動揺
「あ、あー・・・みなちゃん?私、今そんな恥ずかしいこと言ってたっけ?」
みなとは俯いた。
「だ・・・・・・・・・だっ、てっ・・・・・・。イツカちゃんが・・・・・・も、物語よりも私のことが大事って・・・あのイツカちゃんが・・・それって・・・・・・それって・・・つまり・・・」
みなとはしばらくのあいだ、口の中だけでごにょごにょと何かを呟いていた(「2番目でもいいと思ってたのに」とかなんとか)が、やがてぶんぶんと勢いよく首を横に振った。
「や、やっぱりなんでもないっ!!は・・・早くゲームを進めなくっちゃ!!」
みなとはそう言うとコントローラーを握り直し、プレイを再開した。しかし、画面の中の『みなと』は、あっちにふらふら、こっちにふらふらと、なんだか足取りが覚束ない。
・・・うーん・・・・・・私、そこまで動揺させるようなこと言ったかな・・・。っていうかこれってもしかしなくても、今まで私がみなとより物語の中の出来事やキャラクターのほうを優先する人間だと思われていたっていうことなんじゃあ・・・。いやいや、流石にその心配はない・・・よな・・・?
表情を窺うべくみなとのほうに顔を向けると、その首から下がるハートの片割れのペンダントに目が留まった。部屋の灯りを反射してやわらかく光るそれを、ぼんやりと眺める。そうしているうちに、なんだか私は眠くなってきてしまった。
みなとが『イツカ』を迎えに行くために頑張っているのだから寝てはイカン、寝てはイカンと自分に念じるのだが、やがて奮闘空しく私の頭はがくがくと派手に船をこぎ始めた。
完全に眠りに落ちてしまう寸前、みなとの声が聞こえた気がした。
「ねえ、イツカちゃん。もしもイツカちゃんが、その力をぜんぶ失っちゃう日がいつか来たとしても・・・。私、イツカちゃんのそばにいるからね」




