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「結婚」後の変化

「イツカちゃん、起きて。朝だよ」

「うう・・・おはよう・・・眠い・・・・・・」

「昨日、遅くまで仕事頑張ってたもんね」


 下着姿のみなとに肩を揺すって起こされる、いつもと変わらない朝の光景。だがしかしこの光景が意味するものは、実は3週間と少し前のあの日━・・・私がみなとと「結婚」をしたあの日━・・・の翌日以降とそれ以前で、少しだけ違ってしまっている。


 以前は私もみなともそれぞれ自室で寝ていて、朝になるとみなとが下着姿で私の部屋までやって来て起こしてくれていた。しかし今はそうではない。今ではみなとは毎日私の部屋で私と添い寝をしていて、朝が来れば隣で寝ている私に着替えながら声をかけて起こすだけ(みなとの服や小物も私の部屋のクローゼットに移動済み)という、非常に単純明快な話になっているのだ。まあとりあえず今のところはこの程度の変化で済んでいて良かった・・・当初はもっと差し迫った事態(具体的に言わせるな)に陥るんじゃないかと危惧したりもしたけどな。みなとと私がたまたま同性だったことも幸いしたと言える。あくまでも事実婚であり、少なくとも法的にまで追いつめられる心配はない。


「大丈夫?イツカちゃんが朝弱いのは知ってるけど、なんかいつも以上にぼーっとしてるよ」


 みなとが大きな両目をぱちくりと瞬かせながら、私の顔を覗き込んできた。


「ああ、ゴメンゴメン大丈夫・・・昨日は珍しく真面目に仕事進めたから、その反動が来ちゃってるだけ」


 というよりぶっちゃけ、人肌を感じながら寝るのに慣れてないからどうしても眠りが浅くなっちゃうんだよな・・・言わねぇけど。布団を2枚並べて寝るんじゃあなくて、私の布団にみなとが潜り込む形だから、どうしても体を密着させた状態で夜を越すことになるのだ。それが正直私にはちょっと辛い。


 ・・・まあでも多分何とかなるか。昔、ちっちゃかったみなとと一緒に寝てた時も、最初のうちは全然眠れなかったのが1か月もしたらすっかり慣れてグースカ寝てたからな、私。要するに本来私は自分の寝床の中に他人が入ってくるなんて信じられない、ぞっとするというタイプ(そんな分類が一般的に確立されているかどうかは知らない)の人間なのだが、相手がみなとならば例外的にやってやれなくはないのだ。そう考えるとそれこそ私が夫婦になれる相手って、この世でただ一人みなとぐらいのもんなのかも知れないけど・・・・・・って、ないないないないない!何言ってんだ、何考えてんだ私は!!うっかりと言うか、寝ボケるにも程がある!!ナシ!!今のナシ!!!


「そっかぁ、お疲れ様。イツカちゃん頑張ったね。えらいよ」


 自分自身にドン引きしている私の内心などつゆ知らず、みなとが真面目な顔でぱちぱちと両手を叩いた。おお・・・なんか褒められたぞ。みなとに褒められるのは、ぶっちゃけ担当編集に褒められた時の100兆倍嬉しい。いや決して担当編集が私の中でどうでもいい存在という意味ではなくて、それだけ私にとってみなとは絶対的な存在なのだということを言いたかった。みなとに褒められる、尊敬される人間になりたいと日々意識しながら生きていると言っても過言ではないくらいだ。


「でも、どうする?そんなに疲れてるんなら、今日はお出掛けする予定だったけどやめにしてお家デートにしよっか」


 みなとが心配そうに私を見てそう言った。一応補足しておくと、『デート』という単語は別に結婚したから使うようになった言葉というわけではなく、以前から日常的に私とみなとの間で使用されている。


「いやいや、何言ってんの今日は出掛けなくちゃ!せっかくの日曜日!そしてせっかくの、」

「クリスマスイブ、だもんね」

「そう!」


 というわけで、今日、12月24日は、私とみなとが『夫婦』になってから初めてのクリスマスデートの日なのだった。


 だがしかし、その前に。


 あれから3週間と少しが経過して、いい加減私も精神的に少しは落ち着いてきたことだし。そろそろ現状の確認と整理を行う必要があるだろう。


「じゃあイツカちゃん、私、そろそろ朝ごはんの用意するから。顔洗って着替えてリビングに来てね」

「分かった」


 私は返事をすると同時に立ち上がった。

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