疑い
みなとの絶望一色の声を聞いて、ようやく私の時間が動き出す。私はみなとの肩に手を置き、今更ながらなんとか反論をしてみせようと口を開きかけた。しかし、それは続くみなとの言葉によって遮られた。
「イツカちゃんが、私のことかわいいって言ってくれるのは・・・私があの女と似てるからなんでしょ・・・」
血を吐くような声だった。私はその声をかき消したくて叫んだ。
「ち、ちがう!ちがうよ!!そんなわけないじゃん!!」
けれどみなとは、私の声よりも更に大きな声で叫び返してきた。
「じゃあ!私のこと!私のこと、自分と好きな人との間にできた娘みたいに思ってるんでしょ!!」
しん、と場が一度静まり返った。みなとの発言に私が絶句させられてしまったからだ。
眩暈がした。額に手を当て、息を荒げながら、なんとか言葉を紡ぎ出そうと努力する。
「お前っ・・・お前ね・・・」
言ってやろうとした。みなとの疑いが、心配が、どれだけ的外れで馬鹿馬鹿しい考えなのかを。しかし先程からやけに熱を持った頭は上手く回転してくれず、すぐには相応しい言葉が浮かんでこない。私はぎゅっと目をつむり、しばらくの間思考をさ迷わせたあと、みなとの腕を掴んで立ち上がらせた。
「ちょっと、来て」
そのままみなとを引っ張り、歩き出す。みなとは抵抗することなく私に付いてきた。
真っ直ぐに自室へと向かい、扉を開けてみなとと一緒に中に入り、壁のスイッチを押して灯りを点ける。そこで掴んでいたみなとの腕を解放し、私は本棚の前へ足を向けた。そして一番下の段の左端に押し込まれていた古いアルバムを取り出し、しゃがんで膝の上でそれを開いた。




