番外編『20年前と6年前』その14
「でもね、でも・・・私、今はまだ、ヨウセイジョには通えないでしょ?だから、ドクガクで勉強するしかないなーって思って。それで、漫画とかラノベを台本代わりにして、キャラクターの台詞を喋って演技の特訓ができたらなぁって・・・」
みなとは重ねていた両手の人差し指と人差し指を突き合わせ、もじもじとしながら私を見た。
「だけど、イツカちゃんが見てる前で練習するのは恥ずかしいから・・・部屋でひとりで、って思って・・・だめ?」
上目づかいでこちらの顔色を窺ってくるみなとに対し、私は即座に首をぶんぶんと横に振った。
「だめなわけないじゃん・・・っていうか、なーんだ、そういうこと!!私ってば早とちりしてメチャクチャ焦っちゃったよ・・・」
「ふふっ・・・ごめんね、紛らわしい言い方して。イツカちゃんがどういう反応するのか、ちょっと・・・ううん、すごく気になったから、ついいじめちゃった」
みなとは急に、とても小学生とは思えない大人びた顔つきになって、艶っぽい声で笑った。・・・うーん、15も年下の子の手の平の上で弄ばれる私って一体・・・。でも多分、私に問題があると言うよりはみなとがちょっと特殊なんだよなぁ。小悪魔系とでも言えばいいのか・・・。
「もう、みなは意地悪だなぁ。まぁ可愛いから許すけど」
私の言葉に、みなとは満更でもなさそうに頬を緩めた。
「もう、そういうのいいから。・・・でもありがとう、イツカちゃん。私ももし、イツカちゃんに意地悪されてもすぐに許してあげるからね」
「ありがとう」
私が苦笑しながらお礼を言うと、みなとが俯いて何事かをぼそぼそと呟いた。
「・・・・・・になるんだから、許し合わないとね・・・」
「えっ?ナニ?今なんて言ったの?」
私が聞き返すと、みなとはぱっと顔を上げて、ほんの少しだけ舌を出して笑った。
「んーんっ、なんでもないっ。ひとりごとだよ?」
「・・・?そう・・・?」
気になった私はあえてわざとらしく首を斜めに傾けて見せたが、みなとは『ひとりごと』の内容を教えてくれる気はないようだった。何事もなかったかのように話を元に戻してしまう。
「それでさ、イツカちゃんっ。私、この前イツカちゃんと一緒に読んだ『悪役令嬢のコルセットに転生した私』シリーズを貸してほしいんだっ。あとできれば『大学入試三日前に異世界に行ってる場合じゃないのに』シリーズもっ」




