だからこそ
「あの・・・さ。みなちゃん。私たちさ、さっき結構『色々』あって・・・それで、まあその、たぶんお互いちょっといつもの調子ではないと言うか・・・ぶっちゃけ落ち込んでるみたいなとこも、あるわけじゃない?」
「・・・うん」
私はソファから上半身を起こし、できるだけ近い位置でみなとの目を見つめた。
「でもさ、だからこそ。だからこそ、たぶんいつも以上に、物語に感動して・・・幸せな結末に救いを感じることが、できたんじゃあないかな。そう思えば落ち込むことも悪くない。空腹が最大の調味料になるのと同じように、現実での困難や壁は、空想の世界へより強く羽ばたくための翼や追い風になる」
話しているうちになんだか楽しくなってきて、私は自然と笑顔になっていた。
「そう、私たちには、物語があるから。どんな状況に置かれた自分にも、寄り添ってくれる物語が必ず世界のどこかにあるから。だから大丈夫なんだ。起承転結の転の部分に行き当たって挫けそうになっても、いつかきっと誰かの物語に助けられて、結末に向かって再び歩き出す。そういう生き物なんだ、私たちは。物語がそうであるように、同じページにずっと留まってなんていられない」
だから大丈夫、ともう一度強く繰り返した。するとみなとは潤んだ瞳で私の顔を見つめ返したあと、笑って頷いた。
「・・うんっ!ありがとう、イツカちゃん」
そしてまた会話が途切れたが、今度の沈黙はなんとなく放っておいても問題ないもののような気がした。そう思って無理に話を続けようとせず黙っていると、みなとが躊躇いがちに再び口を開いた。




