プロローグ
私には好きな人がいた。凄く、凄く大好きだった。
出会った頃から太陽のように明るくて、眩しい存在の貴方。暗くて、人と触れ合うことが苦手な私と仲良くしてくれて。実力は私の方が少し上だったけど一年もしない内にすぐに抜かれて追いつけなくなった。私を置いて行くように走る。
でも彼は優しいからそんな私のことを待ってくれていた。だから必死に追いかけて肩を並べて歩いて、また追い抜かれて。そんな積み重ねをしていつか、堂々と肩を並べて歩けることを夢見て修行を続けた。
なのに彼はいつしか私のことを待ってくれなくなった。私のことを置いて一人別の道を走るようになった。その周りには沢山の仲間がいるけれどその中に私はいない。
辛くて、切なくて。彼の仲間が羨ましい、そんな贅沢を思っていた私に陰陽師の始祖、安部清明は罰を与えた。抗うことのできない、罰を。
貴方を一人にして、貴方の友人を奪って。貴方の未来を奪って。
自分の不幸に貴方を巻き込んで、貴方の大事なものを取り返せなくて。
貴方を置いて逝ってごめんなさいって謝れる日が訪れることを、願って私は今日も戦い続ける。