大切なこと
ああ、どうしよう。何とかして私のせいで落ち込んでしまっているみなとを元気づける方法はないものか。・・・そうだ、ここは何か、みなとの好きな物語やキャラクターの話でもして━・・・。
「・・・ん?」
待てよ。ちょっと待てよ。物語・・・物語?何か、大切なことを、忘れてしまっているような━・・・。
「ああっ!」
私の大声にみなとが驚いて顔を上げる様子を視界の端に捉えつつ、壁に掛かった時計を見上げる。午後7時10分前。
「み、みなちゃん!今日!今から!7時から!!あれの続き、っていうか最終回じゃん!!ほら!ずっと観てたドラマ!!」
「・・・あ、ああ・・・そう言えば、そうだね」
みなとが私の勢いに目と口を丸くしながらも頷くのを見て、私はぐっと両手を握る。
「観なきゃ!!なんとしても観なきゃ!!あと10分で観れるんだよ!?あの続きが!!すごいとこで終わってたじゃん・・・記憶喪失のヒロインが結婚して幸せに暮らしてるところに、昔永遠の愛を誓った恋人が訪ねてきて、ヒロインが過去にあったこと全部思い出して・・・。それで今の夫と昔の恋人、どっちを選ぶのかってとこで!!」
「そう、そうだったね・・・色々あって、すっかり忘れてたけど。私たち、1週間前からずっと楽しみにしてたんだよね・・・」
さっきまでと違い、嗚咽や震えの混じらないしっかりとした声で、涙を拭いながらみなとが言った。




