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番外編『20年前と6年前』その16

 みなとの頭を撫でながら、私は思い出す。みなとと出会う前の自分のことを。当時の私は、世界で一番大好きな女の子にさえ、自分が苦労して集めて隠した物語たちを譲ることは絶対にできないと考えていた。・・・あの頃と比べて、自分は変わったんだな、としみじみ思う。


 変わらない、変われないとずっと信じていたんだけどね。自分の進んだ道を心の底から後悔する日がいつかやってくるかもしれないとは思っていたけど、その時には多分もう何もかも手遅れだろうから、選んだ生き様を貫くことは可能だろうなんて、そんなことを考えてすらいた。でも無理だった。けっこう自信あったんだけどな、人生何が起こるか分かんないもんだねぇ。


 べつに昔の自分と比較して今の自分のほうが優れているとか、立派だとか正しいだとか言いたいわけじゃあない。人が何を好きだと思うか、一番大切だと考えるかで優劣がつけられるようなことは基本的にあっちゃいけないと私は考えてるし。だから、いいことなのか悪いことなのか、得たのか失ったのかはさて置き、確かなのは私という人間が『変化』したのだということ。


 本来だったら十数年前からずっと時間が止まったまま生きていたかもしれない私を変えたのは誰だ?みなとだ。みなとは、そう、私の中で強い意志と共にかちこちに固まってしまっている考え方を、長い時間をかけて溶かしてしまうことができる女の子で、つまり私にとって物凄く重要で大切な存在なのだ。そのことを今、改めて認識する。


 ・・・人を変えるのは大抵の場合、やっぱり人なんだってことを私は認めなくちゃいけないんだろうなぁ。たとえ部屋に引きこもって誰とも関わらずに本ばっか読んでたとしても、ゲームばっかりやってたとしても。やり方次第で得るものはちゃんとあるって私は信じていて、それは今でも変わっていないけれど・・・でもその本やゲームを作ってるのも結局は生きている人間だから。ちょっと悔しいような気はするけどね。


「イツカちゃんはさー、私のこと大好きなんだねぇっ」


 みなとが、私の腹にぐりぐりと頭を押し付けながら言った。私はその頭を撫でる手を止めずにこう返す。


「そりゃもうね。みなの幸せは私の幸せって思える程度には大好きだよ。だからまぁ、みなに宝物をあげても失ったという気は全くしないというか・・・変わらず私が持ってるようなもんというか?」


 すると、みなとが私の身体に密着させていた顔を勢いよく上げて私を見た。予想外の過剰とも言えるリアクションに私は「へ?」と間抜けな声を上げて固まる。みなとの頭の上を滑っていた手も止まる。


「イツカちゃん。それって・・・」


 みなとが何かを言いかけたあと、頬を薄っすらと朱色に染めて私から顔ごと目を逸らす。そして、そのまま少しのあいだ躊躇ためらうような素振りを見せてから、ゆっくりと再び口を開いた。


「それって・・・もしかして、私はイツカちゃんのもの、ってこと?」

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