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猫が鳴く  作者: 鵜狩三善
1/2

1.

 もしもし? 今、ヒマかな?

 うん、ちょっと聞いて欲しい事があって。えー、違うよ、そういうのじゃないの。

 悩みとかじゃなくて、言うなれば怪談かな。


 ほら、うちの近くにさ、公園あるでしょ? うん、そう、そう。その国道沿いの公園。あそこね、捨て猫が多いんだ。目隠しになってくれる木が多いから、なんだろうね。

 そういうふうに捨てる人が増えてくると、公園の管理人さんがするのかな? 誰だかやるのかは知らないけど、「捨て猫禁止」みたいな立て看板作るじゃない。すると今度はそんな看板があるから「ああここは捨て猫が多いんだな」「じゃあ自分が捨てても平気だな」って思われて、ますます捨て猫が多くなるんだって。悪循環だよね。


 で、ほらさ、私あの公園によくランニングに行ってるじゃない。

 うん。そうだよ。続けてるよ。ストレス解消にもなるし。え、あなたもうやめちゃったの? もー、ふたりで続けようって行ったのに。罰として今度いいところ、奢りだからね?

 ……嘘、ほんとに? いいの? 冗談だったのに。でも行ってみたいところあったから、嬉しいな。


 あ、話逸れちゃったね。

 とにかくそのランニングの途中、その日は日曜日だったから走ってたのは夕方なんだけど、茂みの方から猫の声が聞こえたのよ。「にゃあ、にゃあ」って。鳴き声からしてまだ仔猫かな、また捨てられてるのかなって思って、ちょっと覗いて見たの。

 そしたらね、仔猫の声で鳴いてたの、カラスだったのよ。

 違うの。鳴き真似とかじゃなくて、本当に猫そのものなの。咄嗟でちゃんとは数えてないけど、数匹? あ、数羽か。とにかくそこに居たカラスが全部、猫の声で鳴いてたのよ。

 いきなり私が顔を出したから、カラスの方もびっくりしたんでしょうね。やっぱりにゃあにゃあ鳴きながら逃げてったわ。


 もう、笑わないでよ。嘘じゃないってば。話で聞くと大した事ないかもしれないけど、あの不気味さは体験しないと分からないんだから。

 でもね、まだ終わりじゃないの。

 あんまり気味が悪いかったから、こないだ大家さんに会った時、なんとなくその話したのよ。「こんな事があって、びっくりしましたよー」って。世間話のつもりで。

 そしたら大家のお婆ちゃん眉をひそめて、「猫を殺すからだよ」って言うのよ。

 そうなの。全然繋がりが見えないでしょ? こっちは「え?」ってなっちゃうじゃない。

 だけどお婆ちゃん、当然みたいに続けるの。


「捨てられているのは仔猫だろう? 自分の身も守れない弱いもんだ。それを悪いカラスは悪戯半分でつつき殺すのさ。だけどね、そんな非道をすれば猫が憑く。だからこの辺りのカラスは皆、にゃあにゃあと鳴くんだよ」って。


 ──にゃあ、にゃあ、にゃあ。


 びっくりしたわよー。いきなりそんな昔話みたいなお話になっちゃって。 

 うん、お婆ちゃんは信じてるみたい。そういう事あるんだ、って。もちろん、本当かどうかは知らないけどね。

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