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羽化

作者: ある

今朝は妙に蝉が張り切っている。確かおととしの夏の夜のことだったと思うけれど、生まれて初めて蝉の羽化の瞬間に立ち会った。近所のコンビニへ向かう途中、何気なく公園の植え込みのコンクリ-トを見やると、そこにいた。今まさに、油紙のような殻を破り、徐々に徐々に白い身体をあらわにしていくところで、その様子を、興奮しつつも息を呑んで見守った。身体を揺するようにして、少しずつ姿を現したほの白い翅は花弁のようで、あの鎧の様な屈強な身体になるのだとは、まるで思えない程に儚げだった。羽化を済ませ、殻からまるきり這い出た弱々しい身体は力強く翅を伸ばし、時間の経過とともにしなやかな身体となって、抜け殻を後にした。あの数十分間は、私の人生の中でも指折りの美しい時間だった。

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