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番外編『20年前と6年前』その10

「どうしたの、みなちゃん?・・・あっ、ひょっとして、本じゃなくてゲームの方がいい?それともアニメ観たい?」

「う・・・ううん。違うの、イツカちゃん。そうじゃなくて、私・・・」

「━・・・。あ、分かった!よく考えたらみな・・・っていうか私もだけど、お昼ごはんまだだよね!ごめんごめん、腹が減っては冒険は出来ぬだから、まず食べないとだ・・・待ってて、私すぐなんか作るから!」


 そう言って早速キッチンに向かうべく部屋を出ようとしたところで、みなとが慌てて駆け寄ってきて私の腰にぎゅっとしがみついた。言葉ではなく行動で引き留めてきたみなとに驚き、私の(無い)胸の下に密着したその顔を見下ろす。


「・・・みなちゃん?」

「イツカちゃん、あの、あのね・・・」


 みなとは今にも泣き出しそうな表情で私の顔を見上げ、必死に何かを言おうとしていた。・・・どうやらこの子がしたいのは昼食の話ではないらしい。


 私は戸惑いながらもみなとの頭の上に手を載せ、できるだけ優しい声で続きを促した。


「もう、ほんとさっきからどうしたの、みな。言ってごらん?私、何言われても怒らない自信あるからさ」

「・・・。うん・・・」


 みなとは小さく頷いたあと私の腰に回していた手を離し、数歩後ろに下がった。私はしゃがんで、目線の高さをできるだけみなとに合わせてから、もう一度問いかける。


「それで、どうしたの?」


 みなとはしばらくの間、唇を噛んで真剣・・・と言うよりは深刻な表情でじっと私の顔を見つめていたが、やがて強い意志の光を瞳に宿してゆっくりと話し出した。


「あのね・・・イツカちゃん。私・・・今日はイツカちゃんの居ないところで、ひとりで本を読んだりしたいなぁ、って」


 私は一瞬、自分が何を言われたのか全く理解できず、ぽかんと口を開けて間抜けな声を上げてしまった。


「・・・え?」


 遅れて状況を把握するのと同時に、目の前が真っ暗になる。・・・何を言われても怒らない自信があった。実際、怒ってはいない。


 けれど私は、動揺しないとまでは保証していないのだ。・・・屁理屈ではあるが。

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