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来客

 私がある人物を頭の中に思い浮かべるのと同時に、どんどんどん、と乱暴な足音が廊下に響き、部屋の中をわずかに振動させた。そしてすぐに扉が開き、予想していた通りの人物が私に顔を見せる。


「うわ、本当に風邪ひいてやがんの。正月早々・・・」


 私の額に貼られた冷却シートのあたりを眺めながら、開口一番そう言ったのは━・・・


「・・・神崎」

「よぉ、都築つづき。見舞いに来てやったぜ」


 私の担当編集・神崎美話がにんまりと笑って片手を挙げた。


「ちょっと!勝手に妻の部屋に入らないでください!!」


 神崎のあとに続いて、みなとが部屋に入ってきた。形のいい眉を吊り上げ、完全にお怒りモードだ。しかし神崎はそんなみなとを無視して平然と私に話しかけ続けた。


「メールで体調崩したって言ってたからよ、仕事サボるための仮病じゃねぇかどうか確かめてやろうと思って」

「・・・その程度の理由で、正月にわざわざ来てくれたのか?東京から?」


 神崎は私の問いかけに少し目を見開いたあと、ぷいと顔を背けて言った。


「・・・バーカ、そんなわけねぇだろ。たまたま用事でこっちに居たんだよ。お前んとこ来たのはついでだ、ついで」

「あ、ああ・・・そうか。うん。そりゃそうだよな」


 『ついで』という単語を強調してみせた神崎に納得して頷く。そこでみなとが私の布団と神崎の間に割って入り、こちらに背を向けて立った。つまり神崎と真正面から向き合った。


「今すぐ帰ってください。妻は今、体調が悪いんです」


 みなとの低い背の向こうから、神崎が眉毛を片方だけ上げるのが見えた。

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