少女たちの何やかんや
お久しぶりです山崎世界です
すみません間が空きすぎですが何とか頑張っていければと…
「私がツッコミ役になっているのはちょっとおかしいと思うんだ」
先の騒動からようやくひと段落し、宿屋でまったりとしていた時である。唐突にエルレイアは呟いた。
「何を言ってるのかわからない」
「はいそこ!不思議そうな顔をしなーい」
びしっと指をさした先にはへリエルがいる。まるで日常のようにヨシュアの膝の間に座り込み腕を取っている。
「ツッコミ…というのは…うん。エルレイア、それは…僕に出来ることかどうかは分からないけれど教えてほしい。悩むことすら難しい僕だけど君達が僕にくれた何かを返していくこと…それが最初に出来ることだと思うから」
「ぅ…うんいやそこまで真剣に悩んでいるというわけではないのだよ。君の世話を焼くのも嬉しいしね…ただねぇ…」
「お食事の用意が出来ました」
そう言って入ってきたのはリリスだ。さすがに日常生活に支障を来たすウェディングドレスは脱いでいる。今は別に手作りしたメイド服を着ている。
『皆様のお役にたちたいのです』
そう言ったリリスは自らの特技を活かしたいと言って、一晩でメイド服を裁縫してきた。そして身の回りの世話をするために、ヨシュア達に三つ指を突いた。
ヨシュアだけでなく、エルレイアたちに対しても敬意と親愛の情を傾けている。それは間違いない。
「あ、こ、困りましたね。ヨシュアさんの両手がふさがっています」
「よーしヘリエルー早く手を離すといい」
「うんそうね仕方がないわね」
「ですよね…だからヨシュアさん…あーん…」
「え…と…」
「はぁ…ヨシュア、こういう時は口を開けるといい」
「ん?んー…」
「…あーん…ふふふ」
その頬に手を添えるようにして、ゆっくりと口元に千切ったパンを運ぶ。
ただそれだけで、リリスは笑みをこぼす。まあ少しだらしがないかな、とエルレイアは内心苦笑する。
「ふぇー…ふぉ」
「あー…ヨシュア、口の中にあるものは食べてしまおう」
どうすればいいのか、と戸惑って口を開けたままだったヨシュアに促す。
ヨシュアはもぐもぐと口を動かした。少し欠片が大きかったのか頬を膨らませる様はどことなく和んでしまった。
「というわけで私がツッコミ役になっているのはいささかどうかと思うわけだよ」
「あら続けるつもりなの」
「す、すみませんエルレイア様、私にもう少し常識というものがあればいいのですが」
「リリスは無理をしなくていい…何というか君には申し訳ないとかそういうことを考えずにのびのびとそのままの君でいてほしいんだ…そう、だよね?」
ヨシュアは周りを見遣る。
「そうだね…女を捨てたつもりは毛頭ないけれど、何というか…リリスの『年相応の少女らしさ』とでも言えばいいのかな。そういうのは、私達の中ではとても貴重なものだと思うからね」
素敵な恋をしたいとか、好きな人とふれあいたいとか。そんな世界に容易く蹂躙されてしまうような他愛のないものが、世界にきっと必要だとエルレイアは考えている。
(まあ…一番そういうのが必要なのはヨシュアなのだろうけど、ね…)
魔王の器としての可能性を否定するため、魂を削ぎ落された。恨み辛みを吐き出さないだけではなくて、他愛のないふれあいにすら意味を見出せない。それを遠くの出来事のように感じていても、それはきっと大切なものなのだろうと。同情も無く慈愛のように接してしまう。痛々しいが、辛うじてそんな風に世界と繋がっているから、彼にとって彼女は大切な存在になるのだろうとそう思う。
「よくわかんないけどぼけやくでがんがんめだちたいってこと?」
「いや別にそういうポジションに特に憧れがあるというわけではないよ。何だかんだでこうやって皆の世話を焼くのも好きだしさ。たださぁ…たまにさぁ…こうあれだよ…あれ、どれだっけ」
「…なるほど」
言葉も曖昧に、もじもじと指を突き合わせるというエルレイアの珍しい態度にしかしヘリエルは深く頷き、皆まで言うなと言葉を切る。
「そういうことならちょっとデートでもしてくればいいわ」
「なん…だと…いやいやそんな場合じゃないから」
「前々から思ってはいたけれどあなたって割とクソ真面目ね」
だからこそ勇者エルレイアという人物は解せない…と改めて考える。だが、そこら辺割とどうでもいいと切って捨てるのがヘリエルという少女である。
「何かしら? それともしたくないとでも」
「そんなことは言ってない」
「…いい? エルレイア」
ヘリエルはひょいとヨシュアの膝から降り、少し離れた場所でエルレイアに手招きする。
「私は何もあなたのためにこういう提案をしているわけではないわ。ヨシュアのため…それに、リリスのためよ」
「リリスの?」
「ええ。どうにもあの子には使用人根性とでも言えばいいのかしら…あなたや私よりも先んじて何かをしようとしないわ」
リリスたちに聞こえないようにしたその言葉に、エルレイアは唸る。それは、少なからず感じていたことだ。
リリスは、自分たちに恩を感じすぎている。メイド服に身を包み、自分たちの世話を甲斐甲斐しく焼こうとしてくれるのもそうだ。彼女がヨシュアに手を伸ばす時、どうしてもエルレイアやヘリエルたちを頭に置いて、一歩引いてしまう。
「それで? 彼女のコンプレックスを解消できるというのかい?」
しかし、それが分かっていてもどうしようもないと考えていた。それは、リリスを今まで形作っていたものなのだから。少しずつ矯正していくしかないのだと思っていた。
「そこまでは言わないわ…ただ、誰かが既にやっていることならきっとリリスもこれくらいは許されるはずだって、そんな風に考える」
しかし、リリスはそれでもやはり年頃の少女で。少しだけ自分をだまして自分にご褒美をあげたくなる時もある。
先ほどの食事の時もそうだ。あれも、両手がふさがってる、なんて言い訳しながらにやにやと頬を緩ませていたのだ。
「なるほど…君がことあるごとに色々と甘えているのもそういう…」
「?」
「ごめんなんでもない」
ヘリエルという少女。それもまたヨシュアに似た異常だった。
世界のためにヨシュアを殺すことよりも、ヨシュアのために世界を救う。そう決意したからこそ今こうしている。
しかし、ヘリエルにとって、天秤にかけた『世界』という重りは、とてつもなく軽いのだ。彼女にとっての生は、ヨシュアを殺すためのものだった。ただそれだけ。世界のためにヨシュアを殺すという発想そのものが無かった、と言っていい。
(そう…ヘリエルはまるでヨシュアの為に生まれ、そして生きてきた)
だからこそヨシュアへの依存度が人一倍高いのだ。
「まあいいさ。そういうことであれば遠慮はしないよ…ふ………ふふふふふ」
さあ何をしようか、と。エルレイアは笑みを零しているのを自覚した。
もう少し書ければと思うんですがまあ…色々ありまして…
こうして何とかかんとかこぎつけられたのを機に再開していきたいなと思います
伏線らしいもの無駄にちりばめてたりいろいろ面倒くさいなぁ…と思われるでしょうが何卒ご容赦を…




