番外編『20年前と6年前』その9
━・・・そして時は流れ、14年後。
27歳になった私と12歳のみなとの、ある夏の日。
☆
「イツカちゃん、ただいまーっ!!」
終業式を終えて小学校から帰ってきたみなとが、元気よくドアを開けて私の部屋に入ってきた。仕事机に向かって執筆の真っ最中だった私はその声を聞いてすぐにノートパソコンを閉じ、椅子に座ったまま振り返る。
「みなお帰りー!!これで晴れて今日から夏休みだね!!」
「うんっ!!イツカちゃんと私のふたりで、毎日いっぱい冒険しよーぜっ!!夏休みじゃなくてもしてるけどっ」
みなとが両手を挙げて、その場でぴょんこぴょんこと跳ねる。背負ったままの水色のランドセルの中身がシェイクされて、がしゃがしゃと音を立てた。
「合点だ!!じゃあさ、早速今からふたりで何か読んだりする?新しく買ってきた本とかは今ちょっと無いけど・・・最近ずっと読んでなかったシリーズとかさ、久しぶりに一緒に読み返そーよ」
私はうきうきした気分で椅子から立ち上がり、本棚の前へと向かった。全てはみなとの笑顔のためであり、決して仕事を途中で放り出す大義名分が欲しくてこんな提案をしたのではない。・・・いやごめん、やっぱりそれもちょっとあるかも。
「うーん、どれがいいかな・・・?みなは何が読みたい?」
本棚に並べられた数々の小説や漫画の背表紙を眺めながら、私はみなとに質問した。・・・が、何故かいつまで経っても返事が返ってこない。私は思わず振り返って義理の娘の名前を呼んだ。
「みなと?」
みなとは、何故か着ているワンピースの裾をぎゅっと掴んで、恥ずかしそうに俯きながら上目遣いでちらちらと私のようすを窺っていた。・・・いや、これは・・・恥ずかしそうと言うよりは、何かを言いにくそうにしている顔、かな?この子と7年一緒に暮らしてきた私だからこそ分かる、微妙な違いだけど(ドヤ顔)。




