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キャラメルマキアート

作者: 空牙セロリ

ほろ苦くて甘い。


十数年もの片想いは十数分前に十数文字の言葉によって砕け散った。


自分でも呆れるくらい長い片想いで、よくここまで思い続けたと思う。

私はもうすぐ三十路だ。もっと早くこの想いを伝えていたら違う人生を歩めていただろうか。今考えたってわかるわけがない。


だけど、不思議と砕かれたこの片想いに対する絶望は無い。絶望感よりも凝りが解消されたようなスッキリ感がある。

もしかしたら心のどこかで気がついていたのかもしれない。この片想いは報われないということを。


後悔があるとしたらただの一つ。


「もっと早く伝えればよかった」


ただそれだけだ。


日が短くなったため、まだ早い時間だが夕日が喫茶店へと射し込む。穏やかなBGMを背景にほろ苦くて甘いクリーム色の液体をゆっくりと流し込んだ。

温かい液体は今の季節のように冷えた心に春のような暖かさを持ち込む。

今はただ、その暖かさに酔いしれたい。


人が少ない店内はとても静かで、片想いと共に過ごした青春の場ーー学校を思い浮かべる。恋を自覚したあの時だ。


夕日に照らさたあの人を見た時からずっと好きだった。

夕日に輝くあの人が好きだった。


ーー始まりは夕日で終わりも夕日だった。


不意に嗅覚がほろ苦くて甘い匂いに反応した。

砕けても尚、陰鬱と心に残り続ける想いにひとり苦笑いをする。


もう終わったことだ。うじうじ考えるのは自分らしくない。


ーーだけど、まだ。もう少しだけ、感傷に浸っていたい。


片想いのようなほろ苦くて甘い液体を飲み終わったら前を向こう。新しい自分になって新しい恋を見つけよう。

大丈夫。私はまだ歩ける。前を向こう。



さいごの一口を飲み込んで私は店を出る。



胸を張って背筋を伸ばし、堂々と前を見据えて歩こう。



新しい恋を始めよう。



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