表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫が鳴く  作者: 鵜狩三善
2/2

2.

 彼女との電話を終えて、僕はベッドに身を投げ出した。

 どう解釈するべきだろう。


「猫、飼ってる?」


 以前、彼女にそう訊いた事がある。答えは「嫌だよ。好きじゃないもの」だった。


「それにまだ一人暮らしだし。私がいない間、部屋に一匹だけって寂しくない?」


 そうも言っていた。

 でも僕が脈絡なくそんな事を尋ねたのは、電話越しの彼女の声に被って時折、猫が鳴くからだった。

 なんだか、嫌だ。

 靴に入り込んだ小石のように、こつこつと何かが心に当たる。嫌だ。気分が悪い。


 ──目隠しになってくれる木が多いから、なんだろうね。


 なってくれる、って言い方、おかしくないだろうか。

 それは目隠しを利用して何かする側の言い口ではないのか。


 ──鳴き声からしてまだ仔猫かな、また捨てられてるのかなって思って、ちょっと覗いて見たの。


 猫好きなら分かるのかもしれない。でも僕には仔猫と成猫の声の聞き分けなんてできない。猫を好きじゃないという人間に至っては、ましてやだと思う。

 なのにどうしてひと聞きで分かるくらいに、仔猫の鳴き声をよく知っているのだろう。

 そして。


 ──にゃあ、にゃあ、にゃあ。


 大家のお婆さんの話の後に、やはり猫が鳴いていた。

 そんなふうに、今日交わした会話だけでも気にかかる点がある。それらはこつこつと、僕にかき乱して鳴り止まない。

 疑いの目で見るから、暗がりに鬼は生じるのだという。杞憂だろうと思いたかった。きっと天は落ちてこない。そう思いたかった。

 枕元の携帯が鳴った。彼女からのメールだった。


『これからランニングに行ってきます。今日は変なカラスに会わないといいんだけど。

 ともあれ今度のデート、楽しみにしてるね』


 どこかでまた猫が、にゃあと鳴いた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ぽちりとやっていただけましたら、大変励みになります。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ