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【スカイの場合】

「えー、ここが何だったかな」



 目の前に置かれた池を前に、スカイは首を捻る。


 魚でも泳いでいそうな大きめの池だが、満たされている水の色は毒々しい桃色である。加えて砂糖のような甘い匂いが鼻孔を掠め、液体そのものに粘性のようなものが確認できる。

 どう頑張って見ても、ただの池ではないことは明らかだ。こんなものがポッと地面に出てくれば間違いなく通行人は警戒する。わざわざ自ら飛び込むことはないだろう。よほどの物好きでなければ、の話になるが。


 ポンと手を叩いたスカイは、



「そうそう、媚薬の沼だ。いやー、この媚薬の調合が大変なんスよ。あと勝手に湧き出てくる設定にもしなきゃいけないし」


「うへあ」



 スカイの頭の中身を疑いたくなるような内容の説明を受けた銀髪碧眼の魔女、ユフィーリア・エイクトベルは紙束を片手に顔を顰める。


 現在、彼女はスカイの開発したエロトラップダンジョンの点検作業を手伝っていた。殊勝なことに彼女の方から「手伝いたい」という申し入れがあったのだ。

 どういう風の吹き回しか分からないが、とりあえず手伝いたいというのであれば手伝わせている次第である。ただでさえスカイの開発したこのエロトラップダンジョンは広大すぎるので、1人で点検作業をしていると間に合わないのだ。


 スカイは媚薬の沼の近くにある石畳の一部を取り外すと、



「こうね、定期的に媚薬の量とか確認するんスよ」


「そうやって確認していると夢がなくなるよなァ」


「そりゃ大規模な魔法兵器だから、夢もクソもないッスよ」



 取り外した石畳の向こうに現れた魔法兵器の数値を確認し、ユフィーリアの持つ紙束に記録させる。数値の上下が確認されると調子の悪さが目立つので、数値が一定であることを定期的に確認しなければならない。

 このエロトラップダンジョンは、スカイの技術の粋を集めた傑作だ。自然発生に見せかけたこの空間は全て魔法兵器によって構成されており、苔むした石畳を剥がすと鋼鉄の壁が見えるようになる。ここまで至るまで、時間もお金もかけてきたのだ。


 取り外した石畳を元の場所に戻したスカイは、



「じゃ、次は捕獲型ミミックの調子を見に行こうッスねぇ」


「聞きたくないけど、それってどんなの?」


「人が近づいた途端に触手が伸びて、箱に閉じ込めてえっちなことをされるっていうね」


「聞かなきゃよかったって心の底から思った」



 ユフィーリアはペラペラと紙束を捲って、捕獲型ミミックのチェック項目をまとめた紙を見つける。触手の状況から見た目の様子まで書き込む事項はそこそこの数がある。


 捕獲型ミミックは、媚薬の沼から少し外れた袋小路に設置されていた。

 石畳で構成された薄暗い袋小路。壁から突き出た燭台のみがぼんやりとその場所を照らしており、最奥には一抱えほどもある宝箱がポツンと置かれている。要所に鉄製の枠組みが特徴的な、ごくありふれた見た目の宝箱だ。


 スカイがその宝箱に近寄ると、ウィーンという駆動音と共に宝箱の蓋が開かれる。中に収まっていたのは粘性の液体を纏った触手である。



「触手の状態は桃色っと、これは変わってないッスね。液体の様子も問題なし。宝箱の蓋の駆動はちょっと遅いかな? 錆びてきているかもッスね、あとで油を差しておくッスよ」


「うい」


「はい、点検はこんぐらい。次」



 スカイは宝箱の点検を手早く終え、次の点検区画に移動する。ユフィーリアは先程スカイが呟いていたことも丁寧に紙束へ記入しているが、その間も表情は顰められたままだ。

 いつ投げ出すか分からないが、とりあえずついてきているのであれば何も言うことはない。記録もしっかり取ってくれているのでありがたい。


 背後に続く銀髪碧眼の魔女の存在を確認しつつ、スカイは次の点検区画に向かうのだった。







【リストその6:副学院長のエロトラップダンジョン見学(二度と行かねえ!!)】

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