反響氾濫(バウンディング・エコー)を生み出したのもここ。

 箍の外れた発条(フォールアウト)は能力を暴走させた、制御できなくなった能力者の研究を行っている。ここで重要なのは"保護"でも"収容"でもなく"研究"であるということ。彼らにとって能力のコントロールができなくなった、思考に身体的、あるいは精神的欠陥を抱えた能力者はモルモットに過ぎないといことだ。

 例外があるもののどの機関にしたって、噂を聞くだけで気分を害すタイプのもの。

 倫理性に欠けている至極追探(いきすぎ)組織というわけだ。

 こういった組織は超能力史の初期に多かったりして、そこら辺も不気味な噂を立てる原因になっているのだろう。

 三重録音九法研究所のことを考えれば一目瞭然、あの研究内容でよく今まで施設が成り立っているな、ということなのである。

 他の噂・・・例えば双芥(そうかい)中学校にもそういうものはある。

 ここは本来僕みたいな人間が行くところなのだけど、地下に複写体(クローン)製造工場があるとか、人の瓶詰め保存庫があるとかそんな噂がやっぱりある。

 それらが本当かは置いておいて、少なくても生徒がいきなり行方不明になっても問題なく事が運ぶようなシステムが構築されているんだろうなというのが僕の意見。

 そういう学校がチラホラあるのだけど、同じようなものなのでスルーして、今度は僕の知らないようなものを探してみる。

 『SPI都市伝説解説読本』。ほら、こういうありがちな安っぽい書物がちょうどある。

 万可統一機構にはこんな本なかったからなぁ・・・。まぁ、当然か。

 外国の書籍と同じように、カバーもかかっていない厚紙程度の柔らかい表紙。後ろを見ると初版と確認できる。重版されているのだろうか?色んな所が圧力かけたりしてそうなんだけどな。いや、むしろそんなことをすれば目立つのか。ゲリラ的に出版しているのかもしれない。

 内容としては、流れている噂話の信憑性について論理的に分析するというもの。好きな人は好きなのだろう。

 『最も殺傷力のある能力は何か?〜パート2〜』・・・『原始素能(ホワイトノート)は万能能力者か?』・・・『光反迷彩(トランスパラン)に意味はあるのか?』・・・『思体複製は死体複製?』・・・・・・etc,etc。

 ・・・・・・。よし、止めとこう。内容が思った以上に俗だった。何最後の。死体複製?それはとある思体複製が能力使用中、自分の本体の方に気が回らな過ぎて、車に轢かれたことを指しているのだろうか?それとも複製した思体の方を破壊されると廃人になることがあるということを言っているのだろうか?

 殺傷能力の高い能力?斬刀水圧(ウォーターカッター)なんかのことだろうけれど、同じ能力者でも威力が全く違う場合もあるし、威力が違うだけで能力の名称が違うことも多々あるのだから、暫定すら不可能だと思う。

 光反迷彩(トランスパラン)はいわゆる光学迷彩というやつ。だけれどそもそも人にしたって視覚だけでモノを認知しているわけではないので、完全に姿を消すことは難しいということなのだろう。少なくても僕なら素で熱感知できるし。

 唯一まともそうなのが原始素能(ホワイトノート)の話。いつも気だるそうにしている電波少女な美樹(みき)の能力だ。

 他人の能力をコピーできると勘違いされている能力だけれど、実際は他人の能力の火種を得られるだとか。

 方向性と言ってもいい。発火能力者が透視能力に目覚めることはほぼありえないとされている、その理由。

 PK系能力者で発火、発破、発電能力を操る能力者が実在するのは、方向性が似通っているため、可能性としては派生できなくもないからだ。

 けれど、ESP系能力はその方向性を大きく(たが)っている。不可能とは言えないものの、隔たりが大きいのだと学者達は考えている。

 原始素能(ホワイトノート)はその方向性を他人から得ることのできる能力だ。

 発火能力者からは発火の火種、発水能力者からは発水の火種、撥水能力者からは当然撥水の火種。

 つまり、相手の能力自体ではなく、相手の能力者が持っている能力としての可能性を得られるというもの。

 なので、コピーできるというのは難しい。同じ規模の威力を持った超能力を使えるわけではないのだ。

 いつもと勝手の違う能力をいきなり使いこなせるわけもない。

 それに、もっともネックなのが、大体の原始素能(ホワイトノート)は火種を貰える数が1つか2つ、ということ。

 無限にそれがこなせるのなら、確かに万能能力の名に相応しいだろうけど、限界があるというわけだ。

 なので何時使うかは、慎重に決めなくてはいけない。

 美樹さんは何を貰うつもりなのだろう?前に僕の形骸変容(メタモルフォーゼ)を得ようとしていたアレは冗談・・・だと思う。

 みょみょみょ〜んとか意味の分からない呪文を唱えておでこに手を当てていただけだけど。

 そういえば原始素能(ホワイトノート)ってどうやって火種を貰うのだろうか?

 そういうこと書いてある本、あるのかな?いや、直接彼女に訊けばいいか。

 SPI都市伝説解説読本シリーズが幾つも並んでいるのだけれど、どれもやはりそういったものばかり、ダークユーモアな感じがするのは1つもなかった。

 これは編集があえて出さないのか、それとも圧力の成果なのか・・・。

 まぁいいや、都市伝説系の話はこのぐらいにしよう。

 ・・・・・・もし時間があればもう少し色々と情報を拾ってみたいのだけど、そろそろガラスから(とお)ってくる陽が山吹色じみてきた。

 鍋を用意されている身として早めに切り上げを宣告した方がいい。

 形骸変容(メタモルフォーゼ)関連の資料がなくても、形態変身(トランス)系の資料はあるし、それだって勉強になるだろう。

 他にも件の日常的なコード・レッドの学習資料も探してみたい。

 などと渦巻いている色々な願望を抑えつつ、椅子を畳んで入り口の方へと歩を進める。

 とりあえずそこから、他のメンバーを呼んでみようと思ったのだけど、その必要はなかった。

 何故か。理由は明白。

 彼女ら、この大量の有益資料を目の前にして携帯ゲームをやってたから。

 ビオサイド。多数プレイでやっているらしい。

 入り口から一歩も動かず、パイプ椅子に腰掛け5人で黙々と高画質の液晶を覗き込んでる。その脇に魔法瓶に入れたコーヒーまで置いてあって、紙コップが散乱という状況。

 あぁ、そうかアホウドリ君の荷物はこれか。というか、飲食厳禁だろうよ普通。

 何と言うか・・・・・・罰当たり過ぎる。

 こんなすばらしい所まで来てよくゲームできるなと。

 いや、つまり僕のためにここまで連れてきてくれたって事なんだろうけどね。

 ・・・どうやら、神経質な岸君が逃げる少女役らしい。つまり他の彼らが追いかける側なのだけど、

「チッ、またこそこそと・・・」

「うげっ、りょーすけ、てめぇ第四病棟に菌撒きやがったな!感染した!」

「あぁーご愁傷様、みずる。駄目だよ、ちゃんとチェックしてから行動しなきゃ」

「ワクチン持ってないなら分けるぞ。第三の入り口まで来い」

「ひぃー!出口ないです!ないですってば!なんで智香さん出入り口から動かないんですか!?」

「出すわけないでしょうが。アホウドリ、とっとと現場復帰しなさいよ。

 りょうすけは第四にいるわ。ローラー作戦で一部屋ずつ潰していくわよ。

 ゆきなりは対人毒ガス兵器(さっちゅうざい)持ってたでしょ。使うから持ってきて。

 とっとと終わらしてやるから覚悟しなさい」

 本当に楽しそうに熱中している5人。・・・・・・うん、今度参加させてもらおう。

 いや、違うか。・・・どうしようかなこの状況。もう少し本読んでて良さそうな感じなんだけど。

 でもなぁ。読んだら読んだで今度はこっちが熱中しそうな気がするし。

 うーん、本当にどうしよう。現在時刻午後5時過ぎ。鍋を囲むつもりならそろそろ帰った方が良さそうなんだけど。

 仕方ない、声をかけるのはこれが終わるまで待とう。幸い礎囲さんが一気に決めるつもりらしいので、もうすぐ終わりそうだ。


                     #


「思うに、エプロンをつけた女の子が、髪を上げてうなじを見せている後姿っていいと思うのよ」

 ついさっきまで、キッチンで具材を切って準備をしていた僕に対してそんなことを言う礎囲さん。確かにエプロンだったけど、上の方で括ってたけれども!

「これだけの手間で料理が美味しく食べれるなんていいわよね」

 手間をかけたのは僕だし、もしもその"手間"とやらがここまで荷物を運んだことを指すならば、それはアホウドリ君の労働だったはず。

 あれ?アホウドリって定着しちゃったけど、名前なんだったけ?忘れてしまったっぽい。

 いや、いいか。思い出すのも面倒くさい。

 あと、味がいいのは単に素材がいいからだろう。当然のようにぽんと持ってきたけれど、このカニとかどこから仕入れてきたんだというぐらい高そうだ。

 あれだ、あれ・・・月50万が金銭感覚をおかしくさせているに違いない。空いた時間にアルバイトでも入れておけば結構な額が懐に入るのだろう。

 カニの種類なんて見て判別がつくわけもないのでこれがどんな種類なのかイマイチ判からない。いや、そもそもしゃぶしゃぶ用に足だけを加工してあるものなので判りっこないんだった。

「このカニ、なんて種類なの?」

 気になって訊いてみる。

「ん?ハナサキガニだけど?」

 シット。調理法を調べるんだった!

 何でそんな幻と冠される高級食材をパーティーのぶち込み鍋に使うんだこの人達!

 花咲ガニ。少なくても日本では漁獲量が激減してるヤドカリだ。美味しいに決まってる。というか適当にぶち込んでしまったのがすごい心残りなんですが。

 せめてちゃんとしゃぶしゃぶとしてすべきだった。鍋って言うから煮込むつもりで・・・あーあ。

 後悔の念を宿した目で改めて鍋に放り込んだ赤い甲殻類を見つめる。

 ・・・・・・今度、クシロに頼んでちゃんと料理してみようかな。

「?そういえば、これ何のパーティーなの?まさかただの食事会というわけじゃないよね?」

「『はづきちゃん歓迎パーティー』だね。『はづきちゃんを絶対加入させるための圧力パーティー』とも言うけどさっ」

 答えてくれたのは音羽さん。料理に舌鼓してご機嫌なのか声が弾んでる。

「あ、書類持ってきたんだった。瑞流、あの封筒あんたの鞄の中よね?」

「んぁ、緑っぽいやつか?入れた覚えはあるな」

 既に書類まで用意されているらしい。本当に圧力だ。そういう勧誘テクニックがあった気がする。人を断れないように仕向けるやつ・・・なんだっけ?

「それは記入したらどこに提出すればいいの?」

「あー、書けたら私に渡してくれたらいいんだけど・・・・・・証明写真とか持ってる?」

「持ってないかな・・・いや、撮ったことないと思うけど・・・」

 そもそも受験云々の話ってあんまり覚えてない。何か色々ごちゃごちゃしたことがあったらしいけれど、僕のあずかり知らないところだし。

 万可統一機構の方が何やら騒がしかったからなぁ。僕を祠堂学園に入れていいのかまずいのかって話で揉めてたらしい。結局鉄面皮な院長が許可してくれたとか。

「あれ?祠堂学園って私立よね、ちかっち?」

「そうだったと思うけど・・・はづきちゃん、受験票とかどうしたの?」

「んー、そういうのは全部クシロがやってくれたし。あれ?受験票って写真添付するものなの?」

 いや、正直試験面倒臭いなぁと思って適当に受けてたし、受験票自体、当日クシロが渡してくれたんだし。

「なぁーる。そのクシロって子が過保護なおかげではづきちゃんは妙に世間知らずなのね。さすがねその子、今度会ってみたいわ。

 むぅ、やっぱりはづきちゃんはお姫様属性よね。そういう所がまた堪んないなぁ・・・」

 何か、箸を口につけて物欲しそうな顔をする礎囲さん。・・・カイナみたいに実力行使に出てきたら、とりあえずみぞおちに1発いこう。

「じゃあ、今日中には無理かな。それじゃあ、もし書けたら連絡頂戴」

「でも、わざわざそのために足を運ばれるのも気を遣うんだけど・・・」

「いいのよ。今度は焼肉にしましょ」

 次も全員で押しかけてパーティーを開くつもりらしい。

 それはそれで気が滅入るんだけど。

「・・・肉は普通のにしてほしいです」

「えぇ〜、せっかくだから食べ比べしようよ。地元神戸牛VS佐賀牛!どちらが美味いかっ!」

 食べるのが好きなのかな、音羽さん。というかグルメ?あるいは高級食材が好きなのか?

 神戸牛に佐賀牛、どちらにしろ5等級の肉塊を持ってきそうで怖い。個人で得られるものなのかは知らないけれど、組織的に変なルートがある気がしてならない。

 僕としてはスーパーで市販しているようなタレ付きカルビやタン塩で十分楽しめるんだけどな。

「あ、はづきちゃん、そろそろメイン追加しよ。カニの次はフグよね」

 最初の準備に引き続き、僕は具材の投入係として作る側に。

 もっとも作業は既に切り身にされているフグとその他を投入するだけという単純ぶりだけど。

 他のメンバーが完全に食べる方に専念しているのにと何となく違和感を感じつつ、美味しいのでいいかと納得。

 ああでもやっぱりカニが心残り。包装紙に書いてあれば・・・。

「そうだ。裏方の活動内容、もう少し詳しく教えて欲しいんだよね」

 気を、紛れさせよう。

「活動ねぇ。あまりないんだけど、あっ、そうだ。この前君が・・――した不良達のことなんだけど・・・」

 "・・――した"のところは体を震わす佐々見君。そして何をしたかを誤魔化した。

 あぁ、それか。何か今日一日中距離を置いてると思ったら、それが効いてるのか。

「どうしたんですか?どうせすぐ治療されたでしょ?」

「・・・ぃや、そうなるはずだったんだけど、先輩が・・・ほら、君も会ってるだろう?眼鏡をかけた人、ブースに座ってた」

「・・・・・・。・・・。・・・・会ってるかも?」

「会ってるんだよ」

 強く断言された。あー、うっすら、覚えている・・・かも?

「その人がちょっと手を加えたせいで、彼ら元には戻らなくなったんだ」

「へぇ・・・ご愁傷様」

 澄まして一言。自分がやったことだけど。

 それに同情することができるわけもないし。いい気味だとしか言いようがない。

「で、正規の機関では無理だからって、患者を選ばないタイプの所へ行こうとしたわけだけど、それも達成できなかった」

「はい?」

 そこで彼は礎囲さんを指す。指された方は僕と同じで全く悪びれず澄まして、僕が片手間に投入したタラを口に入れている。

「智香さんがウラカタの上に連絡して、他のグループがそれを阻止したらしいんだ」

 あぁ、なるほど、そこから活動内容に繋がるわけか。そういうことをするのも裏方の活動、と。

「つまりそういう制裁を暗にやるってこと・・?」

「うん。基本実力行使でね。でも、なんだかんだ言って月1回は何か仕事が入ってくるよ。最悪イベント会場の警備とか。無理やりにでも話を持ってくるって感じかな」

 そりゃあ、1回も活動なしで50万というのもどうかと思うしね。それでも大損だろう。不良の相手にしたって損になるはずだ。

 裏方と仮称される組織の意義は暴走した超能力者の処理だろう。

 それが破壊によるものか、殺害によるものなのかは知らない。この組織がそこまで危ないかどうかは入らなければ分からない話だ。けれど、超能力者を集める以上は、彼らを特化した状況に対応させる必要性がある。

 仲良しごっこのわけがない。月50万をまさかどぶに捨てるようなことはしないだろう。

 あるいは、その50万は僕に対してだけのものなのかも。能力の等級で給料が決まっている可能性もある。

 何にしても、色々と厄介ではありそうだけれど。今更入らないとも言えないし、言う気もないか。

「大分なくなってきたな具。織神、何か入れてくれよ」

 容姿的にそう言われるのに違和感があるアホウドリ君。年上なので構わないのだけど、やっぱり不思議な気分になる。

 いや、考えてみれば心の中であっても年上をアホウドリと呼ぶ僕は無礼者だけどね。

 ともかく、まだまだ具材はある。花咲ではないカニがもう一杯に、イワシの肉団子その他野菜にもちろんシイタケも。

 そろそろ食べることに集中しよう。


                     #


 パーティーもどきのほぼ単なる食事会が終わったのは9時を過ぎた辺りだった。

 あれ?パーティと食事会の違いって何なんだろうと今更思いつつ、さすがに片付けは皆手伝ってくれたので、嵐が去った後のように静けさが身に染みる部屋の中ぼうっとしてみる。

 基本的に大勢で騒いだことのない僕にとっては、ああいう何かを囲むという体験は新鮮なものだった。面白いけど疲れると言うのが感想。

 アホウドリ君が冷蔵庫のクリオネを見つけてはしゃぎ、瓶を振り回すという蛮行を行った時には、さすがに殺意が涌いたけど。

 テーブルに残った薄緑色をしたA4サイズの封筒の中身を取り出してみると、中には用紙が一枚。

 氏名や住所、連絡先を書くスペース、写真を貼るらしい空白、そしてハンコを押す印。・・・ハンコ?ハンコ、ね。

 それも持ってないや。押したこともない。

 ・・・駄目だ。クシロに頼り過ぎてる。礎囲さんがお姫様だとか呼ぶ意味がよく分かる。世間知らずだなぁ、僕。

 ボールペンで書ける所を埋めていく。1分もかからず必記欄を書き終えてしまった。欠けているのは写真とハンコだけ。なのにこれが意外に大きな欠落がある気がしてならない。

 なるほど。こういう気分になるのか、書類筆記って。

「・・・・・・、やることがない」

 声に出してみる。賑わっているところからいきなり静かになると居心地が悪いなぁ。

 明日も休みだ。それが終わればまた学校が始まる。今度の目立った行事は6月の初頭、期末の能力測定だろう。7月には運動会があるし、もちろん期末考査もある。その後には夏休み。

 道のりが長い、長すぎる。けれど、たぶんその日々はとても楽しいものになるのだろう。

 世間知らずな僕、変わり者の友人にクラスメートと教師、それから色々ありそうな裏方のメンバー。

 そこで起こる出来事は、僕を楽しませてくれる。

 即物的で俗物的。

 その日楽しければそれでいい。明日楽しいのならそれもいい。

 明日がなくてもそれでいい。

 さて、では明日は何をしてみよう。

 クシロのところに行ってみようか。彼なら僕の苗字が彫られたハンコも証明になる写真も残っているかもしれない。

 ではでは、今日も一日お疲れ様。

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