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番外編『20年前と6年前』その13

 すると、みなとは顎の下で可愛らしく両手を重ね合わせ、はにかみながらこう言った。


「あのね、ほら・・・この前、私、言ったでしょ?大きくなったら声優さんになりたい、って・・・。イツカちゃん、覚えてる?」

「ああ・・・うん。もちろん、覚えてるよ」


 数か月前にふたりで一緒にアニメを観ながらした会話の中で、みなとが私に宣言した将来の夢である。・・・正直、できるだけ早く諦めるか忘れるかしてほしい夢だ。自分の娘(同然の子)がなりたいと願っているものが、声優だの漫画家だの小説家だの・・・。言うまでもなくそんなもん、ただの悩みの種でしかないしな。


 ・・・お前が言うなって?ああ、そういや私って小説家だったな・・・というのは流石に冗談として、いやいや私だからこそ言う権利と資格があるんだよ。だって私は『なれるわけないから』という理由だけで可愛い義理の娘の夢を否定したいわけじゃない。『万が一、何かの間違いでなれたとしてもロクな結果にならないから』心配している部分も少なからずあるのだ。なんかみんな・・・特に若い子はさぁ、『なる』ことさえできればこっちのもん、そこがゴール・・・みたいに考えてるけどさぁ、全然そんなことはないから。むしろやっとスタートラインに立てただけだから。そこらへんはあれだな、結婚と同じだな・・・私結婚なんてしたことないしこれからも絶対しない自信あるけど・・・。とにかく我々現実の人間の物語は、大きな夢を叶えたり目的を達成したりした後も容赦なく続いていくのは間違いない。


 『声優(だの漫画家だの小説家だの)になれるのはほんの一握り』なんてことをしたり顔で言う人は結構な数、存在している気がするけど。それだけで『ずっと』食っていける、大勢の人に求められ『続ける』声優になれるのは更に・・・更に更に更に更に・・・もっともっともっともっともっと・・・一握り、いや一つまみなんだぜ?絶対。私は世間の誰からも求められない、或いは求められ持てはやされていたのに後から手の平を返されて使い捨てられるみなとなんて見たくねぇんだよ・・・。


 そして億が一、売れ続けて必要とされ続ける声優になれたとしても、それはそれで地獄だしな。周囲からの無責任な期待に必死で応えてプレッシャーと戦い続けなくちゃいけない人生なんて、この子に送らせたくない。私はみなとに、もっとこう、普通の形で幸せになってほしいのだ。誰にも消費されず、心をすり減らすこともなく・・・。穏やかに、平凡に・・・。


 ・・・・・・。・・・まぁでも、そこまで深刻に心配しなくても大丈夫か。だってみなと、まだ小学生だもんね。今は拳を握り締めてキラキラと輝く瞳で語っている『夢』でも、いつかは若気の至り、気の迷いということで片付けてくれるはずだ。


 そうやって勝手に納得して一人でうんうんと頷いている私を見て、みなとは首を傾げながらも話を続けた。

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