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執事オーバーワークス  作者: 双葉
第一章 『元ヤンから』
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第一章プロローグ 『引退』

ヤンキーが執事のお仕事をする話です、ゆっくりと更新していきます。


よろしくです。




 ここは双葉県一葉市、総人口およそ75万人、高層ビルが立ち並び派手なネオンの光がよく目立つ都会。


 季節は冬、12月に入るとチラチラと雪が夜空から舞い降りている、そんな寒空の中を騒々しい集団が国道を走っている。


 今でもそんなに珍しくはない単車集団、バイクは奇抜な改造を施し、車線区分は無視をし蛇行運転、真夜中の静けさを打ち消す走りをしているのは暴走族と言われるグループ。


 その集団が集会として使っているフェリー乗り場は、週末になると大量の単車で埋め尽くされる、2人乗りシートの背には『双葉會(ふたばかい)』と書かれ、この街で知らない人がいない位には有名なチーム。


 それを率いているチームリーダー、所謂総長は『天羽翔(あまはかける)


 年齢はこの日で21歳となる成人男子、髪は金髪でチームで1人黒い特攻服を身にまとっている。


 バイクの走りは悪いものの、喧嘩や犯罪行為はチーム内では禁止としているらしいが、道路交通法は守っていない。


 人様に迷惑を掛け続け数年、彼はこの日重大な報告をチーム全員に話す事にした。



「皆、聞いてくれ」



 雑談で賑わっていた男女は、総長である(かける)の呼びかけにより会話をやめて話を聞く体勢になる。


 チームを発足し、今まで引張てきた翔を慕っているチームメンバーは、いつもとは違う声音に気づき始める。



「俺は今日で21だ、今まで走り続けて来た俺は多分何かから逃げて来たんだと思う」


「警察から?」


「違わねぇけどちげぇよ」



 何とも言えない空気でもツッコミをするのは、副総長の『繭先美玲(まゆさきみれい)』だ、翔が単車で走る所を毎晩交差点やフェリー乗り場に見に来ていた、いつしか走る姿に惚れてしまい自らチームに加入した。


 だが彼女は特攻服は着ずに、腕章を腕に付けているだけと言う変な子、理由は誰も知らないが翔も特に聞いたりはしていない。



「実はな、昨日バイト先に解雇されちまった、住み込みの仕事だったから部屋からも追い出された訳さ」


「それとチームに何か関係があるんすか?」



 歳下の後輩は疑問をぶつける、仕事をクビになった事がチームに何の関係があるのか、皆は少しざわつきはじめる。



「チーム内の誰かが、俺の職場の上司を殴ったそうじゃないか」



 ざわつきはさらに音を上げる、誰なんだ? お前か? そんな疑いを掛け始めるが、パンパン、と美玲(みれい)が手を叩き黙らせる、周りは犯人探しをしようと動き出すがそれを翔が止める。



「今更犯人を見つけた所で同じ職場には戻れん、それはもういい。まぁその事も含めて今から話す」



 翔は座っていたベンチから立ち上がり、特攻服の上着を脱ぎそれを美玲に手渡した、押しつけられた上着を見てから翔を見て、



「まさか、辞めるの?」


「あぁ、俺は今日を持って双葉會を辞める」



 声は大きく無いが、その言葉が皆に伝わるには十分なセリフだった、突然の総長引退にチームは動揺を隠せない、だが1人だけは翔の目を見つめながら話す。



「どうして辞めるの?」


「チームの誰かが俺の雇い主を殴った、それだけで十分な理由だろう、責任を取るのは俺だ」


「だからって、辞めるまで行かなくても」


「どっちにしろさっさと就活しないと母親がうるさいからな、迷惑かけちまったし、丁度いい」



 意思を曲げる気はもう無いと、ニッカのポケットから煙草の箱を取り出し、1本口に加え火をつける。


 煙はゆっくりと頭上を越えては消えていく、それを見つめる翔を見ながら美玲は、



「じゃあ、私も辞める」


「は?」



 口に加えていた煙草を地面に落とす、腕に付けた腕章を取り外して、横に立っていたナンバー3に特攻服と腕章を押し付けた。



「私は翔が居たから続けてた、居なくなるなら私も辞める」


「お前が辞める理由は無いだろう」


「私もそろそろ親にバレたりするかもしれない、まだ学園も卒業出来てないから丁度いいよ」



 まさかの総長と副総長の行動を見てさらに困惑し始める、ナンバー3の男は2人に話し掛ける。



「お2人が辞められるのは致し方ありません、ですが、何かあれば俺達はお2人を助けます」


「お前には悪い事をしたよ、今日からお前が引っ張れ」


「翔さん見たいにやれるかわかりませんが、やってやりますよ」



 ナンバー3の言葉を聞いた皆は、困惑した空気から少しずつ見送る瞳へと移り変わった、2人が居なくなった後の不安もあるかもしれない、だがもう先の事を考えている翔や美玲を止められる者は居なくなった。


 12月の冬、天羽翔と繭先美玲はチームを脱退し、


 それぞれの道を歩み始めた。



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