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【アイゼルネの場合】

 冬らしいふわふわのファーがついたショートブーツ。



「お、いいなこれ。前に買ったワンピースに合うんじゃねえ?」



 機能性の高い運動靴。



「緑の具合がどちらかと言えば翡翠っぽいから似合うな」



 時期ではないが、特徴的な模様が彫られたソールのサンダル。



「来年の夏は水着にこれを合わせてみるか?」



 アイゼルネは戸惑っていた。


 それもこれも、目の前にずらりと並べられた靴の群れのせいである。上司として慕う銀髪碧眼の魔女が「靴を見に行こうぜ」なんて誘ったから何事かと思ったら、まさかの上司はアイゼルネの靴を見繕い始めた訳である。

 かの魔女様が手ずから作ってくれたアンクレットのおかげで、アイゼルネの球体関節が特徴の義足は難なく動く。おかげで今までは諦めていた足元のお洒落も可能となった。その矢先にこれなので戸惑うしかない。


 スツールに腰掛けるアイゼルネは、



「ユーリ♪」


「次はどの靴にする?」


「もういいわヨ♪」



 靴の箱を持ってきた銀髪碧眼の魔女――ユフィーリアは、青い瞳を瞬かせた。



「全部気に入らねえか?」


「そういう訳じゃないけれド♪」


「じゃあ何だよ。あ、アタシが仕立てた礼装の方がいい? それならまず材質から選ばねえと」


「だからそういうんじゃないわヨ♪」



 何だか暴走気味の上司を引き止めるアイゼルネは、



「何でユーリがおねーさんの靴を選んでるのヨ♪」


「いいだろ別に。やりたいからやってるだけだ」



 ユフィーリアは「それが何か?」と言わんばかりの態度で言う。


 彼女は自由奔放である。それでいて非常に気分屋だ。

 常に面白いことを探して生き、面白いことを見つければ進んで行動する。そんな掴みどころのない魔女様なのだ。自分のやりたいように生きるのがユフィーリア・エイクトベルという魔女である。


 それが、今日はアイゼルネの靴を選ぶというのが『面白いこと』なのだろう。これは彼女自身の気が済むまで解放はしてくれなさそうだ。



「全く自由人なんだかラ♪」


「好きだろ、そういうの」


「えエ♪ 貴女らしいもノ♪」



 今日の上司の気分を受け入れたアイゼルネはその後、ユフィーリアによって靴専門の着せ替え人形と化すのだった。

 その後、履かせた全ての靴を購入しようとする上司を引っ叩いて止めることになるとは、まだ知らない。







【リストその3:アイゼに靴を買う】

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