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【全2話】悪役令嬢は胡桃を割り、兄は高笑いで待ち受ける 〜お兄ちゃん気を利かせたのに、この仕打ちです〜  作者: 九十九沢 茶屋


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2/2

悪役令嬢へのプギャーな手紙と待ちぼうけされる兄

真悠(まゆ)

 

 よう、久し振り!

 元気にしてるか?!

 いや、お互い死んだんだから、元気かって聞くのもちょっと変か。まあいいや。

 

 俺はお前の兄の秀明(ひであき)だ!

 

 薄々気が付いてると思うけど、俺達(・・)の乗ってた車が、両親の墓参りの帰り、車線超えた車に正面衝突させられて、そのままお陀仏になって、ここに転生してるんだぜ!

 

 で、お前と作ってたこのゲームに、俺は魔王として転生したんだけどさ、

 

 

 

 お前、悪役令嬢に転生してたんかよーーーーーwwwwww

 プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!

 

 

 婚約破棄後、そっから俺達がイベント作らないまま放置していた、あの悪役令嬢に、悪役令嬢に!!!

 

 ヒーヒッヒッヒ!! 

 それに気が付いた時、部屋で転げまわって笑っちまったぜwww

 

 せっかくだし、俺の方でAIモードのプラグイン作って追加してやったから、イベント勝手に進むようにしておいたぜ! 感謝しろよな!

 

 礼はモ○ゾフのレアチーズケーキと、鹿児島銘菓のか○かん饅頭と、塩ちんすこうで頼むな!!

 

 え、俺がどこにいるか分からない?

 

 俺は魔王なんだから、当然魔王の城にいるに決まってるじゃん?

 強い敵をガンガンに配置してあるからさ、来れるなら来てみろ。

 お礼の品来るの、気長ーに待っててやるよwwwwww

 

 あ、ちなみに、このゲームの管理権は俺だけにして、パスワードも変更済みだから、お前はイベントいじれんから、敵の配置変更とか出来ないからな!

 

 じゃあのww』

 

 

 

 

 兄さんんんんーーー!!!!!

 

 それらの名産品、この世界じゃ買えないでしょうがああああああ!!!!!

 

 この世界でどうやったら、それらの品を買えるっちゅうねん!

 価格的には買えない物を指定されたと言うのに!!

 

 あと買えても、遠かったら食べ物傷んじゃうでしょうが!!!

 魔王なら傷んでてもお腹とか問題無いんです!?

 

 いや、そこじゃないのかも知れないけど、突っ込まずにはいられなかったわ。

 

 まぁ……とは言え、お土産はともかく、動けるようにして貰ったのは感謝だけれど。


 兄は前世プログラマーだったから、ツクレールのプラグインとか作ってフリー配布もしていたものね。


 あ、プラグインてのは、ツクレールのゲーム内の動作とか規格を自由に変更する事が出来る、追加のプログラム。カスタマイズをしてると思ってくれればいいかな。

 

 

 

 

 

 そう、私と兄は前世、このRPGツクレールでゲームを共同で作っていたのだ。

 元々私も兄もゲーマーで、同人誌もそれぞれ出したりもしていた程度には、オタクの部類。

 

 当時の私が大学1年、兄が社会人の23。

 

 両親は3年前に事故で亡くなったわ。夫婦で映画観に行ったその帰りに、やっぱり車との事故で。

 

 持ち家があったのと保険等で、そのまま私と兄は家に住んでて、日々暮らしていってたの。

 

 

 

 で、そんな兄が『RPGツクレール』を購入してきて、ゲームをよく制作しているのを見てきた。大半はエターなってた(未完成の意味だよ)けれど。

 

 たまにネタ出し求められたりしてて、私もアイディア提供して話し込んでく内に、もう共同作業でいっか! となって、今いる世界のゲームだけは、共同で制作してきてた。

 

 面白いか面白くないかは、正直微妙な出来だったかもだけど、兄の親友は楽しそうに遊んでくれてたりもしたんだよね。

 

 

 そんな毎日をすごしながら、両親の命日に墓参りをして、帰りにどこかで食事でもして帰ろうとなったんだけれど。

 

 そこで車に衝突されて、まぁ死んじゃったわけだ。

 

 

 まさか二人してこのゲームに転生するなんて思わなかったけどね?

 いや、普通思わないでしょ!

 

 てかなんで兄さん魔王なの。

 私が魔王になりたかった……!!

 解せぬ。

 

 

 

 

「……エリザベス様?」

 

 ハッ!!

 

「いかがなされましたか?」

「いえ、何でもないですわ。ちょっと物思いにふけってしまいましたわ」

 

 ホホホと笑ってごまかすと。

 左様ですかと、ハハハと笑って返事が返ってくる。

 

 テンポいいな、この便利屋の右腕さん。

 

「それで、我が王への返事は、先程の言葉でよろしいのでしょうか?」

「え? あぁ、首を洗って待ってろね。えぇ、それで構わないわ」

「かしこまりました。では、その様にお伝えさせて頂きます」

 

 コンラートはそう言うと、横を向き虚空に向かって、軽くフウッと息を吹くと、一羽の鴉が揺らめきながら現れた。鴉はそのままバサッと羽ばたいて窓もすり抜けていき、あっという間に飛び立って行ってしまった。

 

「あら、貴方が伝えに行くんじゃないの?」

「そのつもりだったのですが、貴女と一緒に城へ戻る事にしようかと」

「なんで?」

「魔王の城は王が、それはもうあらゆる所にトラップを仕掛け、イベントボスを配置し、一筋縄では行かない状況となっております」

 

 うっわぁ……。

 

「そんな所に、妹君とはいえ凸しようものなら、すぐにゲームオーバーになるのは否めませんので。私がいればその辺りの面倒事は、避けられると思いますよ。あと単純に、王の作ったイベントのデバック作業(バグ探し)の担当が私なので、すぐに戻ると社畜になってしまうのです」

 

 便利屋コンラートさん、そこまで社畜人生、いや魔生なのか!

 

 デバック作業は、私もよくやらされたから覚えてるわ。

 

「あの方、好きにあちこち手を出してイベントを増やしたり、国や街を作られたりするから、中々作業量がキツいのです。それなら、暫くは貴女と旅をして作業から逃れてしまおうかと思いまして」

「いいの? そんな、簡単に戻らない事を決めちゃって。兄とは言え、魔王なんだから、処されたりするんじゃないの?」

「いえ、きっと私がこう行動する事も、王は予想済みだと思います。だから私を貴方の所へ伺わせたのでしょう」

 

 あぁ、ブラック過ぎの環境を把握していたから、休暇を敢えて与えてやったって所なのかな。

 

「それに私が一緒の方が便利ですよ? この世界の地理、国や街や歴史、モンスターの出没地域など全部頭に叩き込まれていますから」

「それは確かに便利ね」

「そうでしょう、そうでしょう。我が王に頼りにされてるという自負はありますよ」

「……頼りにされてるのに、戻らなくていいの?」

「たまには、少しはご自身で動く事も必要でしょう」

 

 右腕で頼りにされてるという判ってて、この対応!

 この魔族強い。

 

「冗談はともかく」


 冗談なんか。


「私が貴女と旅をしたいからというのは、本当ですよ?」

 

 パチリとウインクをされ、私はその仕草に何故か心臓が跳ねる。

 

「な、何を言って」

「おや、私のウインクで照れて頂けるとは、嬉しいですねぇ」

「揶揄わないで」

「揶揄ってなどおりませんよ? 本当に嬉しいだけですから」

「そ、そうなの……」

 

 なんで私の反応にそんなに喜んでるのかしら……。

 そこで考えて、私ははたと気が付き「あ、まさか!」と大きく声を出してしまった。

 

「私を懐柔して、旅の途中や最後で魂を取られるとか、そう言うオチだったりとか!?」

「っ……〜〜〜〜!!」

 

 …………。

 ちょっと。

 なんで、そんなテーブルに突っ伏してまて、笑い堪えてらのよ!

 笑い堪えられてくなくて、「ぶくくくく」と声漏れてるわよ普通に!

 

 私が唇を尖らせてるのに気が付き、ヒーヒーとまだ笑いを堪えながら涙を流してはいるけれど、それでも「すいません」と謝ってから、「その様な事はしませんよ」と話を続けてきた。

 

「召喚された訳でもないですしね。私が貴女の魂を必要としてるとか、そんなのは全く無いから安心してください。純粋に私の意思ですよ」

「あなたの意思」

「えぇ、まちがいなく」

 

 まだ、笑いを堪えてるのか、時折目元を拭いながらも、優雅に紅茶を啜った。

 

 嘘を言ってる感じじゃないよのね。

 何で私と一緒に旅をしたいと思うのかしら?

 

 ???

 

 ……………。

 

 うん、考えても分からない! 

 なら考える事ではないって事ね!!

 

 それにメリットを考えれば、兄さんが弄って、世界がどう変わってしまったか分からない、このゲームの世界の情報が最初から把握できるのは助かるわ。

 手元に公式ガイドブックがあると言う事だもの。

 悪くない、悪くないわ!!

 

 私は一人で、うんうんと頷いた。

 

「おや、その様子ですと、ご一緒して頂けるという事でFA?」

「FA言うなし。でも、一緒に旅に出るのでお願いするわ! 魔王(兄さん)のいる城まで案内よろしくね!」

 

 私の応えに、コンラートはニッコリと、やっぱり裏切りそうな糸目をより細くさせた笑みで返して来た。

 

 

 よーし、行くわよ! 

 兄さん、首洗って待ってなさいよね!!

 

 私は気合を込めて、おやつ用に用意されていた胡桃を、パキンと片手で割ったのだった。

 

 

 

 

 

 *˖⁺─────────⁺˖*

 

 

 ──魔王城

 

「お、やっと旅立つんだな。ゆっくり旅して来いよー。せっかく()()()()()()()()()()()()! な、隆之(たかゆき)

 

 魔王は二人が旅立ったのを見て、満足げに笑い、前世で親友(・・)だった者の名前を、コンラートを見ながら呟いた。

 

「さーて! アイツ等が城に来た時ように、ウェルカムドリンクと食べ物用意して、それから、ここまでたどり着くのが大変なダンジョンを追加して作るかーー!!」 

 

 そして、楽しそうにダンジョンを作る作業に戻る魔王(秀明)の姿があったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *˖⁺─────────⁺˖*

 

 おまけ。

 

 

 兄さんが楽しそうにダンジョンを凶悪に作り替えてる頃、私達は旅をしているんだけど。

 

 その途中で、コンラートの正体が判明した。

 

「えーー!? コンラートって、東堂先輩なの!?」

 

 東堂先輩、東堂隆之さん。

 先輩は前世で私が付き合っていた彼氏であり、兄の親友だ。

 

 ええええええ!?

 

 いや待って、そうだ思い出した!!

 両親の墓参りの帰り、先輩と合流して、三人で食事に行く途中で事故にあったんだった!!

 

「えー! 何で言ってくれなかったんですか!」

「いやー、いつ、気付くかなと思ってつい見守ってた」

「性格も先輩じゃ無かったし、外見とかも全然違うじゃないですかー!!」

「デザインは、真悠ちゃんも秀明(ひで)も、皆ツクレールのキャラになってるからね。性格はまあ、一応魔王の右腕の立ち位置だから、それっぽさ? を出してみた」

「うわあああああ、私、先輩に裏切るキャラだとか、恥ずかしこと言っちゃってた……」

「あれは、ビックリしたなー。でもそう来るとは思わなかったから、凄い笑い堪えてたんだよ」

「ふえええ、穴があったら入りたい」

「はい、どうぞ」

「魔法で! 穴を! 掘らないでええええ!!!」

「あはははははははは!!」

 

 

 

 

「──さて、それじゃあ改めて」

「え?」

「俺の事も思い出したなら、こっちの世界でも付き合ってください! そして出来たら結婚前提でお願いします!!」

「えええ?!」

「元々、前世で付き合ってる時も、いつか伝えられたらなとは思ってた」

「そ、そうなんですか? 私はそこまでは意識してなかった……」

「うん、だから真悠ちゃんが二十歳過ぎてから伝えようと思ってた。そこで少しでも意識してくれたら良いなぁって」

「でも兄さんはどうするの? 魔王になってるのよ? 世界征服したらどうするの?」

秀明(アイツ)が本当にすると思う?」

「………兄さん、趣味はクラファンと献血。学生時代は園芸部員。

 無いわね、無いわ。世界征服とは程遠いわ兄さん。

 悪ノリが好きで、成人しても中二病ではあるけど、善意の塊に近い兄さんが魔王に転生したからと言って、世界征服できないわね。

 よし、先輩、結婚前提でお付き合いしましょう! あと、どうせなら私、新居建てるならはきれいな湖水のほとりがいいわ!」

「おお、ブレネリ! いいね! 新しく土地を設定して作ろう!」

 

 

 そうして私達は、湖水のほとりに新居を構えるために、転移魔法を使い、その場を後にした。

 

 

 


 

 

 ──その二人を、魔王城で見ていた兄

 

「ええええ、ちょっとーーー!?」

 

 ジタジタ。

 

「二人がくっついたのは嬉しいけれど!!! ちゃんと魔王城まで来いよ!

 お兄ちゃん寂しいだろおおおおお!!」

 

 

 魔王城内で、ジタバタしなが魔王の叫ぶ声が響きわたっていったのだった。

 

 

 

 とは言え、二人とも兄を親友を本当に放置する気は勿論なかったので、新居を魔法で創り出した後は、すぐに兄に会いに行ったし、なんなら魔王も、ちょくちょく新居へと、二人に会いに遊びに行く姿があったとかなんとか……。

 

 

*.·★ End ★·.*



 

 この話は、軽くサクサク読める様にと、キャラ達のバックグラウンド等は、ほぼ書かず進めました。

 

 (書いたのは死んだ理由と、両親が死んだ事位かな?)

 

 

 兄が何で国を増やしてるのかとか、隆之は死んだ事をどう思ってるのかとか、その辺りも考えてたのですが、重くなるし絶対必要な情報でもなかったので、カットしました。

  

 

 兄は難易度の高いダンジョンを作ってますが、そもそも魔王の右腕が一緒にいる訳なので、モンスター達は襲って来ないし、なんなら転移魔法で魔王の前まで行く事が出来るので、ノリで作っただけです。

 

 親友も勿論、それは判ってるので、凶悪なダンジョン作られても気にしないのでした。

 

 後、三人揃ってから、遊ぶ為に作ったと言うのが大きいです。

 

 

 

 

 

 RPGツクレールは、元ネタは勿論RPGツクールです。

 私自身がツクラーで、実際のRPGツクールでゲームを作ったり遊んでる側なので、その辺りのネタを楽しく入れられました。

 

 専門用語プラグインとかもあるので、合間合間に主人公に説明させてみましたが、いかがでしたでしょうか?

 

 なお、プラグインは本当に便利です。

 

 

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

 ☆や感想、レビュー等がると、励みになり、とても嬉しいです!

 

 それではまた、違う物語で会える事を!•*¨*•.¸¸☆

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