誤解
「・・・もういいから。私は大丈夫だから。・・・冬休みの宿題とか出てるでしょ?部屋に戻ってそれやったりしてなさい」
「・・・・・・・・・」
滅多にない私の命令口調に、みなとは青ざめた顔で硬直した。そして数秒、黙り込んだ後に震える声で話し出す。
「・・・イツカちゃん・・・ごめん・・・私、自分勝手だったよね・・・」
「えっ?」
驚いて起き上がりかけたところを再び神崎に押し戻された。仕方なく横になったままみなとの言葉の続きに耳を傾ける。
「私・・・イツカちゃんが熱出して、体調悪くて辛い思いしてる時に・・・神崎さんからイツカちゃんを取り返すことばっかり考えて、そっちにだけ必死になって・・・。風邪ひいたイツカちゃんのこと、本当の意味で気遣ってあげられなかった・・・。こんなの、私、居ても邪魔なだけだよね」
「い、いや・・・ちがう。そんな意味じゃ」
慌てて声を掛けようとする。三度起き上がる私を押し戻そうとする神崎の手を、乱暴に払いのける。けれどみなとは私に背を向け、部屋の出口に向かって歩き始めた。
「私・・・もう消えるから」
最後にそう言い残し、みなとはふらふらとした足取りで部屋から出て行ってしまった。
「・・・・・・」
みなとに向かって右手を伸ばしかけた間抜けな格好のまま、呆然とその背中を見送った私の横で、神崎がそれはもう楽しそうに笑った。
「さーて、邪魔者もやっと身の程をわきまえて居なくなったことだし。ちょっと冷蔵庫とか借りるぞ、氷とか色々必要になってくるから・・・ん?」
立ち上がり、キッチンへと向かおうとした神崎の足が、こつん、と何かに触れる音がした。




