第三話 待ち合わせ
「……ああもうっ! なんなんだよ! 」
夕方、ボクはとりあえず走っていた。
──……とりあえず実家に着いて一時間くらいくつろいでいたら、いきなりじっちゃん、ボクに『そういえばの、たしかお友達とかがかんげいかい開いてくれるらしいぞ? 』と言ったのだ。……しかも、その時点で待ち合わせ時間まで残り10分。
「ぬぁんで早く教えてくれなかったんだよぉぉぉっ! 」
ボクは走りながらそう叫んだ。
──────────
「……ゼェゼェ……つ、ついた……。」
五分遅刻したけど……まあ、大丈夫だよね?
そう考えながらボクは会場であるお好み焼き屋の中に入る……すると。
──……ありり? 誰も……いない?
「おっ? お前さん……三郷の嬢ちゃんかい? 」
そう声を掛けてきたのはお好み焼き屋の店主のおっさん……、昔と何も変わってない、……頭頂部の毛以外は、だけど。
「は、はい。お久しぶりです! 」
とりあえず挨拶する。すると店主さんはガハハと笑いながらこう言った。
「なーにかしこまってんだよ。楽にいけよ楽にな? ……にしても、べっぴんさんになったなぁ、見違えたぜ! 」
「……了解! 照れるなぁ……。でもおっさんも変わってないね? 」
──……ハゲた事以外は。と心の中でこっそり付け加える。
──って言うか……。
「……あれ? おっさん今日歓迎会じゃ無いの? 」
そうボクが聞くと、おっさんはキョトンとした顔で、
「なぁーに言ってんだ? 歓迎会までまだ一時間もあるぜ? 」
……と、言ったのだ。
「……えっ。 」
……じゃあ、ボクの全力疾走の意味って……。
「……ほれ。喉……乾いただろ? 」
……へなへなと座り込んだボクにおっさんはコップに入った水を渡してくれた。