問いかけ
おそらく、反撃されるとは全く考えていなかったのだろう。手首の拘束が外れる程度に勢いをつけて起き上がりながら少し押し退けただけで、みなとの身体はあっけなくソファー━・・・というか私━・・・の上から床へと転落した。
「あ・・・」
床に蹲るみなとの姿を見て、我に返る。『みなとを突き飛ばしてしまった』という事実に血の気が引き、泣きそうになりながらも慌ててソファーの上から降りて、私はみなとの横に膝をついた。
「ご・・・ごめんみなと!ごめんね!大丈夫!?」
私の呼びかけに、みなとが俯いていた顔をゆっくりと上げた。乱れた前髪の下にある両目から涙が流れているのが見えて、私は息を詰まらせた。
「・・・ねえ・・・イツカちゃん・・・」
みなとの声に、背中をさすってやろうと伸ばしかけていた私の手が止まった。
「私・・・ずっと怖くて・・・ずっとずっとずっと怖くて・・・どうしてもイツカちゃんに聞けなかったことがあるの・・・」
みなとはそこまでを震える声で話してから、一度黙る。
長い沈黙を挟んだあと、やがてついに口を開いた。
「イツカちゃんは・・・あの女のことが・・・七瀬まどかのことが、ずっと好きなんじゃないの・・・?」
凍り付いた。凍り付いてしまった。
何を置いても、即座に全力で否定すべき問いかけだったのに。
案の定、みなとは私の反応に答えがあると感じてしまったのか、嫌々をするように首を横に振った。
「やっぱり・・・やっぱりそうなんだ・・・」




