怪人ゲンエイダーの場合
書いた作品が読まれようとも、読まれなくてもそれは読者様の自由。
そんななにも変わらない世界の片隅で、今日もセコセコ悪事を働こうと考える者達がいた。
それは、“秘密結社アルトワークス(株)”の面々である。
「今日こそ決着をつけるぞ、アークマイン!」
「おお、やるか?」
アルトワークスの総統補佐である、アーマット様が叫ぶ。
これでいつも通り、掴みはオッケーだろう。
目の前では、ポケットに手を突っ込んだ状態のアークマインがこちらを見ている。
今日も変身する気はさらさらないようだ。
なんで、変身すらしない状態のアークマインに、怪人がしてやられてしまうのかはわからないが、いつも気付くと劣勢にたたされていることがほとんどだ。
気合いをいれて望むべきだろう。
「さあ、行け!怪人ゲンエイダー!夢心地のままあの世に送ってやるのだ!」
今日のアーマット様はノリノリだ。
話によると、商店街の福引きが当たったらしい。
「いやー、今月はお米買わなくてもよくなっちゃったよ。」
と、とても微笑ましい一幕であった。
悪の秘密結社の総統補佐だとしても、そこは普通に嬉しかったようだ。
アジトで、怪人達に自慢をしまくっていた。
怪人の方々の反応はそれほど芳しいものではなかったが、そんなことは目にも入っていなかったようだ。
どうも、これまでの人生で、何か物が当たったことは無かったようだ。
「チェェェイ!俺様の力でアークマインも最後だぜぇ。」
「おお、その意気だ、ゲンエイダー!」
ゲンエイダーさんは、その名前の通り、幻影を生み出す力を持った特殊な怪人だ。
相手の思うことを、相手の脳内に発生させることで、攻撃とする。
そのため、深い闇があればあるほど、深ければ深いほど、相手にダメージを与えることが出来る。
この力があれば、アークマインを夢心地のままあの世に送ることも可能かもしれない。
夢といっても悪夢だろうけど。
連日の作戦会議の成果が出た形だ。
「チェェェイ!では、アークマイン!この五円玉を見るのだ!」
ん?
五円玉?
そんな、昭和の催眠術でもあるまいし、何かの冗談だろう。
きっと、笑いでも取りに行ったんだ。
でも、今はそんな笑いはいりませんよ?
そう思い、アークマインに合わせていた視線をゲンエイダーさんに移すと、本当に五円玉にヒモをつけたものを構えていた。
うわぁ、本気だった!
一気に不穏な空気を感じる。
アークマインの視線上で、その五円玉を振る。
「チェェェイ!どうだ!眠くなってきただろう。眠かったら手をあげるのだ!」
しかし、アークマインが手を上げる事は勿論なかった。
どころか、呆れた顔でゲンエイダーさんから俺の方に視線をずらす。
その目には、どこか哀れみを帯びているように見えた。
いや、本当にそんな目で見ないでください。
本当に泣きたくなってくる。
そんな中、一人手を上げるアーマット様。
えっ、もしかしてかかったの?
いやいや、アーマット様に向けて振って無かったですよ?
アークマインの視線が、さらに突き刺さるように感じる。
「お前なんとかしろよ。」と言わんばかりだ。
いや、こんな状況どうしろというのさ。
「チェェェイ!よし、そろそろかかっただろ!」
いや、全くかかってませんよ?
「チェェェイ!それでは昔を思いだすのだ!」
「うう・・・さち・・・子・・・」
「誰!?」
アーマット様の呟きに、思わず反応してしまった。
いけないいけない。
また、頭の叫び声を忘れてしまったよ。
にしても、“さち子”って誰?
いや、興味はあるけど、踏み込んでいいことではないだろう。
「キキー!ゲンエイダーさん!アーマット様が錯乱状態なので今日は撤退しましょう!」
「チェェェイ!いいところなのにか?」
「キキー!いや、アークマインには効いてないですから。それでいいか!アークマイン!」
「ん?ああ、良いぞ。んじゃ、帰るわ。お疲れ。」
労いの言葉を残して、アークマインは去っていこうとする。
それに不服そうな態度で、ゲンエイダーさんが止めに入る。
「チェェェイ!まだ、終わってないぞ!」
「うっさい、このエセ催眠術師。」
「チェェェイ!何故、前職を知ってる!さては相当驚異に思っていたな!」
「だからうるせー!」
アークマインのアッパーカットが綺麗に決まり、放物線を描くようにして宙を舞い、頭から地面に突き刺さる。
ああ、これ昭和のアニメで見たことあるわー。
そうして、アークマインは全てをほっぽって、帰ってしまう。
錯乱状態のアーマット様と、地面に突き刺さるゲンエイダーさんをどうしたらいいんだ?
その場に立ちすくみながら、二人を見つめることしか出来なかった。
「チェェェイ!さぁ、この五円玉を見るのです。そして、何度も作品を読むのです。そして、ブクマや感想やレビューを書くのだ!」
「キキー!いや、効いてないですから!むしろ、ドン引きしてますから!」
ゲンエイダー
怪人としてアルトワークスに所属する前は、催眠術師として活動していた。
幻影?
能力は盛るものですよ?
ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。
また、様々な感想を頂けるとありがたいです。
今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。