1.異世界妹
百年ぶりに会った女の敵を睨み付けるような女神に、私はその美しさに口説き文句を並べてしまった。
「あなたは、ふざけた罪で死んだのです」
目の前には神を名乗る女性が?私に呆れた表情で淡々と口上を述べる。
私の死因は、異世界ハーレムを夢見て、スキップしながらトラックに突撃したことである。
「そんなにハーレムを作りたいなら、詰み女ばかりの異世界へ行きなさい」
そんな異世界があるわけがない。どうせ冗談だろ?何かのドッキリを仕掛けられたんだなと納得する。
この女神は、全く目も合わせてくれない。恐らく照れ隠しだな。
「では、異世界ハーレムを満喫すればいいですよ。行ってらっしゃい~」
女神改め、ツンデレ系美少女は、黒い渦を何もない空間に出現させた。
「おい、ちょっとまてー」
私はその黒い渦に吸い込まれて、目を覚ますと土の上で寝ていた。
「ここはどこ?私は誰?」
見慣れない植物と森特有の匂い、マイナスイオンを感じる。
「お兄ちゃん待ってたよ」
聞き覚えのある声に振り返えれば、そこに立っていたのは?
「えっ!嘘でしょ?」
私はその人物の顔をマジマジと確認すると、同居している従妹のハズキの顔がそこにある。
「そんなにジロジロ見ないでよ、照れちゃうからさ」
これは幻覚と幻聴だろう。うん、絶対そうだ。
そしたらハズキは、幻じゃないとアピールを始めた。
黒髪のショートカットでデニムスカートとパーカー姿、今朝見たハズキの服装と同じだ。
「何でいるんだ!」
ハズキを掴みぐらぐら揺らすと、豊かな胸が揺れる。
「揺らさないでよ~言うから、言うからさ」
ハズキは、観念したように語り出す。
「アタシね、お兄ちゃんと同じトラックに轢かれたんだ」
同じトラックに!どゆこと?
「お兄ちゃんの後ろにダンボールあったでしょ?」
思い出してみれば、何かやたらでかいダンボールがあったような?
「アタシ、そのダンボールの中にいたからさ」
ハッ?意味がわからん。何でダンボールの中に?
「何でだよ!」
ハズキは、身振り手振りで説明を始めた。
「お兄ちゃんかんさ…道路の交通量調査のアルバイトしてたんだー、そしたらお兄ちゃんがトラックに」
コイツ、アルバイト何てしてたっけ?
それに何故、ダンボールに入って?日焼け防止のためか?
「お兄ちゃんがぐちゃぐちゃのミンチになった後に、車の勢いが止まらなくて、そのままアタシも」
聞いていたら吐き気が、つらたん。
「なんかもう、色々台無しだよ」
異世界で初めて出会ったのが従妹なんて、もっとこうドキドキわくわくがあっていいだろー。