番外編『20年前と6年前』その6
まどかちゃんがほんの少し眉間にしわを寄せて、怪訝そうな目つきで私を見下ろしながら一歩、こちらに進み出て距離を詰めてきた。
私は思わず後ずさったが、すぐに存在を忘れかけていた本棚に背中がぶつかってしまい退路を失う。そして、置かれた状況を理解するのと同時に、物凄い後悔の念で血の気が引いていく。
・・・あ・・・アホ!!私のアホ!!!冗談だったんじゃん!!適当にヘラヘラ笑って「もー何言ってんだよまどかちゃんは~」とか返しておけば、それだけで済んでる話だったんじゃん!!それなのに・・・!!
頭を抱えたくても抱えられない私にまどかちゃんが大股で更に一歩、近付く。握り拳一つ分くらいしか離れていない至近距離で、じっと見つめられた。
「あんたさぁ・・・あんた・・・ひょっとして・・・」
「・・・っ・・・っ・・・」
私は酸欠状態にでも陥ったかのように、口を開いたり閉じたりするのを何度も繰り返すので忙しかった。なんでもいいから何かを言って誤魔化そうという気持ちはあっても、言葉が何も浮かんでこないから話し出すことができないのだ。頭が全く回転してくれない(いつもだけど)。
万事休すか、と半ば諦めかけてぎゅっと目を瞑った時。いつか追い抜かしてやろうと心に決めてはいるものの残念ながら現時点では私よりもずっと背が高いまどかちゃんの声が、上から降ってきた。
「ひょっとして・・・なんか、気に障った?」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
こちらの予想と全く被らなかったまどかちゃんの一言に、私は拍子抜けして思わず間抜けな声を上げた。まどかちゃんは物憂げな表情をこちらに見せたあと、二、三歩後ろ歩きをして私の全身を視界に収められるであろう位置に立つ。
「や、だってあんたのそのノリの悪さ見たら・・・。それしか考えらんないじゃん?冗談でも世界で一番大好きとか、そんなこと言われたくなかったーってことでしょ?」
まどかちゃんは、私の顔色や反応をちらちらと横目で窺うようにしながら、そんなことを言ってきた。・・・こ、この人は・・・。




