いざないのどうくつ(13年後)
私がぼんやりとユニストセブンや自分自身のことについて思いを巡らせているうちに、『みなと』は村の中でいくつかの小さなイベントをこなし、既に『いざないのどうくつ』の入り口前にまでやって来ていた。ちらりと盗み見れば、現実のみなとの横顔は少し固いというか緊張しているように私の目には映った。
それでも画面の中の『みなと』は迷いなく洞窟の中へと足を踏み入れる。そして薄暗い空間を数歩進んだ先で、一番最初のモンスター━・・・5歳のみなとが何度も敗北を喫し、ついぞ打ち倒すことは無かったゲーム内最弱の魔物━・・・が、『みなと』に襲い掛かって来た。
「・・・・・・・・・」
しかし、みなとも『みなと』も動転することなく冷静に行動した。
みなとが流れるような手つきでコントローラーのボタンとスティックを使い、『みなと』を的確に操作する。画面の中で『みなと』は華麗に杖を振り、魔法を唱え━・・・ものの数秒で、かつてのみなとにとっての最大の難関だった怪物『クリーチャーラビット』を見事、屠って見せた。
「・・・・・・あ・・・」
モンスターを倒すのに成功した瞬間、みなとは呆けたように口を小さく開け、その後は目を丸くして画面の中のもうひとりの自分を見つめたまましばらく動けないでいた。私も思わず数秒、呆然としてしまったが、それでもなんとか先に我に返ってみなとの肩を叩き、笑いかけた。
「みなちゃん!やった!やったじゃん!倒せたねえ!」
「う、うん・・・そっか、私、倒せたんだね・・・こんなにあっさり・・・」
自分の成し遂げた偉業をまだ信じられないでいる様子のみなとに自信を持ってもらいたくて、私は言葉を重ねた。
「いや、でも当然と言えば当然だよ!みなちゃん、今ではもう私よりずっとアクションゲーム上手だもん!私の生きる世界の中で一番上手いのがみなちゃんだもん!」
私の言葉にみなとは照れたような顔をして、少しのあいだ俯いた。しかしすぐに顔を上げ、画面の中の自分を今度は力強い眼差しで見据える。
「うん・・・そうだよね!私、上手になったんだよね!」
「そうそう!」
その調子その調子。
「よーし・・・じゃあ私、この調子でどんどん先に進んでみせるから。イツカちゃん、強くなった私を見ていてね」
「りょーかい!」
私は親指を立てた。
そしてその後、みなとは宣言通り、『あっさり』とか『余裕綽綽』といった表現がぴったり当てはまるような勢いで次々とモンスターたちを倒して進んで行き・・・あっという間に洞窟の最奥までたどり着いた。そしてそこで待ち構えていたボスモンスターも難なく倒してしまう。
結局、『みなと』は合計10分かそこらのプレイ時間で『いざないのどうくつ』を制覇し、最初に入った入口の反対側にある洞窟の出口から、外へと出た。ここからフィールドを少し先へ進めば次の目的地、城下町はすぐそこだ。みなとはそこで現実世界の、壁に掛かった時計にちらりと目をやった。
「イツカちゃん、まだ3時だし・・・このままゲーム進めてもいい?」
私は大きく頷いてみせた。
「いいに決まってる!私がゲームは一日一時間までなんて言うわけないじゃん!」
胸を張って言ってやった。するとみなとは思わずといった様子で吹き出し、何度も頷いた。
「そうだね、確かに言われたことはない。・・・よしゃっ。イツカちゃん、待ってろよ。私、すぐに『イツカ』ちゃんを迎えに行ってあげるから!」
「うん!待ってる!!」
みなとはコントローラー、私は自分の両手を、お互い気合を入れるようにぎゅっと握った。




