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共同作業

「うんうん、分かるよ。セブンってみなが一番初めに触れたユニストだもんね。初めてってのはやっぱ特別だよね」


 私がそう言うと、みなとはほんの少しだけ困ったような顔で笑った。


「うーん、そうだね・・・初めてだから特別・・・まあそれも少しはあるんだけど・・・私がセブンを一番好きな理由は、それだけじゃなくって・・・」

「・・・え?そうなの?」


 それは初耳だ。言われてみれば今まで私が勝手に『初めてプレイしたユニストだから一番好きなんだろう』と心の中で決めつけていただけで、みなと本人にちゃんと『好きな理由』を確認したことはなかったかもしれない。みなとも自分からそれを話したりはしなかった。私は首を傾げたままみなとの言葉の続きを待ったが、みなとはやがてゆるゆると首を横に振り、


「・・・ううん、なんでもない。それよりさ、よく考えたらハードとソフト、ちゃんと動くかなぁ?もう10年以上ずっと動かしてないでしょ?」


 と言って、再びナイフとフォークでハンバーグを切り分け始めた。私もつられて、中断していた自分の食事を再開する。そのことに加えてみなとが口にした懸念にも見事に気を取られたせいで、『みなとがユニストセブンを一番好きな理由ってなんだろう』という私の素朴な疑問はあっという間に思考の彼方へと飛んで行った。


「確かに、それはちょっと怪しいかも・・・。よし!ご飯食べ終わって食器洗ったらすぐにテレビにつないで起動してみよう!それで駄目なら仕方ないからなんか他の特別なことやろう!」

「うん、分かった。・・・あ、でも、イツカちゃんあんまり慌てて食べたら駄目だよ?むせちゃったら大変だから」


 みなとが人差し指をこちらへと向け、『めっ』みたいなポーズをとった。それに対し私は親指を立ててみせる。


「大丈夫、安心して!みなの作ってくれたご飯をいい加減に味わったりしない!」

「もう、そういうのいいから」


 そんなどちらが保護者なんだか微妙に分からなくなるやり取りを間に挟みつつ、私とみなとは昼食を食べ進めていったのだった。



 ☆



「ねえ、イツカちゃん。私ちょっと思いついたんだけど」

「え?なになに?」


 昼食を食べ終わったあと。私とみなとはキッチンの流しの前で一緒に食器を洗いながら話をしていた。


「私たちってさ、いつもソファの上でテレビ観たりゲームしたりするじゃん?」

「?うん、そうだね」


 姿勢は腰かけていたり寝転んでいたりみなとが私の膝を枕にしていたりと色々だけど。・・・ちなみに、我が家にテレビはリビングにある一台しかない。どうせ私もみなとも一人でテレビを使うことなんてほとんどないのだから、わざわざそれぞれの自室に置いておく意味があまりないのだ。


「でもさ、今日はクリスマスだから、いつもと違う特別なことをすべきでしょ?それでちょっと考えたんだけど・・・」


 みなとはそこで一旦言葉を切り、スポンジに追加で洗剤を吸わせてから話を再開した。


「お布団をリビングまで持って来てテレビの前に敷いて、その中で寝ながらゲームをプレイするっていうのはどうだろう」

「え・・・」

「あとついでに、ゲームをやりながら、昨日帰って来てから食べたクリスマスケーキの残りを食べるっていうのもいいかなと思ったんだけど」


 ・・・・・・・・・。


「て・・・天才!?みな!ひょっとして天才なの!?なにそれ有り得ないくらい楽しそうじゃん!天国じゃん!!」


 みなとは頬を赤らめて少し俯いた。


「あ・・・やっぱり?私もさ、思いついてから自分で『あれ、ひょっとして私って天才だったのかな?』とは少し思ったんだけど・・・」

「正しい!正しいよその客観視は!!だって天才だもん!!いやー流石みなちゃんだわ・・・」


 私はうんうんと何度も頷いてから、みなとがスポンジでこすっている皿を手でつかんだ。


「よし、みなちゃん!あとは私がやっとくから!!みなちゃんはゲーム機とソフト運んできて!確かみなちゃんの部屋のクローゼットに仕舞ってあったよね?」

「え、でも」


 自分が洗っている皿を手放そうとしないみなとに私は言った。


「大丈夫!ふたりで分担して旅立ちの準備を整えるわけだから、そう、あれだよ、共同作業だよ!これは夫婦の共同作業!私は食料を用意してリュックに詰め込むから、みなは船のチケットを手配してきて!」


 その場の思い付きで言っただけの適当な言葉は、私が思っていたよりもずっと効果てきめんだった。みなとはぱぁっと顔を輝かせて深く頷いた。


「うん、分かった!夫婦だもんね!私、行って来る!」


 みなとは私に皿を渡し、泡だらけの手を洗うと一目散に自分の部屋へと駆けて行った。すげえな共同作業!



 ☆



 食器を全て洗い終わったあと自分の部屋から布団を持って来てテレビの前に敷き、皿に載せた二人分のケーキとフォークを用意し終わっても、みなとはリビングに戻って来なかった。何せあれらを片付けたのは約10年前のことだから、クローゼットの奥から見つけだすのに手間取っているのかもしれない。


 もう少し待っても帰って来る気配が無ければ様子を見に行こうと決め、敷いた布団の上に座ると私はなんとなくテレビの電源を入れた。リモコンのボタンを押し、溜まっているアニメやドラマ、映画の録画リストを確認する。


 ・・・おお、だいぶ色々未視聴の作品が溜まっている。昨日は一日出掛けててみなとと一緒にテレビ観るヒマ無かったしなぁ。でも今日からあの子も冬休みだし、これからは一緒に観放題か・・・ふふ・・・楽しみだなぁ。


 『みなととまだ冒険していない世界がたくさんある』という事実ににやにやしていると、リビングのドアが開いてみなとが中に入って来た。

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