怪人カマキラスの場合
世界が色々な動きをするが、いつも通りの日常が過ぎていく。
そんななにも変わらない世界の片隅で、今日もセコセコ悪事を働こうと考える者達がいた。
それは、“秘密結社アルトワークス(株)”の面々である。
「今日こそ決着をつけるぞ、アークマイン!」
アルトワークスの総統補佐である、アーマット様が叫ぶ。
いつもの代わり映えの無い台詞だ。
だが、それゆえに安定感があるともいえる。
ただ、最近ではこの台詞にも慣れてきたのか、何かアクションを加えようかと考えているようで、鏡の前でポーズを決めている。
そんな練習風景を目撃したとき、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、「このことは二人の秘密だぞ!」って可愛く言われたが、可愛らしさの欠片も存在しない顔で言われても・・・
むしろその恥ずかしい顔を鏡で見ることを進めたくなったのは、ここだけの話だ。
「良し!来い!」
今日は、やけにやる気に満ちているなアークマイン。
何か良いことがあったのだろうか?
そういえば、彼の後ろの方に普段見慣れない女性が立っている。
もしかしたら、彼女に良いところを見せようというつもりなのだろうか?
いや、隅におけないね。
その子は身長150cmくらいの小柄な女の子だ。
結構可愛い。
ボブカットっていうんだっけ?あの髪型。
小さいのに出るとこも出てるし、これは本気で狙っているのか?
ちょっと、いや、かなり羨ましいぞ、アークマイン!
「おお、今日はやる気のようだな。だが、そんな貴様の命も今日までだ!こいカマキラス!」
「シシェー!ようやく俺様の出番だぜ!」
今日の怪人はカマキラスさんだ。
カマキリの力を持った怪人で、その手についた鎌で何でも一刀両断っていう、アルトワークスの中でもエース候補と言っていい実力の持ち主だ。
だが、そんな彼を見るアークマインの表情はあまり良いものではなかった。
なんだ、怯んだのか?
それとも、もしかしてカマキリ苦手とか?
そんなタイプには見えないだけに、意外な気がするが、どうなんだろう?
「おい、もしかして今日の相手はそいつなのか?」
「うむ、その通りだ。これだけの実力者を連れてきたのだ。ありがたく思うといい。」
「いや、今日は虫型の怪人は無しだと、前に言っておいただろ!」
「はて・・・そういえばそうだったような・・・」
「テメー!ふざけてんのか!」
いったいなんでこんなに怒っているんだ?
第一、虫型の怪人は今日は止めろって?
アルトワークスに所属する怪人で1番多いタイプなんだけどな。
あ、カマキラスさん呆気に取られてる。
やっと順番回って来たって張り切ってたのに、こんな仕打ちはひどいよね、確かに。
それに、ヒーローの事情など無視して現れるのが、悪の秘密結社の特権というものじゃないか。
アークマインは後ろを指差し、
「あの子が虫苦手なんだよ。だから今日は他のタイプにしてくれって頼んだじゃねーか!ふざけんな!」
「まぁまぁ、そんなに怒ることでも無いだろう。」
「約束たがえといて、なんだその言いぐさは!」
「えっ、その、済まない。」
いやいや、アーマット様。
そこで謝らないでよ。
別にこっちは悪いことした訳じゃないでしょ。
いや、悪いことしようとしてる組織ではあるけど。
それに、むしろファインプレーでしょ。
決してモテない人間のひがみじゃないよ。
いや、本当だよ。
「うーん。そうしたらどうしようか・・・」
「キキー!いや、アーマット様。我々は悪の秘密結社な訳ですし、ヒーローの都合に合わせる必要はないんじゃないですか?」
「なんだとテメー!戦闘員のくせに何言ってやがる!そんなこと言ってると、合コンつれてってやらねーぞ!」
「いや、それとこれとは違うでしょ!」
「戦闘員君、キキー!抜けてる!」
思わず規定で決まってる「キキー!」という頭の言葉を忘れてしまっていた。
でも、ひどいのはアークマインの方ですから。
俺の方は、何も悪くないですから。
約束していた話を違えようなんて、そんな非道許されるわけがないでしょうに。
「シシェー!俺様を無視するなー!あ、虫だけに無視するなとか・・・あんまり面白くないか・・・どう思う?」
「キキー!いや、カマキラスさん。もう少し空気読んでください。」
「おう、そうだカマキリ男!お前下らない洒落を言ってんじゃねーよ!」
「え?今の駄目かな?私は面白いよ?」
アーマット様以外、あまり受けなかった洒落を言ってしまったカマキラスさんを、俺とアークマインが攻めたてる。
勿論、言葉でだ。
「もういいよ。今日はお開きにしようぜ。戦闘員!お前もその方がいいだろ!」
「キキー!その意見に賛成!」
「いや、君、合コン行きたいだけでしょ?」
「キキー!行きたくて何が悪いんです!」
「いや、開き直られてもね。カマキラス、どうしようか?」
「いや、アーマット様。俺様に聞かれても・・・それに出来るなら俺様も合コン呼んで欲しいぜ!」
その答えに、アーマット様は呆れた表情を見せる。
「はぁー。仕方ない。今回は無しにして、仕切り直しにしよう
か。アークマイン、後ろの女の子帰ろうとしているから、早く行ってあげなよ。」
「何!」
「キキー!きっと合コン発言聞かれて怒ってるんですよ。頑張ってくださいね。」
「くそっ!他人事だと思って!」
そう言ってアークマインは去っていってしまった。
後に残された俺達はどうしたらいいだろうか?
そっと、アーマット様を見ると、肩を落としていた。
「まぁ、今日は仕方ないね。帰ろうか・・・」
こうして、今日も街の平和は守られた。
あ、遠くでアークマインがビンタ食らってるのが見えた!
八つ当たりされる前に退散しなくちゃ!
カマキラス
両手にある鎌で10mmの鉄板ですら軽く断ち切る。
また、短距離であれば空を飛ぶことが出来る。
書いてはみたものの、グダグタ感がなんとも言えない・・・
これでいいのかな?
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今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。